実直なレビューよりゲハブログの適当なステマ煽りのほうが面白いと思われる理由

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記事の価値はどこで決まるのかという話

 なかなか興味深いTogetterのまとめがあったので、こうして記事にしてみることにする。これを単純に「ゲハブログが悪い」と言って終わらせるのは勿体無いように思うのだ。

○ ゲームのレビューを書いたら勝手にステマ扱いされたでござる - Togetter
http://togetter.com/li/236771

 このまとめに登場する記事は、以下のふたつである。エキサイトレビューのほうを前者とし、ブログ記事のほうを後者と呼ぶ。

○ 「MONSTER×DRAGON」がゲーマー向けすぎて脳汁どばどば(エキサイトレビュー) - エキサイトニュース
http://www.excite.co.jp/News/reviewapp/20111227/E1324914681121.html

○ 有名ゲームライターが絶賛!「スクエニがやっとゲームらしいゲームを作った」 : オレ的ゲーム速報@刃
http://jin115.com/archives/51837636.html

 話をはじめる前に、このTogetterまとめを見る前提として知っておかねばならないことがある。それは、2012年1月初頭に「ステマ」(ステルスマーケティングの略)という単語が流行になったということだ。これはアニメ関係の話題が流れてきたもので、詳細は割愛するが、とりあえず、企業が何かを賞賛して盛り上げようとする話や記事、そしてステルスマーケティングではなくてもそういう雰囲気を感じられてしまうものには、「ステマ」と呼ぶ流れができているようだ。

 そして、『MONSTER×DRAGON』というゲームのレビュー記事を書いた池谷勇人さん(@tekken8810)が、その流れに乗って叩かれ(たという流れを作られ)たというのが、まとめのおおまかな内容なわけである。

内容の問題ではなく、見せ方と見る人の問題

 このまとめが面白いのは、前者のレビュー記事の内容はまともであり、後者のブログ記事はかなり問題があるものの、読者の心を煽ることに関しては後者のブログ記事のほうが圧倒的にうまくいきそうだということである。

 前者のレビュー記事は、きちんとゲームを遊び、どこがどう面白いのかフランクな姿勢で表現しようとしている。課金が必要なゲームであり、筆者がそれに抵抗を感じていたものの、気づいたら納金するほど楽しかったという内容だ。

 一方後者のブログ記事は、前者のレビューを見た人が「ステマ」と呼ぶ部分だけを集めた内容だ。特に反対意見を載せて公平を保とうとする意思もないようである。これを最悪の記事だと評する人もいるだろう。

 だが、僕はこの記事について考えてみると、後者のほうがうまく読者に印象付けができるように思う。これはあくまで良し悪しの話ではなく、印象付けができるかどうかに限った話だ。個人的にどちらを読んで面白いかといわれれば、当然のように前者のレビュー記事だと断言する。

刺激はどちらのほうが強いか

 さて、なぜ内容では前者のレビュー記事のほうがいいのに、後者のブログ記事のほうが読者を煽れそうだと書いたのか。これは非常に簡単で、刺激の量が圧倒的に違うからだ。

 前者のレビュー記事は、作品を“ゲーマー向け”と言って褒めている内容だ。これは別に悪くないが、そもそもゲーマーという言葉自体がふわふわしたものなので、誰が対象なのかわかりにくい。そして内容も、面白いというだけで、プレイヤーを一発で引き込む強みがない。

 後者のブログ記事は、おそらくいつもの芸風で、ものを疑ってかかる形でやっている。固定の読者は食いつくだろうし、悪い方向で作品を特集すればかなりの耳目を集めることが可能な場であろう。しかも叩く対象は大手開発会社であり、叩かれることも多いであろうスクエニ。おまけに文字数も少ない。

 それだけならまだしも、後者のブログはちょうど流れとして出来ていた「ステマ」という単語を使うのが見事である。これはもはや本来の言葉の意味を失っており、人を煽るための言葉でしかなくなっているのだろう。よって、あのレビューが本当に純粋な褒め言葉だとしても、これは太鼓持ち、つまり本来の“ステルスマーケティング”ではなく、単純に褒めておくという程度の意味である「ステマ」だと思わせられれば、ちょうどよく波に乗れるか、あるいは波をより強くすることができるというわけだ。これで見る人もますます増えることだろう。

 しかし、後者のブログ記事のコメント欄を見ると、作品がなかなか面白いといった意見もあるところからして、前者の記事が「ステマ」だと決め付ける流れをうまく作れているとは言い難いかもしれない。だが、もともと閲覧数の多いサイトであり、センセーショナルな流行語を使い、潜在的な猜疑心を煽っているという点からして、人のくすぐり方のうまさに関しては段違いなのではなかろうか。ゲーマー向けというよくわからない対象ではない上に、煽り方も強烈だ。

 単純にどちらの刺激が強いかといわれれば、これは後者なのではないだろうか。そういった意味で、多くの人に訴えかけられそうなのだ。

結局のところ、問題は信頼の話になるのか?

 そして、池谷勇人さん(@tekken8810)の言葉にも問題があると言うと語弊があるだろうが、結果的に火に油を注ぐことになるのではないかと不安だ。Togetterに掲載されているこのふたつの言い方が気になる。

「ステマどころかメーカーチェックすら出してないぜ(すいません」
 「僕は単純に、悪いところが10あっても、良いところが1個あればそれでニコニコできちゃう人なのでw」

 両方とも「ステマではなくきちんと書いたものですよ」アピールで、言っていることもごくごくまともだ。が、まともだからといって良いとは限らないのは前述の通り。

 一行目の発言はメーカーチェックを出していないということで正当性をアピールしているものの、実際にゲーム開発の人たちと関わりのある職業であれば、まず喧嘩を売るようなことはしないのであまり良いアピールになっていない。疑心暗鬼に陥っている閲覧者は、むしろ常にゴマをスっているのではないかという可能性を想起する。

 また、二行目の、悪いところが10あっても良いところが1あれば喜ぶというのも、閲覧者から見るとあまり良いことではない。これもゲームライターとしては素晴らしい感性をしていらっしゃるわけだが、良いと言えそうな部分があれば拡大解釈して褒めるのではないかと、そもそも疑ってかかる閲覧者はそういう可能性を想起してしまう。

 個人的にも後者の発言には引っかかるものがある。どの作品にも部分部分で良し悪しが変化するものの、総合的にそれを見て判断するには、核となる部分の具合がどうなのかによるところが大きいのではないかと考えている。例えば、ストーリー重視のゲームで脚本が困ったものならば問題があると解釈すべきで、音楽が良いからといって総合的に喜んでしまっても考えものだ。無論、良い部分を良いものだと喜ぶのは悪いことではないし、この発言がそういう意図の元で発せられたのではないだろうが。が、それでも不安になってしまう部分はある。

 こういった不安定な部分を煽る人がいるということは確かに問題だが、不安になっている人たちも実際にいるのではないだろうか。そういった人々に対し「メーカーチェックすら出していない」などと言っても、不安感が薄れることもなさそうだ。根本的な問題は、既に疑ってかかってしまっているというところなのだから。

 ともあれ、“面白いゲームをうまく褒める”というのは簡単なことでないのは確かだ。あれがつまらない、クソだというのは難癖をつけて騒ぎ立てれば、読んでいる人に印象を与えることはできる。そして、実際に調べるまではそういう意見があったと記憶に刻めるのだ。一方、面白い面白いと騒ぐのは、宣伝で飽和しすぎている感がある。だから疑われるのかもしれず。

 あるいは、単純に面白いと連呼しているだけだとしても、それを信じこませるような雰囲気作りが大切なのだろう。そう考えると、どうもこの界隈では褒め言葉に対する信頼感が薄れているというような気もするが、はてさて。
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コメント

最近のゲハブログの記事、あるいは2ちゃんねるを見るに
「ステマ」という言葉を陳腐化させようとしている意図が見える気がします。
数年前の「GK」(ソニー内部で使われているリモートホストの俗称)に関する流れを思い出しました。

彼らが「神ゲー!面白い!絶対レビューする」と言っていたゲームのトロフィーが殆ど解除されてなかったり
「売れない!爆死!グラはPSP以下!3Dは失明する!」と散々騒いだハードが一年で400万台以上売れたり
繋がりがあると思われる会社の弱体化がここ数年著しかったりで
彼らも彼らなりで必死になって刺激のある文章で煽って閲覧者を増やそうと頑張っているのでしょう。
現代アート関連など、ここ最近はゲーム以外の記事も多くなりましたし。
無論応援する気には全くなりませんが。

個人的に、今回のステマの問題は茶化したりなあなあで済ませたりしていい話題じゃないと思う。
だからこそ「ゲハブログの適当なステマ煽り」は不快に感じる。
実直なレビューよりそういうゲスな(と言ったら失礼かもしれないが)ブログの方が閲覧者数が多くなってしまうのは、
仕方無いことかもしれないが悲しいことだと思う

演説と質疑応答だったら自分が欲しい情報が得られるのは後者だよねというだけの話。
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