『サイコブレイク』は、ホラーとアクションが絡みぶつかり合う「サバイバル・ホラー」の集大成だった

サバイバル・ホラーとはこういうものなのだろう

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『サイコブレイク』起動画面

 Xbox One版『サイコブレイク』をひとまず一周クリアした。“サバイバルホラーの原点回帰”を目指し三上真司氏が手がけたという本作だが、3パターンで説明するとこうなる。
  1. ディレクターである三上氏のことを知っている人に対して
    『バイオハザード』のあとに『ディノクライシス』を作った三上氏が、本作『サイコブレイク』を作った。

  2. 『バイオハザード』などは知っている人に対して
    名前や発売会社、世界観や設定はまったく違うものの、このゲームは『バイオハザード4』の続編のようなものである。

  3. 特によく知らない人に対して
    銃を撃って戦うホラー・ゲームとしては高品質だ。ただ、歴史を変えるとは言われなさそう。

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罠だらけの精神病院を必死で掻い潜る……のは序盤のみ

 要は、高品質なゲームながら、期待されていたほど革新的ではなく、むしろ過去の集大成に近いアクション・シューティングなのだ。おそらく宣伝との乖離を感じてしまうだろうが、ふつうのサバイバル・ホラー(あるいはホラー要素のある3Dアクション・シューティング)として見ればなかなかの作品だ。
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ストーリー・ゲームシステムについて

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主人公となる「セバスチャン・カステヤノス」

 『サイコブレイク』では、刑事である「セバスチャン・カステヤノス」を操作し、謎の連続殺人事件を捜査していくことになる。セバスチャンが仲間と共にビーコン精神病院へ向かうと、あたりは死体だらけ。しかしそれだけではなく何やら様子がおかしい。

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奇妙な力を持ち事件にも深く関わる謎の男「ルヴィク」

 監視カメラのモニター室から内部の様子を確認すると、そこでは謎の男が警官たちを一瞬で殺しているではないか。そして、その男が不気味にこちらを見つめてきた瞬間、セバスチャンは既に恐怖の世界へ閉じ込められているのであった。……というのが本作のプロローグである。

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弾数が心もとない時はステルスを使うと吉

 ところで、本作は隠れ進むゲームである。はじめはサディストと呼ばれるチェーンソー男に追いかけられ、ひたすらに逃げ隠れ続ける。その後に銃を手に入れても弾が少ないので安心できず、「ホーンテッド」と呼ばれるゾンビのような人型クリーチャーたちから逃げまわる。このように、常に恐怖と隣合わせのゲームシステムなのだ。

 ……というのはほぼウソで、このゲームはTPS(三人称視点シューティング)であると言っても問題ないだろう。つまり、銃を撃ちホーンテッドを倒し、恐怖に立ち向かっていくのだ。

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敵と正面から戦う場面もかなりある

 チャプター1はそれこそ隠れ進むだけの内容なのだが、チャプター2以降で武器が出てくるとゲームがかなり変わる。また、敵は火に弱いのでマッチの使い方を覚えれば楽になるし、必要な時に隠れて進んだりステルス・キルを活かす程度でいい。

 また、後半にはバリバリ撃ちまくるゲームになる。市街地ではホーンテッドたちと銃撃戦を繰り広げ、巨大生物とのカーチェイスを行い、悪霊退散と叫びながらショットガンやライフルをぶちかます! ……「ホラーじゃなくてアクションじゃねーか!」と言いたくなるが、この“ホラー+アクション”がサバイバル・ホラーというやつである。

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アップグレードは通常のアクション・ゲームとあまり変わらず

 なお、ゲーム中には「グリーンジェル」(脳漿らしきもの)を集めてアップグレードを行うというシステムもある。こうなるともう完全にアクション・ゲームだが、セバスチャンは奇妙な装置により脳ごとアップグレードを行われるように、雰囲気だけは最後までホラーを維持しようとしているのだ。

アクションとホラーの齟齬

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『バイオハザード5・6』を思い出す銃撃戦

 さて、本作のディレクターである三上真司氏が手がけた『バイオハザード』シリーズでもそうだが、このジャンルは途中からホラーからアクションへの転換が行われている。どうやら、この手のゲームはどうしてもアクションへと転化しがちなようだ。

 僕の体験から言えば、『サイコブレイク』の恐怖表現は物足りない。たとえば敵から隠れて進んでいる時は良いのだが、結局は戦って勝つことになるので興ざめしてしまう。これはもう戦えるゲームの根本的な問題で、相手が倒せる(自分より格下である)ことがわかれば、あっさり恐怖を失うのは自然な成り行きである。ただし、アクションとして敵を倒せないのは問題なのだ。

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黒髪長髪が似合う全裸の女の子「ラウラ」

 また、諸悪の根源となる「ルヴィク」の出自を描いているのもホラーとしてはつらい。こうなると相手は悪役ではなく、同情すべき悲しい相手になってしまうのだ。ただし、これはアクション・ゲームとして考えると物語が味わい深くなる。

 ほかにも、即死が多いゲーム構成も恐怖が醒める(何度も死んだら“死が迫る恐怖”などなくなる)が、敵のパターンを見極めるアクション・ゲームとして考えれば、当たり前の作りである。なお、物語も似たような板挟みになっており、アクション・ゲームとしては便利だが、ホラーとしての処理に困っている様子が見受けられる。

 つまり、サバイバル・ホラーには「ホラー要素」と戦って生き残る「サバイバル要素(アクション要素)」が内包されており、それぞれ噛み合わない部分もあるということなのだろう。

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グロテスクな場面は特に最終盤で山盛り

 それを前提として理解しておけば、本作は高品質の作品と言える。『バイオハザード4』や昨今のTPSを基調にしたシステムで、ホラーとアクションを一気に楽しむサバイバル・ホラーのゲームなのだ。細かい問題も内包しているし、それらすべてを覆すことも難しいが、それでも駄作と言うには立派すぎる。

『バイオハザード4』の三上氏ではなく、『ディノクライシス』の三上氏

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謎の数字を元に祭壇に生贄を捧げるという、いかにもな遺跡

 ただし、本作に期待しすぎる人の気持ちもわかる。広告のキャッチコピーに釣られてしまうのはともかく、あの『バイオハザード』や『バイオハザード4』の三上真司氏がディレクターを担当したゲームなのだ。

 念のため書いておくが、『バイオハザード』はサバイバル・ホラーというジャンルを確立させた作品として有名だし、『バイオハザード4』は肩越し視点のTPSとして革新的だったらしい。となれば、新たなサバイバル・ホラーを期待していてもおかしくはないだろう。

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「サバイバル・ホラー」としては定番すぎる洋館も登場する

 ただし、『サイコブレイク』はサバイバル・ホラーの総復習とも言える内容で、それどころか『バイオハザード』シリーズのオマージュと思しきものすらいくつも入れているのだ。たとえば、遺跡や洋館で謎解きをしたり、ゾンビのようなホーンテッドは見たことのあるカメラワークで動くことすらある。

 ましてや、この手のジャンルがアクション寄りになってしまったという流れが、そのまま入っているのだ。となると肩透かしとなってしまい、期待しすぎた人が「しょせんは『バイオハザード4』のつまらない続編」と言い出しても不思議ではなく。

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徐々に明らかになるストーリーは、最後にひっくり返される

 よって、本作は「『バイオハザード』のあとに『ディノクライシス』を作った三上真司氏のサバイバル・ホラー」というふうに受け取るのが良いと思われる。念のため説明しておくが、『ディノクライシス』は乱暴に言えば『バイオハザード』のゾンビが恐竜に変わっただけのようなゲームである。

 「『サイコブレイク』はまったく新しいAAAタイトル」などというのは、いささか広告に近い言葉になってしまうか。あくまで本作は、ホラーとアクションがつばぜり合いをしつつ、完全な決着がつかなかったサバイバル・ホラーなのであろう。

コメント

GoWがバイオ4のヒットでFPSからTPSに変更されたり、宇宙のバイオを目指してデッドスペースが作られたのを考えると、海外での発売前の期待感はすごかったんでしょうね。
そんな私は予約をしていたものの、海外の酷評を見て取り消しました。
今どきホラーゲームにホラーなんて期待していなかったものの、駄作と言うには立派すぎる。と言われるのなら、素直に買っとけばよかったと後悔。

よそレビューのや点数は気になりますよね。ただ僕は、せっかく遊ぼうと思った気持ちを取り消してしまうのがもったいないなと考えています。
評判がよくて興味がないゲームと、評判が悪くて興味のあるゲームだと、後者を手に取ったほうが楽しめることが多いです。自分からやってみたいと思う気持ちは、出そうと思っても出ないものですからねえ。貴重ですよ。
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