Xbox360 IndieGamesで石を拾う 23【NewsCopter】

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総決算によるクソ

 集大成のようなゲームというのはよくあるものだ。アーケードコレクションのようにわかりやすい作品もそうだが、今までの作品で学んだノウハウをすべて凝縮したゲームだってあるだろう。

 人間は何かをするたびに新たなことを学び、それを次に反映させていく。ゲーム制作者もまたそれは例外ではない。今を見て、そして過去を顧みれば、それがどういう道筋を辿ったのかが見えてくるのだ。つまり、最新ゲームを見れば過去が目に映ってくるのである。

 今回は2012年1月13日に配信された『NewsCopter』という作品を紹介する。デベロッパはARCHOR GAMES(ECHS BACHS)。このゲームは、ARCHOR GAMESの集大成とでも呼ぶべく作品になっている。そのため、同デベロッパの過去作品も一緒に紹介していこう。

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タイトル画面

脅威の“ヘリシムではない何か”

 『NewsCopter』は“ヘリシムではない何か”と表現するしかないジャンルのゲームである。額面通りの意味を理解しようとすれば、精神を蝕まれることになってしまうだろう。

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ここまでは普通

 まずはヘリコプターとステージを選ぶところからゲームが始まる。ヘリは数種類用意されており、この時点ではまだまだおかしくないのだ。

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ここも大丈夫

 そして、いざゲームが開始した画面を見ても、それほど違和感はない。無論、ケチをつけようと思えばつけられるであろうが、広い心で見ればふつうだ。だが、動かした瞬間にすべてが変わる。

 まず、ヘリコプターを操作するゲームにも関わらず、左スティックの上下左右でそれぞれに移動し、右スティックの上下で高さを変更できるという部分で面を食らう。こんなヘリシムはあってならないので、おそらくこれはヘリシムではない何かなのだ。

 更に、操作方法がわかってから動かすと思わず動揺してしまう。ヘリは何種類も選べるにも関わらず、一切アニメーションせずスーッと進むのだ。DLCでアニメーションがつくのかと思いきや、そんなこともない。しかも壁や地上にぶつかってもなんら問題なく、「カンッ」と極めて軽い音が鳴るのもグッド。この期に及んでヘリコプターを操作しようなんて甘いことを考えているプレイヤーを打ちのめすゴングの音だ。

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どう見ても廃墟

 そして、地上に降りた瞬間に、この世界は笑っていいのだと理解できる。遠目に見るとまともなのに下へ行くほど廃墟になっていくのだ。そう、このゲームは航空写真を使っているのか、地上の描写は完全に狂っているのである。

 ちなみにここがどこかわかるだろうか? なんと1ステージ目の東京である。信じられるだろうか? 我々が住んでいる日本は、いつの間にかこんな核戦争後の世界のようになってしまったのだ。おお、日本は終わってしまった! 今すぐ髪型をモヒカンにしなければ。

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これが本当に見つからない

 尚、どうでもいいゲームルールについても一応言及しておくと、ヘリでスーッと移動して9枚の写真を集めるとクリアになる。「ヘリで移動してニュース写真を撮る」という意味であればタイトルの『NewsCopter』を含めて納得がいくのだが、手に入れるアイテムは「カメラの描かれたボード」であり、常人には理解できない事情があることはよくわかる。

 マップは無意味に複雑でやたらと難易度が高いので、ステージが4つしかないのが幸いだ。もっとも、まともな人は1ステージ目でやめるだろうが。また、死亡やミスといった概念はないが、とにかく「カメラの描かれたボード」が見つからないのである。東京ステージは4LDKにひとりで住むくらいに広いが、マップなんて親切なものがあるはずもない。マップがないことに驚く人は、まだこれをヘリシムとでも勘違いしているのか?

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名所がまったくないのがすごい

 そして、2ステージ目は建物が一切ないフランスのル・マン。ここには大聖堂があるらしいが、ただのだだっぴろい平原である。どうも広いマップに建物を作るのは疲れるので、やめたようである。なるほど、親近感が湧くほどにわかりやすいだろう。同時にいらつきも湧いてくるが。

 このステージにはこのデベロッパのマークが存在しており、実にお茶目だ。まともなゲームならこういった遊びもなんだか楽しい気分になるが、嫌々だだっぴろい世界を駆けずり回っているこの瞬間だと、血管が破裂しそうになる。

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海の近くのせいか錆びている建造物が多い

 続いての3ステージ目はアメリカはフロリダのタンパ。海港が名所らしく、これはきちんとそれを取り込めている。建物もきちんとあるではないか! と思ったら、マップがものすごく狭い上に、写真もかなり密集しているという、またもや親近感といらつきを湧かせまくっている内容であった。広くて建造物がないか、狭くて建造物があるかの二択のようだ。

 これは上空から見るとかなりまともなのだが、近づいて建物を見てしまうと笑いが止まらない。子供の無節操な落書きか、海からの潮風でサビまくっているとしか解釈できないものばかりなのだ。そして密集しまくっている写真の描かれたボード。ああ、フロリダも死の街になってしまった!

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ヘリでこんなところに来てどうする

 最後となる4ステージ目はドイツのニュルブルクリンク。レースゲームではおなじみのニュルブルクリンクをヘリコプターで飛べるだなんて感動的だ! だがどう見ても平原である。いや、そもそもステージ2あたりとどう違うのかよくわからない。

 微妙な高低差を作った時点で疲れたのか、建物はなし。だが、恐ろしく広く、最終ステージにふさわしいもっともやる気のなくなる難易度の高さである。ここまで来ると、広くて建物も多い東京ステージが一番まともだった……というか、1ステージ目で制作者のやる気がなくなったことがよくわかるだろう。ああ、奥歯がギリギリと鳴る。

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上空に注意

 どのステージもかなり難しいが、一番マシなのは3ステージ目のタンパである。ここは八枚目まであっさりと手に入るのだ。そして最後の一枚は、上空にあるのだから殴ってやりたくなる。どうもこのゲーム、最後の一枚はやたらと必死に隠しているらしいのだから、いよいよコントローラーを投げてもいい雰囲気になってきた。

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もうダメだ

 ちなみに、クリアしたとしてもお褒めの言葉がないどころか、バックボタンを押して途中でゲームをやめた時と同じ画面になる。もう我慢できないので言うが、これはクソだ。クソクソクソクソクソ。クソ! こんなゲーム、「クソ」の一言で足りるんだよッ!!

ARCHOR GAMESの過去を見れば意味がわかる

 まったくもって訳がわからないとしか言いようのない“ヘリシムではない何か”の『NewsCopter』であったが、実はARCHOR GAMESの過去作品を見ていけば、意味が理解できるようになるのだ。手っ取り早く言えば、過去作の流用をして最新作を作ったからこうなったのである。エコロジー精神を忘れないデベロッパは偉大だからか、よく目立つものだ。

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何がどうゲームなのか解釈が難しい

 まず、2009年4月に配信された『BluePrint Racer 4D』という作品から見ていこう。この作品は青い画面で車を操作しガス缶を集めていく“レースゲームではない何か”だ。

 そもそもの操作は左スティックの上下左右でその通りに動くという、レースゲームを完全に無視したノンブレーキ・ノンアクセル仕様。効果音は一切なく、ステージが進むたびに、取得すべきガス缶がひとつずつ増えていくだけという、ゲーム画面どころかプレイヤーの顔まで青くなること必至のゲームであった。

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海の中には見えないが海の中だ

 その続編である作品が『JAWSOME』だ。これは2011年11月に配信されたのだが、『BluePrint Racer 4D』の直系的な続編である。およそ二年ほどで色々と進化したのだ。

 今まではなかった効果音がついたし、サメらしく操作が一筋縄ではいかなくなった。また、サメの種類が複数選べるようになったり、ステージ選択がついたのである。見た目も前作に比べればかなりマシだろう。もっとも、これを実際に遊んでみると、これが海の中とはなかなか気づかないのだが。

 そして、操作は相変わらず左スティックの上下左右でその通りに動くものであったし、サメの種類が複数選べるものの、意味がないだけでなくサメは一切アニメーションをせずスーッと移動する。そして壁にぶつかると、「カンッ」と心地いい金属音が鳴るのであった。更に、ゲームシステムはどう見てもドライフードの餌を集めるだけという相変わらずなものだ。

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二枚目の画像はアップデート前のもの

 そして時間を少し戻り、2010年12月に配信された『AVATOUR』という作品もチェックしておかねばならない。これはアバターが航空写真で作られた街中を歩くというゲームである。

 これはアップデート前がたいへんひどく、上記スクリーンショットの二枚目を見てもらえばその片鱗を感じて貰えるだろう。車は『BluePrint Racer 4D』の流用だし、街のテクスチャは航空写真を使っているため、地上から見ると廃墟のようだった。ただし、一度はアップデートがなされ、街並みも割りとまともになったことはなったのだが……。

 さて、これで『NewsCopter』の摩訶不思議な世界観がどうやって築かれたのかわかっただろう。つまり、『BluePrint Racer 4D』のシステムを多少改変して『JAWSOME』を作り、『AVATOUR』の素材と『JAWSOME』のシステムを流用したら『NewsCopter』ができたのだ。

 だからこそ、意味不明な作りは納得がいく。なぜヘリシムのようなのに操作が左スティックで上下左右にそのまま移動するのか? あるいは、どうしてぶつかっても問題ないのか? それは過去作からの流用だからだ。そして、どうして航空写真を貼った廃墟のような街なのか? それも過去作からの流用だからだ。おお、なんて簡潔で完璧な答えであることか。

 つまり、過去のマヌケとも言える作品をうまく流用した結果、より違和感の強い駄作を創りだしたのである。換言すれば、クソとクソをかけ合わせて壮絶なクソゲーを創り上げたといっても過言ではあるまい。ARCHOR GAMESは一流のエコロジストであり、最強のブリーダーだ。

くれぐれも囚われないように

 『BluePrint Racer 4D』は2009年4月21日に配信されているので、最新作である『NewsCopter』の2012年まで、3年近くをほとんど同じゲームを配信し続けているのだ。あまりの確固たる意思に目眩にも似た感動を覚える。

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死亡時のSEがとにかくひどいゲーム

 尚、ARCHOR GAMESには他の、今回の作品には関連していないゲームもふたつ配信している。これは2010年10月に配信された忍者が訳のわからない(としか形容できない)世界を冒険する『Quantum Ninja』だ。世界遺産や乗り物が雑然と並ぶ背景を冒険する2Dジャンプアクションで、忍者が穴に落ちて死ぬ時の断末魔が、耳をつんざくほどのものであるのが特徴。

 この作品からは、背景にある世界の有名な建造物や様々な乗り物を見て、作者がそれらを好き(あるいは、それらを使わざるを得なかった)ということがわかるだろう。となると、『BluePrint Racer 4D』や『AVATOUR』、そして『NewsCopter』を作ろうとした意図もわかるかもしれない。

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勝敗があるだけ『Block Fight!!』よりはマシだが

 また、国内アカウントではダウンロードできないが、『A Kitchen Sink War』という“食器対戦ゲームと思しき何か”も2008年11月に配信している。これは「フォークやカップが画面中央の何かよくわからない物体にぶつからないよう戦う」という、意味不明か新手の芸術、もしくは狂気の搾りかすとしか形容しようのない作品である。

 敵をショットで破壊するか、あるいは障害物に押し付けて殺すようなのだが、勝ったほうがより多くの金を得てより強いパワーアップをすることが可能であり、強い人がより格差を広げることが可能という、常人ではまず理解できないルールである。ましてやこのゲームはワープがあるので、一発当てたらワープを連打していればいいというハメ技まである人智を超えた調整だ。

 カップや栓抜きが宙を待っている風景は、洗い物を溜めすぎて発狂した作者の心境が現れているようである。ARCHOR GAMESのアイデアや信念、あるいはどうしてこんな作品ばかりを作れてしまうといったことは、この原点である唐人の寝言のようなゲームをじっくりと見てみればわかるのではないだろうか。

 よくわからないゲームも過去を追ってみると意外とその作りに納得がいくというのは、今回の記事でわかってもらえただろう。しかも、年代別に並べてみれば意外と成長していたりするのだ。人に歴史あり、クソゲーにも歴史あり。理解していただけただろうか気にかかるところだが、別に理解しなくてもいいと思われる。


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NewsCopter 240ゲイツ Xbox.com詳細ページ
デベロッパー:ECHS BACHS ジャンル:レース & フライト 2012/01/13

 ヘリコプターで写真を集めるフライトシムではない何か。
 同デベロッパの過去作、『JAWSOME』や『AVATOUR』を集めに集めて醜い部分だけを抽出したかのような作品。
 単刀直入に言うとクソ。
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