社会につかれた“だめなおとな”のための純愛エロゲー『相思相愛ロリータ』レビュー

この場でははじめてする同人エロゲーの話

 普段ほぼ遊ばないエロゲーの話をするとは思っていなかったが、面白く感じるゲームがあればどこへでも飛んで行きたいというのが僕の本心である。

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『相思相愛ロリータ』タイトル画面(一部トリミング済み)

 さて今回は、サークル「夜のひつじ」が手がけた同人ゲーム『相思相愛ロリータ』というタイトルを紹介する。タイトルを見てわかるように、本作は幼い少女と純愛するエロゲーである。

 ……確かにこのゲーム、エロゲーどころかDLsiteなどで売られるドエロゲーなのだが。実はエロゲーという方式で、しかもロリゲーでありながら、普遍的で余計な隔たりのない愛を描こうとした作品でもあるのだ。

 なお、このサークルは過去作で「同人ゲームオブザイヤー」を受賞していたりと、その筋では有名所のようだ。僕は今まで知らなかったことを残念にも思えるが、とりあえず本作を知ることができて何よりである。

※今回は一部のスクリーンショットを加工(トリミング)しているが、これはFC2の規約を顧みた自主規制である。また、その関係で左右に黒帯が表示されているが、通常のゲームプレイ時はふつうのウィンドウで遊べる。
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単にエロで喜ぶわけでもないというゲーム概要

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満員電車での通勤&帰宅シーン

 『相思相愛ロリータ』の物語は、仕事に忙殺される主人公「柄木 丘(からき おか)」が、満員電車で少女「千島 まこ」に出会うことからはじまる。つり革を掴めない彼女に足を貸すことになった主人公だが、別に何か恩着せがましいことを望んだわけでもなく。しかし、まこのほうは彼に強く興味を持ったのであった。

 ジャンルとしてはノベルゲームで、選択肢もなく文章を読んでいくだけである。また、「相思相愛」という単語がタイトルにあるように、“抜きゲー”(性欲を発散させる目的のゲーム)とは思いづらいと説明したほうがいいものの、それでもエロゲーであるし、そういうシーンのほうが多い。

 ただし、僕のように性欲を発散させるゲームとして見れずとも楽しめる可能性を持ったゲームであり、そうでなければ記事を書いてはいないわけだ。なお、このゲームは基本的に、社会人向け(それもおそらくは、若めの独身が対象)であることは留意しておいて欲しい。

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異様と言えるほど積極的なまこ

 さて、馴れ馴れしくありつつも年齢以上の聡明さを見せるまこは、次第に主人公を「おかくん」とまるで同年代のように呼び、手を握り、挙句の果てには頬にキスをするようにもなる。そして、ついには家に行きたいとまで言い出しはじめるわけだ。

 こう書くと都合のいい話に大喜びする人か、もしくは都合が良すぎてへそを曲げる人に別れると思うが、単にそれだけのゲームではない。ふたりが(都合良く)惹かれ合ったことには違いないが、そこには鬱屈とした雰囲気がついてくるのである。

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夜中まで仕事をし、昼にようやく家へ帰ろうとした時の独白

 「おかくん」は単に仕事が忙しいだけでなく、その日々をこなすことを諦観しているとすら言える。彼にとって仕事をこなすことは拠り所を探す方法でもあるはずなのだが、しかしまったくもってそんな充実感はない。

 そして、まこのほうも、家族から受け取るべきものが欠けているというような描写がある。彼女が「おうちに帰りたくない」と言うのは深い意味があるからではなく、言葉通りの意味だ。

 こうして同じ深さのさみしさを抱えたふたりが出会うことにより、互いに求め合うことになる。そう、ロリでエロなゲームだが、話の肝心な部分はそこなのだ。

ロリでありエロである理由とは

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あくまでも健全に昼寝している場面

 こう書くと「なぜロリものなのか?」と思う人もいるだろう。単純な話、さみしい心を慰めて欲しいのであれば、むしろヒロインは年上のほうが適しているわけだ。無論、まこが幼いのは制作側の趣味か都合であろう。しかし、少女であることが機能的でもあるのだ。

 第一に、このゲームは幼い子に甘えるだけの作品ではなく、あくまで相互関係なのである。つまり、まこを甘やかすこともあれば、「おかくん」が甘やかされることもあるし、その両方もあり得る。ただ年上に甘えるのとは違い、甘やかす面もなくてはならない。

 そして、少女であるがゆえの純真さ(と表現していいのだろうか)も大きなテーマのひとつなのだろう。成人男性が人に甘えるのは難しい……という価値観があるのは現代においては間違いなさそうで、それこそ強がらなくてはいけないと思い込んでいる人もいるはずだ。

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自己否定的な主人公を肯定するこのような場面もしばしばある

 だが、極めて無垢な(と書くべきかわからないがそのような)女の子がいて、そういった感情を受け止めてくれるとなるとどうだろうか。社会通念を一切無視して自分を好いて甘やかしてくれる人がいれば、それはまさしく甘美なものであろう。そして、その相手は純真さを感じるような形でなければならず、結果として社会に順応しきれていない少女になるわけだ。

 また、「純真だとか純愛だのと言うのであれば、なぜエロゲーなのか?」と思うこともあるだろう。そもそも愛だとかいうのは、性愛・無償の愛・家族愛・兄弟愛などに分類する見方もあるようだが、それらはどれも大きく愛とくくられているわけだ。更に、複数が混じっている可能性もあろう。

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あくまで健全な添い寝シーン

 確かにこの『相思相愛ロリータ』、はじめは生理すら来ていない彼女に対して性欲をぶつけるという作品だ。しかし、そこから少しずつ色合いが変化してくるようになる。

 そのことが特に象徴的なのは、まこをお姫様抱っこをしながら性交するシーンである。これは「おかくん」がまこをお姫様扱いして奉仕しつつ、しかし彼女からは“よしよし”されるという場面だ。間が抜けているとも言えるイベントCGであり、「性欲を満たしつつ異性としての相互関係を成立させている」というのを一枚の絵に収めたものでもある。

 また、話の展開としても、そのうちパンケーキを一緒に作ったり、互いに相手の好みを考えてプレゼントを贈るようになるわけだ。そして、男女の愛というものはいずれ形になりうるわけで、物語はそこで終りを迎える。

 極端に言ってしまえばこのゲーム、単に男女の間が親密になる様を描いただけである。そして、主人公が成人男性であり、ヒロインが少女であっただけ。更に、あえてそれをエロゲーとして描写しただけなのだ。

「だめなおとなに、なりましょう」

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オマージュもしくは引用と思われる文章がある場面

 余談になるが、このゲームは、小説『ライ麦畑でつかまえて』などで有名なJ・D・サリンジャーの短編『エズメに──愛と悲惨をこめて』(題は訳によって違うらしい)から特に大きな影響を受けているようだ。たとえば設定や特定の台詞の引用など、類似したところが見られる。

 その『エズメに──愛と悲惨をこめて』はどんな内容かといえば、とあるアメリカ人下士官の男が、偶然にも優雅な少女と出会い、数十分の会話だけで親しくなるというものである。もちろん官能小説ではないし、あくまでふたりの親交の話だが──、誤解を恐れず言えば描こうとしたものはかなり近いのではないか。

 このゲーム、少女が好きな男性に向けられたゲームなのは確かだ。ただ、単に性欲が湧いている中高生向けではない。しかし、そういった性欲を否定していないどころか、肯定しつつ更にプラスアルファも求めようという作品なのだ。

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まこを膝に抱え談笑するシーン(一部トリミング済み)

 ただ残念なのは、最後の展開が駆け足な気もする点か。より丁寧に描写すれば……と思うこともあるが、プレイ時間が4~5時間程度の低価格な同人ゲームとしては限界があるだろうし、エロゲーという要素が主である事実は変わりなく。

 しかしながら、エロゲーという立場で描いたことが面白くもあるのだ。ロリエロゲーと思っていたものが、蓋を開けてみれば成人男性の孤独を浮き彫りにする作品でもあるわけで、これはなかなか衝撃を受けるだろう。ましてや、この作品はそのさみしさを埋めようとするのだから。

 『相思相愛ロリータ』は、ひとりでいることのさみしさを純真な女性によって埋めてもらいつつ、少女によって性欲をも満足させようとする“だめなおとな”たちのためのゲームなのである。

コメント

本当に素晴らしい作品でしたね…
寂しさの一致理論が最も印象的です

社会情勢に合わせた作品というのも効果的だったでしょうね。エロゲーを遊ぶような人たちも、学園ものが辛くなる年齢になったこともあるでしょうし……。
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