スリムかつ明確な戦闘がウリに見えるが、実は平均的に優等生なRPG 『ふしぎの城のヘレン』

たまにはフリーゲームの話でもしよう

 ここ最近はXbox360で遊びたいゲームがないので、何か遊ぶものがないかと飢えている。すると、「PLAYISM」で『ふしぎの城のヘレン』という作品を発見して興味を持った。

 ましてや本作、PC向けフリーゲームなのでなんとはなしに手を出すには持って来いである。そして遊んでみれば、こうして記事にしたくなるほどには楽しめたのだ。

 さて、『ふしぎの城のヘレン』はRPGツクール2000で制作されたスリムで明確かつ平均点の高いRPGである。制作者は「さつ」さん。なお、2011年の作品とのこと。

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『ふしぎの城のヘレン』タイトル画面

運の要素が排除され数値が明確な戦闘が特徴だ

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はじまりはのどかな一軒家から

 主人公であるヘレンは、兄と一緒に暮らすエルフの少女である。彼女は言葉も喋れなければ、記憶もなく、ただ毎日を平穏に過ごしていた。しかし、ある日に突然、彼女は外の世界を見たくなり、旅立つことを決意したのであった。……というような導入である。

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明確な意志を持ってコマンドを選んで戦うRPGである

 先にRPGと書いたように、本作はダンジョンを探索して、敵と遭遇したらコマンドを選択して戦うオーソドックスなゲームである。しかしこのすべてが明確な戦闘が最大の特徴だろう。実は本作、要素が少なく隠された数値などもなく実にわかりやすいのだ。

 たとえば「ドラクエ」や「ファイナルファンタジー」の場合、戦闘時の行動順やダメージというのはおおまかに決まっていてもランダムの要素が入ったりするし、隠された要素(属性や状態異常の耐性)も多い。要は、見える要素が多すぎると混乱するので、ある程度はファジーな調整で遊びやすくしているのである。

 しかし、『ふしぎの城のヘレン』は違う。まず、行動が開始されるカウントはお互いに表示されるのでどちらが先にいつ動くかわかるし、ダメージは事前に提示された要素でどんな数字が出るかわかるし、その結果にはランダムな要素が挟まれない。そのため戦闘は詰将棋のようになり、論理的に戦う緊張感を生み出しているのだ。おそらくそれは、ファジーな大作RPGのカウンターという意味もあって強く感じられるだろう。

平均点が高いと言うべきか、器用貧乏と言うべきか

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どの武器を鍛えるかもポイントとなる

 もっとも、本作はガチガチの戦略RPGというわけでもなく、救済要素も豊富に用意されている。敵にやられれば最大HPが増やせるし、雑魚と戦い経験値を溜めて武器を強化することもできるうえに、終盤になるとほとんど救済措置に近い装備も登場するのだ。

 ……と良い風に紹介したいところなのだが、実はこれには問題がある。というのも、序盤こそ詰将棋のような戦いができる本作だが、後半になって数値が大きくなるとだいぶ大味になる。更に、敵パターンが固定だと作業になり、敵パターンにゆらぎがあると運の要素が出てくるという、ほとんど最初の理念が崩れる形になっているのだ。

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ふしぎな城を取り巻く話も要素のひとつではあるのだが

 それを考慮しているのかしていないのかは知らないが、本作は先に進むたび物語の要素が強くなってくる。基本的にはヘレンを取り巻く環境の秘密が明らかになるのだが、最終的には戦闘もそれに引っ張られてイベント用のまず勝ちが確定したものになっていく。

 となれば、物語が主体のゲームとして価値を見出せれば良いのだが、これもそこまで効果的ではない。そもそも、全体を通しても5時間程度と尺があまり長くないこともあってか、物語はこれといって際立つものではないだろう。もっとも、RPGにおいて定番な添え物としては悪くないのだが。

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ウィンクしたり走るヘレンは愛嬌たっぷり

 さて、ここまで書けばわかるかもしれないが、本作は良く言えば全体的に質が高く、悪く言えば器用貧乏なのである。他にもこういった要素は多く……。
  • ヘレンのアニメーションは特によく出来ており、表情豊かでキャラ設定的にもブロンドのエルフ(更にケツもでかいらしい)とおいしい面が多い。が、彼女はほとんど喋らないし立ち絵もなく、キャラ萌えとしてはどこか物足りない。
  • そして、ダンジョン内に謎解き要素を入れて緩急をつけてはいるが、そもそも目的地が明確でなかったり、強引な謎解き(ほぼノーヒントの隠し通路を発見するなど)がある。
  • また、所々に入るギャグも良い添え物になっているが、それが主体なわけでもなし。
 このように、良い部分もあれど問題もあるということばかりなのだ。なぜこう見えてしまうのかといえば、それは本作がどれもこれも手に取ろうとしているからだろう。おそらく何かひとつに特化してモノになっていれば、欠点などあっても見えなくなってしまうはずだ。

『ふしぎの城のヘレン』はフリーゲームであればかなり優秀だろう

 よって、僕からすれば「心地よく遊べはするが、どこか物足りない」ように見える『ふしぎの城のヘレン』なのだが、本作がフリーゲームということを考えれば、これは良い方向に転がるだろう。

 当たり前だが、フリーゲームはPCさえあれば遊べるという取っ付きの良さが素晴らしい。そのため、普段はあまりゲームを遊ばない人もプレイすることが多いはずだ。そして、そういう強い刺激に慣れていない人から見れば、『ふしぎの城のヘレン』はどこを見ても高品質のRPGに見えると思われる。

 もっとも、個人的には本作が“ガチガチの戦略を組む戦闘がウリのRPG”に見えたので、理念がブレていく様は至極残念であったと言っておきたい。それでもクリアするまで余計なことを考えずに遊べたのだから、『ふしぎの城のヘレン』が平均的に優秀なRPGであることは疑う余地がないだろうが。
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