ラブプラス+ 05 「高嶺の手を引いて」

強引すぎるお誘い

 いつものように部活へ出席すると、後日に部内での親睦試合があるということを教えられた。しかも、形式は男女混合のダブルス。そしてそれは籤引きとかではなく、各自任意でペアを決める必要があるとか……。楽しそうだという感想を持つ前に、彼女のことが心配になった。親しい人が多くない高嶺にとって、これが辛いことなのは想像に難くない。

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夕日に照らされた寂しそうな表情
 予想は当たる。説明を聞いている最中、高嶺はどこか悲しそうな顔をしていた。しかも帰り道で彼女に話を聞いてみると、去年は参加できなかったとのこと。理由は実に寂しいもので、誘われず最後まで余ってしまったからだとか。おまけに、普段の授業でもそういうことがあるそうだ。
 ハブられるというのは、どちらかといえば劣等生が味わう苦痛であろう。こんなに可憐で優秀で、しかもテニスがうまい高嶺が懊悩することではあるまい。これには憤慨せざるを得なく、当然、一緒に出場しようと誘うわけだ。しかし、それに対する彼女の返事は意外で……。

「無理……しないで? わたし、そういうの慣れてるから、平気」

 いやいやいや無理してんのはおめーだろ! 慣れてるといっても嫌な思いをしているに違いはねーだろ! いいから僕と試合に出ろよ! と捲くし立てたい気にもなったが、あまり強く言ったところで仕方がない。納得はいかないが、口元を必死で結ぶ。

 別れ際、高嶺は何か言おうとするもそれをやめた。やはりダブルスに出たいというのが本音だと思うのだが、どうにも彼女の性格ではハッキリと言うことができないらしい。ここはこちらから歩み寄らねばならなさそうだ。


 ところで前回の小早川の頁でも書いたが、どうやらメールができるようになると誘えば学校から一緒に帰ってくれるようにもなるらしい。高嶺は「寄り道はダメだよ?」と言いつつも、いろいろと話しながら肩を並べて歩けるので楽しい。

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少しは柔らかくなったか
 帰りは彼女に色々と質問をしてみるのだが、返ってくる言葉がどうにもすごい。何がすごいって、箱入り娘っぷりがとんでもないのである。

 テレビ番組の話をすれば、家ではドキュメントや相撲、あるいはニュースしか見ないとのこと。父が嫌いらしく、バラエティーやドラマが禁止なんだとか。うーん、僕もNHKは好きだし悪いとは言わんが、この偏りはいかんせん頭が固すぎる。

 物語の話をすれば、『シンデレラ』とか『白雪姫』だとかの、「お姫様と王子様」みたいなハッピーエンドがいいんだと言い出す。「白馬に乗った王子様に迎えに来て欲しい」みたいなことを言われた時は、ちょっと眩暈がした。そりゃあ高嶺だったら王子様も迎えに来るかもしれないが……。
 なんだか遠まわしに、僕は選択肢としてありえないと言われている気すらする。要求してくるハードルが、何も持たずにやる棒高跳びくらいに高い。

 とはいえ、たまには普通の女の子らしいことも言ってくれる。
 好きな動物はウサギだそうで、尻尾がふわふわしてて「犬や猫と違ってそっぽ向いてるくせに、気がつくと擦り寄ってくる」ところがいいらしい。「実は食いしん坊で、お口がいつもモグモグ動いている」ところもいいとか。ふうん、と聞き流したものの、これは誰かのことを言っているのだろうか。


 はてさて、そんなことをしているうちに、部活の親睦試合の申し込み最終日になってしまった。顧問の教師が締め切りを確認しているところで、僕は考えを実行に移す。彼女の意思も確認せずに、強引に高嶺と出ることを決めてしまったのだ。周囲からは「なに考えてんだアイツ」と散々な言われよう。確かにその評価は最もだ。だがしかし、煮え切らない態度を取っている彼女には、このくらいのことをせねばならんだろう。

 とはいえ、事前に言っていないのだから拒否されるかもという不安は残る。教師が高嶺に確認したところ、なんとかOKが出て一安心。でも彼女、どこか怒っている様子。今日も一緒に帰ったが、ぜんぜん口をきいてくれなかった。
 宥めても賺しても、謝っても軽く怒っても押し黙ったまま。ちょっとやりすぎたか。しかし、いつも別れる場所へ到達したころ、ようやく彼女が口を開いてくれた。

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ほっと一安心
 混乱していたけれども、これが実は嬉しかったんだとか。突然のことに驚かせてしまったようだが、とにかく上手くいってよかった。

頼ってくれるように

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学校で頼られる
 強引に高嶺をダブルスの相方として誘ってからというものの、彼女の態度が軟化してきた。廊下で会えば、「先生から頼まれごとをしたけれども、一人じゃ無理そうだから……」と助けを求めてくれる。今までの彼女であれば、何となく言い出せずに押し黙ってしまったことだろう。性格が根本から変わったわけではないだろうが、それでも頼ってくれるとなると嬉しい。

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プライベートでも(強引に)頼られる(ようにする)
 別の日、学校帰りに寄り道をしている彼女を発見。いけないんじゃないのか、とからかうと慌てふためく高嶺。予想通りの反応で笑ってしまった。

 なんでも、本屋で「とわのウォッチャー」という雑誌を見ていたとのこと。どこかへ遊びに行くのかなと聞いたら、思いも寄らない答えが返ってくる。
 なんと今度、勉強を教えている近所の子供を遊びに連れて行くんだとか。以前から、もし成績があがったらどこかへ行こうと約束していたため、それを果たす為に調べ物をしていたというわけである。いやァ、発想が金持ちのそれだわ。親しい子とはいえ、どこかへ連れて行くとはなかなか豊かな環境にいる人でないと思いつかないのでは。しかも日曜日にわざわざ下見までするというのだから、浮世離れしている彼女らしい。

 はて、これをうまく利用できないかと考えた僕は、「それに付いていっちゃダメ?」と問う。もちろんこれだけでは押しが弱いので、レジャースポットに関しては雑誌より詳しいからと無茶なことを言う。彼女はそれならば、とOKをくれた。

 ちょっと強引だったかなと思うものの、高嶺にはこのくらいの勢いでもいいだろう。誘いを受けてもらったからには、しっかりと遊びに行くスポットを調べておかねば。……言うまでもないが、レジャースポットに詳しいというのは嘘である。そもそも一介の高校生が雑誌編集者より情報に明るいだなんて、冗談でも失礼がすぎる。要はこちらも強引なお誘いというわけだ。

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DAAAAAATE!!
 これで日曜日はデートということになったのだが、すると予定入力が上画像のようになる。こうも画面に「DATE」とビッチリ表示されると、嫌でも気分が盛り上がるってものだ。しかもお相手は飛び切りの美少女ときているのだから。

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私服の高嶺もかわいいなあ
 そして、いざ日曜日。やってきた場所は水族館である。下見としても女の子と遊びに行くにしろ、無難な場所であろう。ただちょっと地味かもなーと思っていたら、高嶺はミツクリザメを見たいと喜んでおり、この選択はちゃんと正解であったようだ。

 しばらくはしゃいでから昼食を取るために二人でレストランに行ったのだが、そこで彼女が突然「なんか後ろめたいかも」などと言い出した。はじめはどういうことかよくわからなかったがしっかりと聞いてみると、どうやらユミちゃんのために来たのに自分が楽しんで申し訳ない、ということらしい。話の流れでついでに、自身の悪いところを自覚しているということまで喋ってくれた。

「自分でもな、あぁ、わたしってずれてるなって思う」
「いけないことはいけないこと。でも、それだけじゃ窮屈って、わかってる」
「わたしと一緒だと窮屈だって、わかってるから」

 さすがに、救いようがないほどお嬢様、というわけではない様子。以前、この子と付き合っても退屈そうだなあみたいなことを書いたわけだが、理解しているならそこを変えることもできるのかもしれない。

 こうしてデート……ではなく、下見をしっかりと終えた。夕日の下、「ダブルスも頑張ろうね」とお互いに声をかけ合い、手を振ってお別れ。
 だんだんと影が小さくなり、人ごみに紛れてゆく彼女を見送った。

 いやあ、デートって本当にいいものですね。などと言いつつ頬が緩みかけている自分がそこにいた。ちょっとここの筋肉ゆるすぎやしませんか。それにしても、こうして彼女と遊びに行くのはなかなか楽しかったので、もう少し高嶺と仲良くしていこう。
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