アートなビデオ・ゲームとは、“ほのめかしの多さ”なのだろうか? 『Lifeless』

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今回はXbox360インディーズゲームにしては珍しく、芸術志向の作品

 数年前からアートに近いビデオ・ゲーム作品が目立ち始めた。Xbox LIVE アーケードあたりでも『Limbo』といった作品が登場し、かなりの人気を得ている。あえて曖昧に言うと、そこまでゲームらしくない作品というものが、ゲームとして確立しているわけだ。

 一方、Xbox360のインディーズゲームことXbox LIVE インディーズゲームにはそういう作品が少なかったのだが、それでもないわけでもない。実際、これから紹介しようとしている『Lifeless』という作品は、そういうものなのだから。

 ただし、この手の作品は極めて曖昧で、個人的な印象を出しきる必要がある。それがどういうことかといえば、ひとつ間違えれば何もない空間を眺めて泣いたり笑ったりする行為にもなりうるのだ。

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ある人間を操作して世界を歩きまわる内容のゲームだ

 ともあれ、改めて紹介しておこう。『Lifeless』は2013年10月26日にXbox360インディーズゲームで配信されたアート作品である。開発はDragonSix(D6)で、価格は100円。
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他人の恐怖から逃れつつ世界を巡る

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『Lifeless』タイトル画面

 タイトル画面にも書いてあるように、本作は「孤独」の経験を描いたゲームである。そしてこれも見ればわかるが、本作は全体的に描写がやたらと簡素である。

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緑色の人に近づくほど、自分が崩壊しそうになってしまう

 さて、本作はほとんど言葉もなく、すべきことも提示されない。プレイヤーは青色の人間を操作し、薄茶色の街中と思しき場所を歩きまわるだけだ。ただし、彼には弱点があり、他人に近づくと鼓動が早まり、文字通り分解して消えてなくなってしまう。

 説明だけをしてもよくわからないと思うが、これは対人恐怖を描いているのだと思われる。このように、解釈を重ねて読み込んでいくゲームであることは間違いない。いずれにせよ、人を避けて先へ進むのだ。

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街中に赤い女性はひとりだけしかいない

 しかし、なぜか赤い色をした人物だけは近寄っても平気なのだ。なぜ平気なのか? プレイヤーにとって親しい人物なのか? それを読み解いていくわけだ。

孤独を描いたというが、具体的に、あるいは抽象的に何を描いたのか?

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あるアイテムを入手すると、対人恐怖が治って強気になれる

 ……といっても、このゲームは数分で終わる。一応はエンディングが4つあるそうだが、とりあえず3つまでしか確認できなかったし、そもそもそれを3つと数えていいのかもよくわからない。なぜなら、エンディングといっても初期状態にリセットされるだけなのだ。

 実は本作、もともと2011年にルーダムデア(48時間以内にゲームを作るオンライン・イベント)で制作された作品なので、内容が薄いのは仕方ないかもしれない。が、それにしても何もなさすぎる。特に“ほのめかし”にこだわっていないのが大問題だ

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PLAYDEAD 『LIMBO』ゲーム画面

 たとえば『LIMBO』だ。この作品も言葉はほとんどなく、あるのはおおまかな設定と印象的なアート・ワークによるほのめかしである。光と影だけで表現された明確でありつつも曖昧なモノトーンの世界であり、ここが辺獄(LIMBO)という設定があるからこそ、どういう意味なのか想像を働かせることができる。

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あずまきよひこ 『よつばと!』5巻 p154-155 より

 また、別ジャンルになるが、『よつばと!』という漫画の1シーンに良いほのめかしがある。上記画像の場面では、よつば(子供)が海に行きたいと泣くが、父親はまったく意に介さない。だが、夏の風景とツクツクボウシの声が描かれているこのページのあと、父親は前言を撤回し、海に行こうといきなり言い出すのだ。

 なぜ父親が考えを改めたのかといえば、それは楽しい夏の終わりという寂しさを感じ取ったからだろう。ゆっくりと雲の動く空、照りつける太陽、朝顔……、いわば長くて楽しい夏休みの象徴でもあり、それが去りゆくことは寂しいのだ。ならば、せめて去りゆく前に海に行ってもいいだろうという考えに行き着く。……ということが、2ページでほのめかされている。

 このように、語らずに何かを表現する場合、精細に描かれたグラフィックや、音楽、設定が必要だ。核心を隠しつつ周囲に関連したものがあるからこそ、誰もが「この核心はこうだろう」と考える。だが、『Lifeless』にはそれがない。あるいは、僕が見ていないもうひとつのエンディングにあるのかもしれないが、ヒントもないのでまったくたどり着ける気がしない。

ほのめかしを使うゲームの恐ろしさも持っている

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エンディングのひとつが飛び降りだが、これをエンディングと言っていいのかどうか

 見てのとおり、グラフィックは突貫工事で作ったということで納得できてしまうし、BGMはなく効果音もこれといったものではない。設定もほとんど皆無で、あるのはなぜ主人公が死ぬのか、殺すのかという謎くらいのものだ。だが、考える材料がないので探る気にもならない。

 ただし、個人の視線によって見るものだという問題がある。たとえば、前述の『よつばと!』における父親の気持ちを理解するには、同じように大人の視線でなければならない。つまり、少しは感性が一致している必要があるわけだが、感性なんて曖昧なものなわけで、厄介なことに「何かを見ようとすれば見えなくもない」のだ。

 少なくとも僕は、『Lifeless』から何も読み取れない。だが、そんなことはないと言い切ることも十分に可能である。もっともそれは、不確かなもので、一歩間違えれば、虚空を眺め続けて笑ったり泣いたりする行為になり得る。そのため僕は、「少なくとも『Lifeless』には十分なほのめかしがない」とだけ言っておこう。


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Lifeless ¥100 Xbox.com詳細ページ
デベロッパー:D6 ジャンル:アクション & アドベンチャー 2013/10/26

 孤独を描いた実験的なアート・ゲーム。
 さすがに48時間で作ったゲームと思えてしまうほど内容が薄い。
 しかしながら、それでも何かあるように見えてしまうのが恐ろしい。

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