アイマス2の署名を集めてどうするのだろうか

事の経緯

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 『THE IDOLM@STER』という、元はアーケード用に開発されたアイドル育成シミュレーションゲームがある。Xbox360では質が向上した家庭用版が発売され、来春には続編の『THE IDOLM@STER 2』が発売されるとのことである。

 綺麗で、しかも違和感のない二次元美少女キャラクターを描いた見事な3Dグラフィックが売りで、ファン人気が非常に高い作品である。先日行われた「東京ゲームショウ2010」で新作の新たな情報も入り、更に盛り上がる、かと思いきや、なにやら事態は変な方向へと進んでいくことに。

 結論から言うと「ゲームを作り直せ」という声が出るほど波乱を呼んだのだが、その新情報は以下の通りである。今まで登場するのは女性キャラだけだったのだが、2ではライバルキャラクターとして男キャラが登場することになった。そして、前作に登場したキャラクターが一部プロデュース不可(ゲームキャラとして使用不可能)になった。更に、前作には存在していたオンライン対戦がなくなったことなども問題視されているようである。

 ビデオゲームにおいては、続編が出る際にファンとメーカーの間に齟齬が生まれることはよくあることだ。僕も『アークザラッド 3』というソフトに対しては色々な思い出があるのだが……、それはさておき。

 問題の膨れ上がり方は大きく、ゲーム内容を直せ、という嘆願署名まで出る有様である。署名は7000名近くが参加しているし(2010/9/25現在)、Amazonのレビューは罵詈雑言や嫌がらせのような文章でエライことになっているとのこと。そんな風に、いわゆる炎上をするのはまァ良いとして、しかしこの署名はいったい何なのだろうか。

アイドルマスター2 竜宮小町4人プロデュース不可撤回の嘆願署名
http://www.shomei.tv/project-1606.html

署名運動の心理や如何に

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 まずこの署名活動を見た瞬間、頭の上に疑問符が浮かんだ。なぜ、来春発売予定の形が出来つつある作品なのに、不買運動ではなく修正を嘆願する署名を集めはじめたのか?

 そもそも反対されている事項は、東京ゲームショウ2010で発表された話である。ゲームはこの方向で作成されているわけで、ほぼ確定された要素というわけだろう。これを作り直せだなんて、あまりにも無茶な話ではないか。男キャラはキャストも決定しているし、曲も出来ていれば3Dモデルも出来ている。そして、キャラ削除もやむを得なかったものなのであろう。キャラクター人気が高いゲームということは製作陣も理解しているはずなので、それを考えなしに行ったはずはない。

 無論、それがわかっていても納得ができない、というファンの心理は理解できる。だからといって、作り直せと騒いだところでそれが通るわけもないだろう。相手は大金を投じて作品を作っているわけで、いまさら退けやしない。友達の作っている同人ゲームにケチをつけるというようなレベルの話ではない。

 ゲームプレイヤーというのは、作り手の方針に従うか、もしくは買うのをやめるかということしかできない。シリーズが嫌になれば手を引くのが最善の手なわけだが、それなのに署名活動を行う。これは、公式が道を誤ったけれどもまだファンを続ける(結局は2を買いたい)、という意思表示と考えていいだろう。

 それは傍から見れば、「お前らオタクはどうせ文句を言いつつ買うんだろう」とバカにされてしまうような内容である。実際のところ、署名をするという行為にはファンを続けたいという意思が残っているわけで、そう言われても仕方ないだろう。個人的な考えを言わせてもらうのであれば、2を予約していたとしても、嘘をついて不買運動をしたほうが効果的ではないだろうか。

何がしたいのだろうか

 この運動で「アイマス2」が大きく変わるかというと、まず無理であろう。そもそも持ちかけた条件が、作ったものを白紙に戻せと無茶苦茶なわけである。まるでオモチャ屋の前で高額玩具を母親に強請る子供の如し。そして、その終着点はせいぜい、母親が「飴ちゃんをあげるから泣き止んでね」というのと似たものになるのではないだろうか。

 嘆願署名というのは公式へのアプローチとしても弱いし、そもそも内容を変えて欲しいというのも本気かどうか怪しい。だいたい男キャラが出ようが噛ませやスピンオフの伏線にしかならないのだろうし、人員削減はキャラクターが増えていく上での宿命なわけである。ソフトが出たら、案外みんなあっさりと納得できるのではないだろうか。そして、仮にそれを承知で変更して欲しいというのであればやり口が甘すぎる。

 ……となると、この署名活動、いったいどのような意図で行われているのだろうか。内容の変更はまず叶わないわけであって、「ファンとしての正しいアイマスの方向」を考えているわけでもない。そして、単純に「自分の好きなアイマスを無理にでも通そう」と思っているわけでもない。出来ているのは「アイマス2の仕様が嫌だといっている人はこんなにいるぞ!」と声を荒げることくらいのものである。

 その声が開発に届かないとは言わないものの、建設的でないと思わざるを得ない。駄々をこねようが文句をつけようがかまわないが、しかし、無茶な提案を突きつけて一体何の意図があるのだろうか。更に、そんな署名をしてアイマスの方向がうまく変わるのだろうか。まァとりあえず、叫びたいだけなのであれば、見事に目的は達成しているのだろうが……、ひょっとして、それこそがこの署名で目指したものなのだろうか? 不思議で仕方ない。
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