あまりにも前衛的過ぎるミステリー 『Wright Brothers' Mysteries』 【Xbox360 IndieGamesで石を拾う 34】

ARCHOR GAMESの新作はやはりすごかった

 「Xbox LIVE Indie Gamesは玉石混交である」。誰が言ったか知らないが、そんな言葉がある。しかし、世間で目立つのはほとんどが玉ばかりであり、そこらに転がる石は無視されるばかり。 もし玉石混交というのであれば、石もまたこの場において重要な要素ではないか? そんな思いから、尖った石を拾って紹介するコーナーを始めたのである。

bbox_WBM.jpg この「尖った石拾い」で何度か取り上げているARCHOR GAMESというデベロッパがある。ARCHOR GAMESは最初期からこのXbox360インディーズゲームで活動しており、その無茶苦茶なゲームでプレイヤーを魅了し続けている。

 だが、2008年から活動を続けているわけであり、それが2013年にもなれば技術力が向上するわけだ。今までは、使い回しに使い回しを重ねたエコロジカルなゲームや、無意味なテキストと選択肢で無価値な物語を読ませる『Evan Quest』などを制作していたのだが、今回はなんと3Dムービーでミステリーを描いたのだ!

 いやまったく驚くべき進歩である。ちなみに、動画はLionhead Studiosの『The Movies』で制作されており、本作はiOS向けにも配信されている。しかもそのiOS向けアプリの詳細ページでは3人のファンが本作を絶賛しており、というかARCHOR GAMESのアプリすべてに似たようなコメントをしている。つまり、こういう評判の操作までするようになったのだろう。

WBM_01.jpg
『Wright Brothers' Mysteries』のタイトル画面ではないが、タイトル画面に近いであろう部分

 そんなわけで今回は『Wright Brothers' Mysteries』の紹介である。開発は前述のようにARCHOR GAMES(ECHS BACHS)で、価格は80マイクロソフトポイント。配信日は2013年3月1日。無論、全編英語で字幕などもない。
このエントリーをはてなブックマークに追加


ムービーを眺めているだけでいいお気楽ミステリー

WBM_02.jpg
さすがにムービーが死ぬほど滅茶苦茶ということはない

 さて、本作の概要は、眼鏡のケイドと坊主のエヴァン、ふたりのライト兄弟がおばあちゃんの宝石を探すのが目的である。なお、基本はほとんどムービーを眺めているだけで物語が進行する。

 これだけでは「ゲームですらない」と非難する人もあろうが、そもそもテキストだけの物語を垂れ流していた以前を考えれば、立派に進歩したといえよう。ましてや本作、後でまた話すがミニゲームもついているのだ。

WBM_03.jpg
選択肢はよく考えて選ぼう

 そして、ムービーを見終えると選択肢が発生する。まずライト兄弟はおばあちゃんから箱を話を聞き、その中に何が入っていたのか……? というところでその中身を選択することができる。

 こうして物語の途中に選択肢が出るあたり、同デベロッパの『Evan Quest』仕様である。

WBM_04.jpg
そもそもこのPCでDVDとか読めるのか

 そして、どの選択肢を選んでもほとんど差がないあたりも『Evan Quest』仕様である。先ほどのDVD・CD-ROM・USB DRIVE、どれを選んでも展開に支障をきたさず、上記画像のムービーが流れるので安心して欲しい。

 「それなら、なぜ選ばせるのか?」などと考えてしまった人は、せっかくARCHOR GAMESが用意してくだすった選択できる自由を無下にするというのだろうか。確かにそんなものは吐き出して捨てていいが、一応は変化があるシーンもある。

WBM_05.jpgWBM_06.jpg
きちんと変化がある選択肢だってあるぞ!

 たとえば「どうやって移動する?」というシーンでは、車に地下鉄にヘリコプターにと選択ができ、それぞれで違うムービーが用意されている。このあたりはまさしく『Evan Quest』からの進歩だ。というより、本作は3Dムービー版の『Evan Quest』というべきなのだろう。

 なお、これらは選択肢後の直近ムービーが多少変化するだけであり、物語の展開はどうあがいても変化しないので、やはり安定したミステリーを楽しませようという意図なのだろう。今ここで君は中指を立てて良い。

WBM_07.jpg
へんてこなシーンだらけで笑えることは確か

 このあとの物語もかなり困惑するもので、「残されたデータから同デベロッパの別作品『AVATOUR』に辿り着き、そこから更に月面着陸の切手に意味があると到着する」という捜査のあたり、これはどういう繋がりがあってこうなるのか、クリアしたあとでもわからない(僕が英語をよく聞き取れていないだけではないだろう)。

 また、ライト兄弟が博物館に向かうのはいいのだが、急にピッキングのミニゲームを始めて盗難行為を始めたり、あまりにも突如にNINJAがモデル歩きで登場するため、頭がその展開についていけずに笑いが巻き起こる。

 こんな形で物語は展開し、どう考えてもコントな大爆発シーンも複数あり、この世のものとは思えないほどどうでもいいミニゲームがもうひとつあり、というごった煮状態である。特にムービー内のシーンの繋がりが不自然すぎるあたり、一見の価値あり。

3Dムービーになっても変化しないものがある

WBM_8.jpg
この選択肢はなんなのだと問いたい

 ちなみに本作、ミステリーなので最後の選択肢では犯人を見つけ出さなければならない。これこそ本作の本懐だろう。ただし、犯人当ては失敗しても問題ないし、だいたい推理もクソもなく、暴力で事件を解決している。ましてや本作、容疑者が登場するのは犯人が誰かわかる直前であり(無論、それまでに名前すら出てこない)、伏線はないと言い切っても間違いではなく、解決したあとは数行のテキストが出て味気なく終わるだけである。つまり、犯人当ては本当にどうでもいいのだ。

 こうなるともはや何がナゾなのかよくわからないというか、本作がミステリーと謳っていること自体がナゾだが、そのとおり、『Wright Brothers' Mysteries』という作品自体こそミステリーそのものなのだ。そもそも『Evan Quest』自体が“意味のない選択肢を選ばせて、価値のない物語を読ませるだけの作品”だったので、それを生かしたままうまく3Dムービーに仕立てたといえよう。


 やはりARCHOR GAMES、以前の作品から見た目が変わったとしても、その作風は変わらない。


box_WBM.jpg

Wright Brothers' Mysteries 80MSP Xbox.com詳細ページ
デベロッパー:ECHS BACHS ジャンル:アクション & アドベンチャー 2013/03/01

 ライト兄弟がナゾを解決するミステリー。
 内容としてはムービーが大半で、無意味な選択肢とハムスターのクソみたいなミニゲームが付属している。
 しかし、本作の存在そのものがミステリーなのだ。

コメント

非公開コメント