ラブプラス+ 09 「消えゆく高嶺の暗さ」

彼女もまた強引さを手に入れる

 小早川はちゃんと家に帰ったのかなァなどと心配をしつつ今朝も学校へ向かおうとすると、高嶺に会った。あれからというものの、彼女はこうして毎朝ここで待ってくれている。
 そして、ここから始まる彼女の怒涛のアプローチ。嬉しいやら恥ずかしいやら。

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僕を惚れさす気か
 やれ「最近ステキになったかも?」と賞賛の言葉をかけてくれるわ、休み時間になれば他のクラスだというのにわざわざ来てくれてお話をするわ、帰りも都合さえあれば一緒に帰ってくれる有様。
 おまけにメールの頻度もかなり上がってきた。いつもだったら彼女は早い時間にさっさと寝るというのに、夜更かしまでしておやすみメールをくれるわけである。彼女自身が「最近わたし、おしゃべりになっちゃったみたい」と評するほどで、確かに距離がぐっと近くなった。

 二度も遊びに行ったから打ち解けてきたわけだが、それにしても勢いの強さときたら。今まで親しい人がいなかった反動だろうか。


 だが、ここまで積極的になった彼女にもまだ苦手なものはあった。それはテニス部員達である。とある日、仲間からウイニングバーガーでの集いを今度またやるから来い、と誘われた。だがこれに高嶺は乗れず、いつものように参加しない雰囲気になる。
 少しは人付き合いも慣れたかと思っていたが、そうではなく単に僕へ慣れただけであったようだ。それ自体は悪い気にならないが、折角なので他の人とも上手く付き合ってもらいたいところだ。

 帰り道で、彼女は参加したいという気持ちは持っていても、言い出す勇気がないと教えてくれた。確かに今まで散々断ってきて、相手も面倒だから誘わなくていいやと思っている状況である。今更行ってもいい? とは聞きづらい。ましてや断られたときのことを考えたら足もすくむ。

 こうなったら、いっそのことひょうきんさを強烈にアピールしてしまえばいいのではないだろうか。ちょっと間抜けなポーズに、親しみを込めた言葉、おまけに声の調子を高くすればいいのではないか。ほら、こんな感じに。

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間違いなくかわいいことはかわいい
 ……アドバイスの結果がこれなわけだが、いやー、その、ワハハ。僕が悪かった、すまん。かわいいけど、無いよなァこれ……。


 そして、いよいよハンバーガー屋での集いをする日になる。部活終了後、皆が集まってこれから出向こうとしている。高嶺はそれを眺めて、何かを決断したようで。ま、まさか。

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やりやがった!
 こいつやりおった。「オッス、愛花だよ」を本当にやりやがった。

 想像だにしない彼女の挨拶に沈黙する部員たち。静かに流れる風。持たない間。
 あまりの寂寥に耐えかねて、高嶺はテヘッ★ と可愛らしく笑う。瞬間、部員達がわあっと笑い始めた。なんとか彼女の無茶な挨拶が受け入れられたようだ。

 本当は皆、高嶺と話がしたかったらしい。ただ、彼女の態度もあまり良いものではなかったし、やはりお嬢様ということがあって近寄りにく感じていたそうな。知らないうちに出来ていた壁は、勇気ある彼女の「テヘッ★」で打ち破られたというわけか。いやァ良かった。

更に変化していく高嶺

 高嶺の抱える問題はほとんど無くなったといってもいいだろう。部のみんなと打ち解けたわけだから、それを切欠としてクラスでも親しい友達が増えてくるはず。ただ、気にかかる点が一つ。やはり性格そのものをもう少し軟化させたほうが、もっと壁を薄くできるのではないだろうか。

 そんなことを考えていた時、一緒に帰宅している高嶺に変な質問をされた。僕の好きな女の子タイプはどんなのだ、ということである。他愛の無い世間話……というには、ちょっとギリギリか。

 正直に答えるべきか悩んだが、ここは「明るくて積極的な子」と言うことにした。すると彼女はふうん、と素っ気なさそうに返事をして、怒ってしまった様子。宥めようとしても、「どうして? あなたの好みなんでしょ?」と言い出し、終いにゃ「知らない!」とそっぽを向いてしまう始末。
 弱ったなあ。高嶺にはちょっと湿っぽいところがあるから、それを無くしてもらえたら、とあえてこう言ったんだけどなあ。


 さてさて、数日後。失敗したかと思ったその話、どうにも功を奏したらしい。なんと高嶺の性格が少しずつ変わってきたのである。朝の挨拶も「一緒に行っていいかな?」と大人しく問うのではなく、「わたしもご一緒しちゃおうっかな」と言うようになった。一人称も冗談っぽくとはいえ「愛花だよ」とか言うようになり、一万ルクスくらいは明るくなった。いや言いすぎだ。

 どうやら付き合い方によって性格が本当に変わるようで、清楚なお嬢様タイプからより積極的なタイプになったらしい。これはもう喜ばしい限り。おまけに、僕に対する行動も変化していった。

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いい匂いがするし顔が近いし
 噴水公園で偶然遭遇した際には、乱れていた襟元を直してくれた。それも、強引に顔を近づけてきて。
 ただ、彼女はネクタイの仕組みがよくわかっていないらしく、「これどうなってるの?」と言いながら試行錯誤。わかんねーなら手をだすなよ、と心の中で思いつつ、頬はゼラチン不足のゼリーのようにダルンダルン。まったく、我ながら説得力が無い。

 いやあ、それにしても驚いた。適当に言っただけなのにここまで霧が晴れたような雰囲気になるとは。これほど喜ばしいこたあない。より可愛くなったといえるし、他の人も付き合いやすくなっただろう。
 とはいえ、根本的なところはそこまで変わっていない様子。彼氏力チェックがあれば、勉強も運動もMAXまで要求してくるわけだ。やはり彼女に自分は釣りあわないのではないか、と現実に引き戻される一瞬である。


 高嶺の性格も積極的になった。これで学校生活、ひいては今後の人生もうまく回るだろう。問題はすべて解決したし、未来も明るい。つまり、これにて彼女のお話はハッピーエンドというわけである。よかった、よかった。それじゃ、僕はこれで。
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