ぬいぐるみも手紙も爆弾も暖炉で燃やすゲーム『リトル インフェルノ』は、暖炉の暖かさと消し炭の無情を描いたのだろうか

炎がすべてを包み込んでくれるゲームを紹介

 「ただ薪が燃えるだけの暖炉」が映しだされたテレビ番組がどこかにあるそうだし、Xbox 360のインディーズゲームにも暖炉を眺めるだけのソフトがあった。家の中で火が燃えているというのは、何か特別なものを感じるのであろうか。

 Wii Uで2015年4月2日に配信されたDLソフト『リトル インフェルノ』を遊んだ。本作は、暖炉にガラクタやオモチャを投げ入れて、ひたすらに火遊びをするというだけのゲームである。

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金(紙幣)を燃やして金(硬貨)を出す

 本作は、はじめは海外でWii UやPC向けタイトルとして2012年11月に配信開始され、その後にスマートフォン向けタイトルとしても登場したあと、ようやく日本語Wii U版が登場したというわけだ。なお、開発はアメリカのインディーデベロッパ“Tomorrow Corporation”で、ローカライズは任天堂が行っている。


 いっそのこと「なんでも燃やせてしまうバカゲー」としたほうが、書くのも読むのも楽だろう。しかし、それはあくまで表面的なものであり、本作の奥底にあるのは、暖炉に対するさまざま思いではなかろうか。僕が遊び終えて思ったのは、暖炉がある生活の経験の有無で楽しさが大きく変わるのではないか? ということである。さすがに火遊びの楽しさくらいはわかるが、どうもピンと来なかった。
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要は燃やすだけである

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『リトル インフェルノ』起動画面

 さて、前述のようにこのゲームはただ暖炉でモノを燃やすだけである。特に深いシステムがあるわけでもない。必要なのは、火遊びをしたいという好奇心だけだ。

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とうもろこしと重油を合わせてポップコーン・パーティーだ

 Wii U GamePad(もしくはWiiリモコン)で画面をタッチすると、なぞった部分に火が放たれる。そのため、何かものを暖炉に放り込んでから火を放てば、たとえそれが缶であろうと寿司であろうと燃えるのだ。

 しばらく炎上を眺めたあと、残るのは燃えカスだけ。いや、このゲームは燃やすと硬貨が出るのであった。

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さまざまなものがカタログで購入できるが、すべて燃やすのみ

 そして硬貨を集めたら、カタログを見てさらに何かを買う。いや、「何かを買う」と言っても燃やすものを買うだけなのだが、これがまたいろいろあるので選ぶのに悩むかもしれない。まァ、結局のところすべて燃やすことになるのだが。

 基本的なシステムはこれだけで、あとはたまに燃やすもので「コンボ」が発生することがある。コンボを発生させると荷物を速達にできるチケットが手に入るほか、一定種類のコンボ達成が新たなカタログを手に入れるための条件にもなっている。

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お隣さんからの不気味な手紙

 たまに隣人や見知らぬ人からの手紙が届くものの、何を言っているかよくわからない。適当に読み飛ばして燃やしてしまおう。外ではずっと雪が振り続けているのだから、ものを燃やして暖を取るだけでいい。

 この手紙を燃やし、先ほど届いた荷物に入っていたゾンビを燃やし、他人のクレッジットカードを燃やし、ヒゲを燃やし……。まるで火遊びしか生きがいのない根暗なヤツに見えてくるが、そういうゲームなのである。

暖炉の経験が欲しい

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説明文も皮肉めいたものが多い

 前述のようになんでも燃やしまくる笑えるゲームに見える本作だが、実際はそれだけではない。無論、火遊びの背徳感を楽しむことは間違いなく、燃やせるものの説明文は皮肉で書かれていることが多いし、そもそも現実であれば燃やすに適していないものが大半だ。

 ところで、本当の火遊びには危険がつきまとうものだろう。下手をすれば火事になりうるし、そうでなくとも火傷を負うかもしれない。本作はあくまで燃やすだけのゲームだが、かといってそういう恐怖を蔑ろにしているわけではないのだ。

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作中で見られる不謹慎なようで不気味な『リトル インフェルノ』のPV

 たとえばゲーム中に見られる動画では、はじめこそ火遊びの楽しさが描かれているものの、その後は家が燃えてしまう様子が描かれている。また、手紙を出してくれる人たちも陽気で楽しいというわけでもなく、どこか狂気を抱えており破滅のニオイがするのである。

 そう、『リトル インフェルノ』は暖炉でモノを燃やす背徳感と、その恐怖がウリなのだ。しかし、ただ燃やすだけの作業がどうも退屈に思えてしまう。それはなぜかと考えてみると、暖炉と縁遠い場所で生きているのもひとつの要因ではないか。

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燃やすものによっては雨が降ったり花が咲くことも

 アメリカならすべての家に暖炉があるというわけでもないらしいが、少なくとも日本よりは身近なもののようだ。暖炉が近くにあれば、いけないものを燃やそうとして怒られるだとか、何か焦がして危ない思いをしたこともあろう。あるいは経験がなくとも、憧れ・恐怖を感じやすいのではないか。

 そういう人達からすると、本作はよりリアルに見えるのではないだろうか。薪が燃えるニオイや音、そして直火の暖かさなど、そのあたりがうまく想起できるとするのであれば、同じゲームからでも見えてくるものが違ってくるだろう。

 『リトル インフェルノ』は小規模なゲームなので、暖炉に対する思いがねっとりと描かれているわけでもなく、常に新鮮なゲームプレイがあるわけでもなく、やはり既に知っている人たちに暖炉のことを想起させる程度の作りに思える。ローカライズはしっかりしているものの、さすがにそのあたりの文化の差までは埋まらなさそうだ。

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最後の最後になって暖炉から離れる場面も

 また、物語も良く言うと奥深く、悪く言うと煙に巻くようなものである。この雪に囲まれた世界がいったいなんなのか、燃やすだけの遊び『リトル インフェルノ』の答えとは? などと考えても、空振りに終わりそうだ。

 画面の中にある暖炉の炎に何が見えるのか。そう問われた気がする。

コメント

PCが一番最初ですよ(リリース日: 2012年11月19日)

おっと、間違えてましたか。ご指摘ありがとうございます。

と思って調べてみたのですが、PC版は(MetacriticやSteamによると)2012年11月19日で、Wii U版が(任天堂公式サイトによると)2012年11月18日とありますね。まァ、多少の差はあれどPCとWii Uがほぼ同発てなところが正解でしょうか?

http://www.nintendo.com/games/detail/MmD8WcgfQI1CHEXP0hP_Iv5AMlMq9pwP

あ、僕の書いたこの記事で「Wii Uで2012年12月に出た」という感じに書いてありました(これ自体が間違いです)ね。そのあたり含めて直しておきます。いずれにせよ、わざわざご指摘ありがとうございます。
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