『継長忍鋼伝~春夏秋冬~』 追悼式

webninja.jpg XNAインディーズゲーム、日本開催時のロンチ(同時発売)ソフトとして登場した『継長忍鋼伝~春夏秋冬~』(TSUGUNAGA-NINKOUDEN)。この夏、8月24日をもってインディーズゲームから姿を消した。本当にわずかな間の命であった。そう、まるでこのゲームの主人公のように。
 いや、何か致命的な不具合があり、その修正のために一時的な公開を停止しただけかもしれない。そうであってほしい。致命的な不具合というと、このゲームの存在自体がそのように思えるが、とにかく戻ってきて欲しい。できれば致命的な不具合を修正しないで。

 なぜこうしてまで戻ってきて欲しいと願うのか。『継長忍鋼伝~春夏秋冬~』(以下、継忍)をプレイしていない、悲しくも愚かな読者は疑問に思うだろう。その理由は、プレイ動画を見てもらえればすぐにわかっていただける。
 申し訳ないが、ニコニコ動画にしか物が見当たらなかった。アカウントを持っていない方は見られないので、なんとか忍術で見てもらいたい。

(Xbox360)継長忍鋼伝(インディーズゲーム)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7917194

 ゲーム内容は横スクロールアクション手裏剣シューティングである…といっても、これはかなり簡略化しており、「継忍」の説明にはなっていない。手前はふつうの横スクで、奥のほうにいる敵には手裏剣シューティングで対応する、といえば事実の説明にはなるが、「継忍」の魅力を一切伝えていない。「継忍」は、それらのすべてを超越しているのだ。

 まず忍者が盆栽をいじっている画面からこのゲームは始まる。盆栽をいじるとは緊張感が足りないように思えるが、まァいい、非番のときくらいは趣味をするといいだろう。そう思いAボタンを押しステージセレクトに移動すると、一瞬女の人の絵が見える。なるほど、この人を救出でもするのだろうか。では、いざステージ選択画面になり助けようと意気込んだら、忍者が盆栽をいじっている。好きだなおい。
 そしてステージを選ぶ。始まるとやたらでかい音で、シュールなステージがはじまる。なぜかやたらいる町人。なぜかやたらある壷。「爆」と書いてある壷をなんとなく剣で切ったら爆死。敵が出てくる前に爆死。忍者とはこうも厳しい毎日が待っているのである。
 死亡した主人公忍者がまたひどく、「なんかもうめんどくさいからさっさと倒れるよ」とでも言わんばかりの倒れ方と同時に、非常にやる気のないSEを鳴らし死んでゆく。おい忍者ふざけんな死ね! いや、忍者死んでる!
 気を取り直しやり直すと、当たり判定が厳しいというか敵の攻撃が異常に激しく、まず生き残ることはできない。そもそも敵の攻撃が激しすぎて何がなんだかわからないうちに死ぬ。どのステージでも死ぬ。ついでに音がめちゃくちゃでかくてリアルで耳が死ぬ! 死ぬと「修行が足りぬ」と忍者が語る。「継忍」は一朝一夕でクリアできるようなものではないのだ。
 などと思いきや、余裕でクリアできる。上にレバーを倒すと石化の術を使え一定時間無敵になる。普通に考えれば、一定時間無敵というものはアクションゲームの約束として、制約があるものだ。それだけでなんとかなるわけでははず。ないはずだ、と思ったら、レバーを倒しっぱなしなら永遠に無敵になる。クリアできないくらいムズいから、ずっと無敵にしようぜ! という、男らしさに溢れたバランス調整である。いや、そもそもバランスというか、シーソーの片方だけに加重をかけて土にのめりこませているというべきか。
 とはいえ、道中はそれでいけてもさすがにボスが出てくるので無敵のままではいられない。なるほど道理だと思いきや、ボスが通常攻撃一撃で倒れる。ふざけんなボス死ね! いや、ボス死んでる!

 ゲームバランス? そんな軟弱なものは「継忍」に必要ない。「継忍」に必要なのは、やたらシュールな演出・ステージと、ある操作でなぜか当たり判定が見えてしまうことと、やられたときの忍者のダサい倒れ方とダサいSEにすべてがあるのだ。
 特にストーリーなど「継忍」には邪魔な要素だ。ゲームオーバー時には最初に出てきた女、台詞から察するに妹らしい人が「いいから休め」と声をかけてくれる。それはいい。だが、全ステージをクリアすると妹らしい人が「お帰りなさい」といってくれる。てっきりさらわれた妹のために戦っていると思ったが、クリアしたら出迎えてくれる。誘拐されていたようではない。はて、忍者は誰がために戦うのか。
 君はなぜ、君はなぜ戦い続けるのか命を賭けて。一筋に、一筋に、(石化で)無敵の男、継長忍者!


 「継忍」は、クソゲーオブザイヤーなど目ではない。もはやクソゲーオブザニンジャーである。崩壊したバランス、わけのわからないカオスなステージや演出、常人には理解不能なストーリー等、そんじょそこらのゲームから一線を画した存在となっている。これもひとえに、インディーズゲームという特殊な環境でこそ生まれることのできた存在だろう。
 ひどく書いているが、本当に僕はこのゲームをすばらしいものだと思っている。インディーズという特殊な環境で、アクションゲームツクールというツールを使い、ゲーム内容に大して関与しないピアレビューを通過したからこそ、この作品が誕生したのだ。そして、(内容はともかく)非常に面白い。(内容はともかく)生まれたことに価値があるのだ。(内容はともかく)こんなゲームはよそでプレイできるはずがない!

 事実、僕のほかにも(内容はともかく)こんなに愛している人たちがいる。

 もりそばさんは自身のサイト(錯覚するDREAM C CRUSHER(または同性愛))で、このゲームに出会った瞬間の衝撃を書き、クリアするまでプレイしている。はじめはいきなりこう叫んでいるのだ。
>なんだこの神ゲーは!!
 そして、散々ゲームを遊んだ後には母の腕の中に抱かれる赤ん坊のような顔で、次回作を懇願している。
>もし次回作があるのならば、操作性の改善を望む……あの理不尽さはたまらなく好きだから、なんとか。

 「ゲヱム日々是徒然Rev.C」を運営されているUnFreeManさんも、同じく「継忍」を愛している人だ。それでも、さすがに最初は面を食らっている。
>評価としては誰がどう見ても星一つ以上はあげられないのだけれど
>駄目さと怨念が一周して愛さずにはいられない本当にどうしようもないゲームが来襲してしまいました。

 しかし、ゲームに慣れていくうちに、「継忍」の持つ真の魅力に気がついてゆく。最終的には、「継忍」をダメな作品としてみる人に対し、軽蔑のまなざしを向けながらこう書いている。
>いやウチ忍者はああは書きましたけどそーとー楽しみましたよ?

 朗人さんも、同じく面を食らった人だ。氏のサイト、NGDにてこう記している。
>XBLIGという事でほとんど話題になっていませんが、世が世なら後世に語り継がれるといっても過言ではない制作者の狂気を感じるゲームです。
 狂気、などという言葉を使っていらっしゃる。確かに、はじめは誰でもそう思ってしまうのだ。…だがしかし。
>360プレイヤーならばぜひ一度プレイしていただきたいです。…と思いきやいつの間にか配信停止になってるではないですか!
 気づけば、配信停止を嘆くような立場にいるのだ。これが「継忍」の魅力であり、神秘であり、最高のゲームである証拠だ。

 ほんの短期間しか配信されていないのに、これほどの人に愛されている。愛されている形はともかく、人に欲されていることだけは事実なのだ。

 もしかしたら、その好意が製作者の意図ではなかったかもしれない。むしろ、逆に心に傷を負うことになってしまったかもしれない。だから、公開停止にしてしまったのではないか? と僕は思っている。
 ただ、僕はそれであってもこのゲームを公開してもらいたい。愛され方が作り手の好みでないにしても、人に受け入れられるゲームを作ったという事実に変わりはないのだ。だから、愛している人たちに応えて欲しい。もし製作者のshingahakuさんが自身で公開を停止したのなら、公開を再開して欲しいのだ。
 もしかしたら、これはものすごく自己中心的な好意なのかもしれない。それでもやはり、大切なのだ。もう一度やりたい、本心は、「もう一度あなたのゲームをやりたい」。これに尽きる!


 さて、思えばひどいことばかり書いてしまったように思える。いい加減に追悼式を終えることにしよう。最後に「継忍」に対し、配信停止となったインディーズゲームとしてふさわしい言葉を贈り追悼式を終了とする。

 「それでも、私は愛してる」




*1 クリアしたような口ぶりでゲームを説明していますが、実際僕はクリアまでプレイしておらず、クリア時のエンディングなどはもりそばさんの証言を元に記しております。ごめん。

*2 ブログより引用している文章の文意と、僕が説明している文意にひどく溝のようなものが見えるかもしれませんが、まァ、なんといいますか、「継忍」的演出とお思いください。
このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

非公開コメント