Xbox Live Indie Games 国内2500本突破記念、SSDM&工作員、対談企画 03 デベロッパの変化編

市場の変化はデベロッパの変化でもある

工作員確かに、80MSPで出されている『Minecraft』クローン群も、“ただモノを作る”という観点から見れば、出来のいいものが多いんですよね。ですから、長くはやらないけれどもモノだけ作ってみようという欲を満たしたい人にとっては、そのものズバリの商品といえなくもないですね。
SSDMましてやクローンゲームでも品質が高ければ嬉しいものですし、更に独自要素があれば評価はうなぎ登りになりますよね。本家が欲しいのでなければ、人気が出るのは必然とも言えます。ついでにオリジナル作品と違って、宣伝しなくても内容がわかりますし。最初のころはそういう層の欲しがるもののひとつを見逃していたということなんでしょうね。
工作員そういう層の目も感じられるようなディベロッパーさんが集まって来たと。
SSDMたとえば、Milkstone Studiosはかならずどこかで見たことのあるゲームを出すんですよね。

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Milkstone Studiosは、なんだかIssac臭のするゲームなどを出している。
NINJAが不思議のお城で変装しつつ大暴れ! 『Sushi Castle』 特集」を参照。

工作員Xbox Live Arcadeなんかでどこか似たような作品があったとしても、それでもインディーズゲームのほうが安くて独特のほうに雰囲気があるとなれば、インディーズゲームのほうに手を出そうとする方がたくさんいらっしゃるでしょうし。
SSDMあとは、代わり映えはしないんですが安定した萌えキャラを出す「Xbox360インディーズゲーム界のプリンセスソフト」ことTeam Shurikenもいますね。ほかは、前述の『Minecraft』クローンや、アバター対戦FPSを出しているDigital DNA Gamesも古参ですが、そういうデベロッパさんでしょう。
工作員僕の中でTeam Shurikenは「Xbox360インディーズゲーム界のアークソフトウェア」なんですけれども。もう世間一般的なイメージは、プリンセスソフトさんのほうに鞍替えしていらっしゃる?

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格闘ゲーム『TOKYO 2029 A.D.』でデビューしたTeam Shurikenだが、
最近は『Ninjas and Priestess』のような萌えアドベンチャーばかりを制作されている。


SSDMあはははは(笑)いや、もう萌えキャラのゲームしか出していないですからね。
工作員そうですね。僕もXbox360インディーズゲーム業界では老害と言われる側になってしまいましたね(笑)
SSDMこういうデベロッパさんがいらっしゃるということは、やはりそういう作品が安定して売れるということがわかったんでしょうね。
工作員悪い流れでは、ないのかな?
SSDMそれは良し悪し両方だと思いますけど。その例だとひとつあるのが、Silver Dollar Games。実写系の一発ネタをガンガン出してらっしゃったところですが、勢いが弱くなっちゃってますよね。

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Silver Dollar GamesはCassieシリーズなど、かなりのハイペースで作品を配信し続けた。が、2012年は1月から動きがない。

工作員最近は作ってらっしゃらないようですね。ほかのディベロッパーさんがXbox360インディーズゲームで活動が少なくなったというと、iOSとかWindowsPhoneに行ってしまったということが多いんですけれども、Silver Dollar Gamesさんに関してはほかのところでもほとんど動きがないですね。
SSDMチームが解散されたりしたんでしょうかね?
工作員いやー、また戻ってきて欲しいところですね。
SSDMと言いたいのは僕もなんですが、今の話だと、ここの流れは変わりましたね。
工作員そういった一発ネタに関して、どこか冷ややかな対応を見せつつある市場になったと?
SSDMだと思います。言い換えるなら廉価版の市場になったというか。「人気のあるゲームの安い似たようなものだけれども、それなりに遊べるビデオゲームのユニクロ」的な場所になったのかもしれません。
工作員おー、これは名言出ましたね。
SSDMえ、そうですかね!? 結構怪しいかなと思ったんですけれども。とにかく、たとえとしてはそうですよね。
工作員この対談をやるにあたって、自分の友人にインディーゲーム、あるいは同人のゲームっていうものにどういうものを求めるのか? と聞いたんですけれども、それを聞いているとふたつあるんですよね。
工作員ひとつは「一発ネタ」。キッツいエロとか時事ネタとか、いわゆる会社が責任取って出すようなゲームではないものをやりたいというもの。もうひとつは、どこかの会社さんが出していたようなゲームが「安くて小規模で自分にカスタマイズされている状態」なら買いたいと。この考えを見ると、以前のXbox360インディーズゲーム市場に求められていたものも、今のXbox360インディーズゲーム市場に求められているものも、よく見れば違いがあったということなんでしょうね。
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出る作品が変化すれば遊ぶ人も変わる

SSDMユニクロ市場になりつつあるからこそ、僕は肩身が狭い思いをするかもと思うんですよね。
工作員SSDMさんがですか?
SSDM安いなりに面白さを目指したであろうという作品で、僕が気になったものがいくつかあるんですけれども……。たとえば『The $1 Zombie Game』ですとか。
工作員これは面白かったですけれども、やはり1$という中で提供できるものでしたね。不思議とやはり文句が出てこないのは、まさに1$の内容でしっかりサービスが行き届いていたということですよね。

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まさしく1$ぶんだけの「ゾンビを撃ち殺す」楽しみがあるゲーム。

SSDMこれなんかはまさしくユニクロゲーと言うべき市場にあったもので、しかも個人的にも悪くないゲームだと思っています。ただ、僕がほかに好きな『Monster King』だとか、『Quiet, Please!』という作品のようなものが立場がなくなるかなと。
工作員『Monster King』は昔のドラクエを思い起こさせるような、『Quiet, Please!』は家の中の騒音に睨みを効かせるゲームですね。

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詳細は「菓子でも食いながら世界を救えるほど“軽い”RPG 『Monster King』 特集」と「Quiet, Please! 特集」を参照。

SSDMこういったゲームはあまり流れに沿ってませんよね。作者の独自アイデアを形にするみたいなゲームですし。
工作員こちらは家庭用据え置きではあまりないようなゲームを、同人のうまみとして出していると。
SSDM結果的に廉価版のような規模にはなってますけれどもね。僕はこういったゲームの人気が下がってなくなってしまう可能性が高まってしまうのではとも思うわけです。あるいは、『Quiet, Please!』がWindowsPhone作品の移植であるように、よそ(iOSやSteamやら)の移植が多くなるのではないかな、と。無論、遊べるだけありがたい話なのですが。
工作員今まで自分たちの一発ネタ公開場だったXbox360インディーズゲームが、Xbox Live Arcadeの補完をするというような市場になるのではないかということですね?
SSDMええ。ただ、これは個人的にあまり好ましくないというだけですし、それはそれで良いこととも言えます。
工作員そういえば、自分が最近ものすごく遊びこんだゲームといえば日本の制作者さんの『Ogre's Phantasm Sword Quest』というのがあるのですが、これはSSDMさんがおっしゃっていた「既存のゲームの廉価版」なのか「一発アイデア」なのかというところがわからないんですよね。
工作員このゲームが出た時に、もしかしたら『モンスターハン……』げふんげふん! みたいなことかと思ったのですが、意外やこれが遊んでみると、鬼の頭でピョンピョン跳ねるのが爽快なんですよね。
SSDMそうですね、割と……、バージョンアップ前は処理落ちが気になりましたけど。たぶんこのゲームは既存のものを目指したけれども、無理そうだからやめて独自に走ったのかもしれませんね。

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オーガをホッピングで殺す3Dアクション。詳細は「Ogre's Phantasm Sword Quest 特集」を参照。

工作員おそらく僕も、意識はしていないですけれども、このゲームを見た時、潜在下に、今度は『モンスターハンター』が来たのかなと思ってしまったはずなんです。ただ、制作者さんたちの意識とはまた別のところでその人の色が出てくれているんだ、あるいは色を出そうとしようとしている方もいるんだ、とこのゲームを遊んで強く感じましたね。
SSDMもしくは出ちゃったのかもしれませんね。慣れてないなりの味のようなものが。そういう意味では『Super Killer Hornet』みたいなゲームも好きです。

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なぜか足し算をするハメになる弾幕STG。詳細は「どう見てもパチモンの“日本風・弾幕シューティング” 『Super Killer Hornet』 【Xbox360 IndieGamesで石を拾う 27】」を参照。

工作員それはそれでいいですよね。ただ、難しいところでもありますよね。既存のゲームの廉価版とでもいうべきものに対して、そのものを求めているのか、廉価版+インディーズの独自要素が入っているほうがいいのかというのは。
SSDMまァ、僕のような人間は独自要素があったほうがいいと思うんですけれども、安ければいいという人は元を知らないですから、独自要素がどうとかわからないですよね、そもそも。
工作員独自要素があるという考え方自体が、そもそもかなりゲームをやっている側の意見になってしまうと。
SSDMそのまま既存のゲームの廉価版みたいなものは、ゲーム慣れしている人からすれば悪印象を持ちがちですけれども、当然いい点もあるんですよね。安ければ手に取りやすいですし、ごたごたしすぎてない。ただ、そこから先に行かないかもしれません。僕は『Super Killer Hornet』が好きで、これのおかげで弾幕シューティングの楽しさを知りました。ですけど、そこから深みにハマるのは難しいかなと思います。
工作員SSDMさん、ここからCAVEシューに行かれるわけでは?
SSDM絶対ないですね。
工作員あれっ!?(笑) おかしいなあ。
SSDMさっきも言ったように、期待が低いから求めるものがないんですよね。だから『Super Killer Hornet』は“意外と”面白かった。けれども、これが弾幕シューティングが好きになるほど面白かったかというと、絶対に違うんですよ。あと、変な日本語が好印象を与えているってのも大きいですし。
工作員“意外と”という域は越えていないということですか。
SSDMそうです。だからその、『Minecraft』のクローンを遊んでいる方も、たぶん「本家とか派生作品でもっとすごいものがある!」と言われても、そもそも興味を持たない人が多いと思うんですよね。もちろん、本家に行く人もいるでしょうけれども、まだまだ『Minecraft』クローンが売れていることからしてもそうしない層が多いといえそうです。
工作員ああー……。『Minectaft』が買えない代わりにそれをやっているから、そこで得た楽しみを持って本家に行くことはないと。
SSDMいや、『Minectaft』が買えないからそれをやっている人というばかりではなくて、買える人でも安いのでいいという考えなんだと思うんです。

しかし、自由な作品がないわけではないのだ

工作員そう言われてみると、自分たちもそういうところはあるんでしょうね。
SSDMそうですね。僕は食事とかほとんど興味ないんですが、そこにひとつ例が。たとえば、メシ代がもったいない僕がスーパーの安い弁当を買ったとして、それを見た美食家が「もっとうまいものがある」と言っても、自分はそれでいいとなるじゃないですか。だからそれと一緒なんだよなと思って。この間、200円のチキンカツ弁当を食って、クソまずいと悪態をつきながらそういうことを考えました。
工作員まさかこの対談の根本が200円の弁当(笑) そうですか、われわれは口うるさくは言わない海原雄山みたいなもんですか。
SSDMあははは(笑) 自分の日記あたりに文句を書く海原雄山かもしれませんね。
工作員それは……、平たく言うと人間のクズですね。
SSDM完璧に合ってます(笑)
工作員そう言われてみると、確かに最近のXbox360インディーズゲームの兆候はそのひとつで知らない人にも説明がつく感じですね。
SSDMそうですね、ゲームやりたいけどあまりお金を出したくないという人が喜べる市場になってますよと言ったほうがいいかもしれません。Xbox360インディーズゲームは「Kinectを買ったけれども、それ以降はXbox360を放置している」みたいなファミリー層に向いていると言えそうです。
SSDMただ、そんなことを言っても一発ネタもといアイデア勝負のゲームはまだまだありますよね。かなり失敗しているものでは『I Miss My Girlfriend』とか。

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ゲームではなくカンパも存在。詳細は「プレイヤーの前からも遠くへ行く 『I Miss My Girlfriend』 【Xbox360 IndieGamesで石を拾う 29】」を参照。

工作員ここまでSSDMさんと話が合う日が来るとは思いませんでした。
SSDMこの作品はゲームでなくて、彼女に会うためのカンパなんですよね。もっとも、アップデート予告もなかったことになってマーケットプレイス上から消えてしまいましたが……。
工作員恐ろしいことではありますが、われわれ買った人間としては額が集まって彼女に会いに行ったんじゃないかなと、穏やかな心で消えたことを受け止めております。
SSDMで、僕は購入を保留していたら消えてしまった側なので、こうなると何か問題が起こってしまったのではないかと思わざるを得ないですよね。
工作員SSDMさんのいじわるッ。いじわるッ!(笑)
SSDMだってなんも言わないで消えるんだもん!(笑)
工作員ともあれ、こういったゲームがあまり出なくなったことが、Xbox360インディーズゲーム市場の変遷として見れるわけですよね。『Avatar Fart!!』なんかもその最たるもので、アバターゲームが出まくってたころのような作品が、今になって出た感じですし。

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アバターが屁をこくだけというゲーム。一昔前にはアバターブームがあり、こんな作品が乱立した。

SSDMアバターが出ることはXbox360インディーズゲームの強みになるでしょうが、アバターが屁をこいているだけのゲームは今更ウケないですよね。でも、そういうのをまだ出すことができる自由さがある市場なのは確かですし。
工作員僕としては、今までより選択肢の幅が広がっていろいろチャレンジできる市場でもあるので、制作者の方が出される作品次第の市場になると思っています。
SSDM単に人気作品の廉価版がいっぱいある市場でも幸せに感じる方もいらっしゃるでしょうし、そこで人気を得ようとしつつ独自要素を盛り込もうとする制作者の方がいてもいいですし、自分だけの道を突き進む方もいていい。そういう懐の深い場所であってくれると、僕も嬉しいですね。

終わりに

 さて、長くなったがいかがだろうか。Xbox Live Indie Gamesは長く続いたうえに本数も非常に多く、かなり様変わりしてきた。その一端を知る手助けになっていれば幸いである。

 かつては何をしていいかわからない故に、無茶苦茶なゲーム、あるいはエロやグロといった理解しやすい題材を用いたもの、そしてアイデア勝負の作品が目立ったこの場であるが、今はある程度の方向性が決まり、人気ゲームの廉価版が揃ったかのような市場になった。

 これは進歩ともいえるだろうし、あるいはつまらない市場になったともいえるだろう。中には、人気作品の真似ごとばかりだと非難する人がいるかもしれない。が、やはり欲する人がいるからこそ売る側もいるのである。これは素直に市場の成熟だと受け取るべきだろう。

 何より、奇妙でおもしろいゲームがすべていなくなったわけでもないのだ。だからこそ、もうしばらくはこの場を眺めていきたいと思う。

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