どう見てもパチモンの“日本風・弾幕シューティング” 『Super Killer Hornet』 【Xbox360 IndieGamesで石を拾う 27】

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何が面白いってタイトル画面が面白い

 ビデオゲームにおいて、日本で独自進化を遂げたジャンルといえば何か。答えは、RPG、格闘ゲーム、シューティングゲームといったところだろう。

 特に、弾幕シューティングと呼ばれるジャンルは特異なものである。弾がわんさか出てくるとっつきにくいジャンルであり、プレイヤーを極端に選び、しかしある程度のファンは根付いており、しかもアーケードで育ったためかほかの国では珍しいようだ。

 しかし、そんな特別なゲームだからこそ、海外のクリエイターたちも感銘を受けるのである。こうして日本の弾幕シューティングに多大な影響を受け制作したであろう作品が、Xbox360インディーズゲームで配信された『Super Killer Hornet』だ。開発はFlump Studios。

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『Super Killer Hornet』タイトル画面


 もはやわかってしまっただろう。なんだこの海賊版のゲームのようなタイトル画面は! 『スーパークレイジーキラーホーネット 特別なブラック・レーベル・エディション』……。横書きで書かれたカタカナを縦に配置するという斬新で強引な表現、なぜか“特別な”だけ漢字、そして文字の意味をなくす反転、そもそも英語だから格好のつくタイトルをわざわざカタカナにしてダサくするという、顔面にクソを塗りたくるが行為。こんなにデンジャラスなタイトル画面を見たのは初めてだ。
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何かを勘違いしてしまった弾幕シューティングか?

 こうなるともはや何を言っても無意味だ。おそらく、あまりのタイトル画面の衝撃に、腐ったゲームの臭いを感じとってしまった読者ばかりだろう。しかも、ゲームルールなどにも日本ではまずありえない突飛な要素が入っているのだから、もはや弁解の余地はない……。

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日本人にはまず理解できない敵名

 まず、敵の名前がいかにも外国人が考えた日本っぽい感じなのが危険である。GeishaやNinja、あるいはSamuraiがいると思えば、いきなりMantisやHornetという昆虫が出てくる。まさか芸者や忍者もカマキリやハチと手を結ぶことになるだなんて、考えてもみなかっただろう。

 ゲームルールとしては、アーケードモードとブラックレーベルモードがあり、前者が残機制で後者が時間制となっている。本作の特徴を生かしているのは後者なので、個人的にはそちらをオススメする。

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アーケードモードは残機が最大3つで、特定の敵を倒すと回復する

 さて、ゲーム内容はいたってふつうである。通常ショットと、強烈だが機体の動きが遅くなるレーザーを使い分け、敵の弾を避け続けるのだ。このジャンルの例によって当たり判定は非常に小さいため、機体の周囲を見つめながら避けることに専念するのである。……しかし、裸の数字が降ってきているのがやたら気にならないか。

 そう、本作の特徴とは何かといえば、弾幕シューティングをしているのに、足し算や掛け算のけいさんをしなければならないという部分だ。あまりの衝撃に、ファミコンの『けいさんゲーム』でXbox360をぶっ叩きたくなっても無理はない。

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上から降ってくる3つの数字から正解を選ぶ

 この画面上部に「2+9=」と書かれているのがわかるだろう。なんとプレイ中には数字が落ちてきて、それを獲得すると自動で数式が完成するのである。そして、次に降ってくる正解の答えを獲得すると、アーケードモードでは倍率が上昇し、ブラックレーベルモードでは倍率と残り時間が上昇する。

 まったくもって意味がわからないと叫びたくもなるだろう。なぜ弾幕シューティングで足し算や掛け算、それも簡単すぎるものをやらねばならないのだ!? 仮にそれはよくとも、ただの数字が降ってくるシューティングなどあまりにもあんまりすぎる。こうなると、日本のゲーム文化を理解していないと思うのも無理はあるまい。

ただのクソゲーと思ってはいけない

 だが本作は、実は意外と楽しく、弾幕シューティングの基礎はバッチリ抑えてあるのだ。

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そのうちダサい爆発エフェクトや両サイドの枠など気にならなくなる

 少なくとも僕は、今までこの手の弾幕シューティングにはまったく興味がなかった。激しすぎる桁数のスコア、画面を見ても理解できないゲーム内容などあるが、やはり一番の理由はその手のゲームがアーケードゲームだからである。家庭用据置機で育った僕とは、近くて遠いジャンルなのだ。

 無論、はじめのころ『Super Killer Hornet』にはかなりの抵抗があった。タイトル画面はあんな無残な有様だし、爆発エフェクトは湿気た歌舞伎揚げみたいだし、弾幕もコンビニのレジで埃をかぶっている防犯カラーボールのようで緊張感がない。そう、初めはそんな印象しかなかったのである。

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トロフィーがアンロックされたと気を抜くとうっかり死ぬ

 だが、このゲームはシンプルな回避における駆け引きの味わいがある。基本的には画面下部で敵の弾を避けるだけなのだが、ブラックレーベルモードでは制限時間を稼ぐために数字を取らなければならない。当然のようにそれは簡単なことではなく、ただ避けることでも集中と咄嗟の状況判断が必要になるのだ。

 こうして弾幕を見つめて、しかし数字を見逃さないことに集中していると、いつの間にか熱中しているのである。しかも、熱中してくると、この簡単な計算がいい味わいになってくる。というのも、計算があまりに複雑では弾幕の回避に集中できないし、かといって容易すぎればゲームの調子が変化しないだろう。

 弾幕を避ける緊張的な集中と、計算をすることによって起こる緊張の発散。これを交互に繰り返していくことで、この一見こそ危険な世界にのめり込んで行く構造ができているのだ。集中の緊張とその発散による解放が重なりあう姿は、さながら水泳のような楽しみになる。

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気づけば数時間もプレイするほどハマってしまった

 このゲ-ムはつまらないどころか、知らなかった僕に弾幕シューティングの楽しみを教えてくれさえしたのだ。集中して弾を避けることの気持ちよさというものが、本当にあったとは。

ここまで悪印象を払拭することのできるゲームもあるのだ

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こんなスコアが出る程度には楽しんでやりこめた

 もっとも、ここまで言ったとしても、日本の弾幕シューティングに慣れているプレイヤーは鼻で笑うかもしれない。基本はどんどん弾幕が激しくなるだけだし、この手のゲームの本家ともいえる作品を遊んでいれば、刺激が少ないと感じるかもしれないだろう。

 しかし、『Super Killer Hornet』は不出来なゲームではない。弾は視認しやすい色を選んでいるようだし(爆発エフェクトに隠れてしまうことはあるが)、計算をさせられるのも突飛なアイデアではあるがいいアクセントだ。

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この手のSTGをやらない僕が、一周クリアしただけでも快挙といえる

 ところで、作品内の目標であるトロフィーもなかなかいい塩梅に設定されている。はじめは二匹のホーネットを退治しようとし、次の目的となるのは7万点達成あたりになり、その後に倍率五倍を目指して行く……、というような形でやっていくと、いつの間にか一周クリアが達成できているのだ。段階的な目的設定も、きちんとできているといえる。

 また、日本人としては爆笑するしかないタイトル画面も、あちらなりのローカライズなのかもしれない。だいたいカタカナで書いてあっても言葉の意味などわからないわけで、それならクールだという理由だけで使うには十分だ。突飛すぎる敵の名前も、同じようなものである。

 結局のところ、『Super Killer Hornet』はガワこそ日本のシューティングを完全にコピーしてはいないが、弾幕シューティングとしての楽しさはきちんと理解しているのだろう。最初は笑い飛ばすだけのつもりで買った作品だったが、素直に面白くて思わぬ喜びを得てしまった。


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Super Killer Hornet 80MSP Xbox.com詳細ページ
デベロッパー:Flump Studios ジャンル:アクション & アドベンチャー 2012/07/19

 外国人の作った日本製っぽい(つまり、パチもの臭漂う)弾幕シューティングゲーム。
 なんといってもタイトル画面の無茶苦茶なカタカナが強烈だ。これに疑問を持たない日本人はいない。
 しかし、蓋を開けてみればかなり真っ当なゲームであり、はじめての印象がそのまま保持されてはならない作品でもある。

コメント

見やすさはこのジャンルでは重要なので、そこを抑えているというのは良く分かってる・・・のかもしれません。
それにしても、簡単な数の足し算というのは斬新ですねぇ。近年の作品では大抵、自動回収機能が付いていますから・・・。

ブラックレーベルについてちょっと補足しますと、CAVEの作るゲームは大抵1年位でアレンジバージョンをリリースするのですが
それが「ブラックレーベル」という名前を付けて出されるのです。なので、最初からこの名前は本来付かないと思いますw
「ホーネット」に至っては、完全に「怒首領蜂」ですね(このシリーズの真ボスは全て"蜂"なのです)。

箱○は数年前から、弾幕・非弾幕問わずSTGが沢山移植されてます。この機会に、おひとついかがですか?

それが意外とこの数字の回収が面白いんですよ。回避の邪魔といえば邪魔なのですが、ほどよい気分転換になっておりまして。

タイトルに関しては、なぜか日本語になると「クレイジー」という単語が入ったり、Gluonさんのおっしゃる通りブラックレーベル的な部分の意味を理解できてない感じですね。どこかで前身となる作品があって、そこからブラックレーベルなのかと思っておりましたが、どうもそうでもないようですので、単純にカッコイイからつけたのでしょう。

せっかく誘ってもらっておいてなんですが、STGはどうも興味がなくて……。僕には『Super Killer Hornet』がお似合いなのでしょう。
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