「よくわからないけど、まあ、なんかすごい」ゲーム 『Fez』

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知名度がないはずはないのに、あまり語られていないように見えるゲーム『Fez』を遊ぶ

 世の中には炎上マーケティングなんてものがある。「悪銭身につかず」ならぬ「悪目立ち身につかず」と言いたいところだが、実際にそうして広告している場合があるのだから弱ったものだ。かといって、悪目立ちが必ず身につくというわけでもなく。

 今回紹介するのは、Xbox LIVE Arcadeで2012年4月13日に配信された『Fez』という作品なのだが、本作はどうも、開発会社Polytron CorporationのPhil Fishの言葉ばかりが目立っているように感じる。なんでも彼はGDCで、「最近の日本製ゲームは糞」的なことを言ったとのこと(この解釈もまた微妙なところなのだが)。

 では、そのPhil Fishが制作した『Fez』の具合はどうなのかと国内の評判を調べてみても、その刺激的な発言についてばかり書いていたり、遊んだ人でも「よくわからないけど、まあ、なんかすごい」というような歯切れが悪い話ばかりでよくわからなかった。せっかく良くも悪くも目立ったのに、それが身についていないのか? そんな疑問という出発点から、本作を遊ぶことになった。

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ドット絵と立体の絡む世界を見られる『Fez』

 その『Fez』は、アクション・パズルというジャンルを当てはめるべきゲームだが、実態はそう簡単に言い切れないものになっている。いや、なってしまっているというべきか。
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『Fez』を具体的に言い表すことは容易でない

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赤い帽子が三次元への切符

 さて、主人公であるゴメズは二次元の世界に生きる住人であったが、“ゴメズタイム”なるもので、立方体から世界を三次元で見る力を与えられてしまう。しかしその後、立方体はバラバラになってしまい、彼がその64のパーツ(キューブ)を集めることになった。

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同じ場面でも4種類の見方があるわけだ

 基本的にこの世界は二次元なのだが、ゴメズはそれを90度ずつ回転させることができる。しかし移動自体はふつうの平面的な2Dアクションであり、立体的に見て隙間がある場所でもなんなく移動できる。この切り替えを駆使してすべてのキューブを集めるアクション・パズルなのだ。

 ……と言いたいところだが、実情はそう言い切れない。というのも本作、アクション・パズルだけでなく以下の3つの要素が内包されているのだが、それがあまりからみ合っていないのである。
  1. 二次元の世界を三次元に見て先へ進むアクション・パズル
  2. 古代文字や宝の地図を解読する謎解き
  3. 言外に語られる物語
 僕はてっきり本作が1と3が深く絡み合ったゲームだと思っていたのだがそうではなく、しかもこれらがうまく同居しているようにも見えなかった。言ってしまえば、主題がなんだかよくわからない。

3つの要素が実にからみ合っていない

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背景の穴がテトリミノになっているように、レトロゲームへのオマージュが入っている

 まず、『Fez』は広い世界を行き来してキューブを集めるアクション・パズルであることは前述のとおり。視点をうまく切り替えなければ解けない仕掛けがあり、それを解決して正確にジャンプし、先へ進む。これはまったく問題がないし、不出来なわけでもない。

 ただ、これは本当にこれだけなのである。いくつかあるステージに行き、そこをクリアしていくだけ。これが単なるアクション・パズルならそれでいいのだが、次の要素が混ざってくると問題になる。

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文字・数字といった記号を読めずとも一応はクリアできるが……

 そして、たどり着いた部屋でプレイヤーは頭を悩ませることになる。その時というのは、ほとんどが古代文字や宝の地図を解読する時なのだ。これは視点を変えるアクション・パズルと関係がなく、単純な別の謎解きに過ぎない。なんとコントローラーの振動やQRコードまで使うので、従来の探索型アクション・パズルと考えていたプレイヤーは面食らうことだろう。

 しかもこの謎解き、難易度がかなり高く、誘導があまり適切ではない。本作はアクション・パズルとしてきちんとチュートリアルを作っているのに、謎の答えに導くことはかなり希薄で、しかもヒントを見にマップを移動するのが手間なため、投げ出しても無理はない。

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時々、世界のことを語るかのようなマップがある

 そして、最後のひとつである「言外に語られる物語」だが、これも上記ふたつの要素との関わりが非常に危うく、量も多いものではない。

 確かに文字を解読すれば街人の言葉がわかり、書かれている文章が理解でき、この三次元なのに二次元な世界の秘密を少し知れる。とはいえ、それは謎解きの結果で知ることもできる副産物でしかない。つまり、おまけでついているだけであって、ゲームプレイに混ざり合っていないのだ。

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これは真エンドの1シーンだが、こんな雰囲気のものがしばらく続く

 またクリア後には、立方体(大きなキューブ)の中で展開されるフラクタル構造など、意味深長な映像を見ることになる。これも明確には語られない物語の一環で、おそらく、「われわれの宇宙も何かの物質におけるひとつの構成要素に過ぎないのではないか」といったことを言っているのだと思われる。このテーマ自体は悪くないが、問題はやはり見せ方だ。

 同じXBLAかつインディーゲームの『Braid』や『Limbo』は、“先へ進むことが言外の物語を読み進める”ことになっていた。パズルの要素は物語と関係があるであろうもので、クリアするたびにテキストやステージの背景で新たな物語が知れるようになり、最後に結末が得られる。一方『Fez』は、アクション・パズルは物語と関係が薄く、謎解きはキューブを得るためだけの障害で、その後に物語を読めることは読める形である。それはそれで別の新しい形になっていればいいのだが、そうとも解釈しづらい。

これが「よくわからないけど、まあ、なんかすごい」理由なのではないか

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見た目はとにかく申し分なし

 こうなってしまえば、プレイヤーが混乱しても無理はない。アクション・パズルかと思いきやまったく違う種類の謎解きもあり、必死になって謎を解けば急な物語があり、かといって物語がすべてを総括しているわけでもない。何が言いたいのかわからないだろう。

 しかし、本作は間違いなく高品質である。見た目に、音楽に、上品なレトロゲームへのオマージュに、と要素を挙げていけばどれも立派で、特にドット絵のアニメーションが愛嬌を振りまいている。こういった部分に惹かれるプレイヤーがいるのも不思議ではないし、そこからすべてを好意的に解釈する人が、多くはなくともいてもおかしくはない。

 だからこそ、「よくわからないけど、まあ、なんかすごい」という感想が出てきたり、作品を具体的に捉えづらく、主題が良く見えてこないからこそPhil FishのGDCでの発言が印象強くなり、そこに作品の解釈をも重ねる人すら出るのではないだろうか。

 『Fez』はそれぞれ立派な平面を集めたが、それが完璧な立方体を構成するようにはなっていないように見える。三次元の世界を二次元的に表現したゲームなので、あえてそうしたのかもしれない……、なんて突飛な解釈はさすがに冗談だが、『Fez』という作品にもキューブが欠けているように見える。


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Fez 800MSP Xbox.com詳細ページ
デベロッパー:Polytron Corporation ジャンル:アクション & アドベンチャー, キャラクター アクション, パズル & 雑学クイズ 2012/04/13

 二次元と三次元を行き来できるゴメズを操作し、キューブを集めていく。
 アクション・パズル 兼 謎解きゲーム 兼 芸術的ともいえる物語を読み解く作品。
 レトロなゲームにも似たアクション・パズルが好きで、手強い謎解きに根気強く耐えられる人向けだろう。

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