ラブプラス+ 17 「上ったら下れ」

家を出る前も旅行

 はてさて、ひょんなことから旅行に行くことになった僕らふたり。場所は熱海とやや地味だけれども、そうにしたって夏休みにカノジョとお泊りということほど楽しいことは滅多に無い。まったくもって喜ばしい限りで、気分は最高だし鼻の下も限界まで伸びきっている。

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旅行もいいがそれまでの過程もいいものだ
 さて、ある日愛花から電話がかかってきた。用件は、旅行の準備をするためショッピングモールへ行かないかということ。直前の身支度でアレがないコレがないと慌てるのはなんともみっともないので、ちゃんと早い段階で準備しておくのはいいことだろう。そんなわけで喜んでお誘いに乗った。

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買い物もまた楽し
 泊りがけで出かけるとなれば、女性は特に化粧品やらの日常品が重要だろうか。
 と思ったのだが、どうやらそれだけでない様子。愛花は「あとは、色々……」となにか含んだような言葉を言っている。うーん、あと足りないものとなると……なんだろう。ああ、水着か! そういえば、いつぞや「水着を選びたいんだけど手伝ってくれる?」みたいな話もしたなァ。

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欲望をぶつけていいんですか
 そんな流れで水着売り場に来たのはいいのだが、「どんな水着がいい?」と聞かれてしまった。
 いいんですか? 本当にいいんですか? 僕が水着を選ぶ権利を得ていいんですか? と、誰に対して質問しているのかさっぱりわからないが、せざるを得ないような心境になる。愛花も心なしか、照れている様子。

 しかもこれまた、僕にどんな水着がいいか聞いてくるわけだ。しかし、人間というものは選択権を与えられると却ってうろたえてしまう、なんてことはしばしばあるだろう。例えば独裁スイッチを手渡されたらボタンを押すのに躊躇してしまうようなもので、過剰すぎる結果を得ることとなる選択は判断を鈍らせてしまうのだ。そして今も僕もその状況に陥っているわけで。
 ……などと言っていても仕方あるまい。愛花はじっと僕の顔を眺めて、答えを待っている。とにかく決断を下さねばならないのだ。今の僕の心境は、核発射スイッチを目の前にした大統領のそれに似ている。いや似ていない。

 しかし、何がいいだろうか。とりあえず、愛花のスタイルを考慮すれば間違いなくビキニが似合いそうだ。適度に絞られたスリムな、しかし出ているところは出ている肢体が美しいことは考えるまでもない。いやしかし、あえて露出度が低いワンピース水着だってかわいいだろうしなあ……。

 今、僕の頭の中では、崖にビキニとワンピースがぶら下がっていてどちらを助けるか、みたいなシチュエーションになっている。もちろん片方しか助けることができず、手を差し伸べなかったほうは落ちていってしまう。く、くそっ、卑怯すぎる。ああ、どうして僕は両方を助けられないほど無力なのだ。一体どうすれば。

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さらばワンピース水着
 とか言っているものの、露出度という誘惑には勝てなかったよ。そんなわけで、ビキニを着てもらうことに。うん、本当に似合っている。眼福だ。

 いやァ、カレシって本当にいいもんですね。

差される水

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どれだけ僕を喜ばせば気が済むんですか
 買い物を終え、家に帰るとこんな赤面するようなメールをもらってしまったわけで。コーヒー牛乳に飽和するほどの砂糖を入れて、挙句に蜂蜜をぶち込んだような内容である。甘すぎて喉が渇くわ! とかいいつつ、ニヤニヤしてメールの返信をする自分がそこにいる。うむ、恥ずかしいのは誰だ。

 こうなってくると、カレシにはいいことしかないのではないか? とすら思えてくる。そうやって慢心していると、面白いくらいに水を差されてしまうのであった。

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……
 その翌日、先日行われた期末テストの結果発表がなされた。結果は芳しくないというか、見るも無残なもの。ボロクソをスレッジハンマーで叩いて、すりこぎで丹念に潰したような点数であった。

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カノジョにこんなことを言わせるなんて
 愛花は「勉強を教えてあげるから遠慮しないで?」と、ものすごく心配してくれた。いや、心配させてしまったと言ったほうが正しいだろう。
 なんて情けないのか。水着だ旅行だの以前に、そもそもちゃんと勉強をしろという話だ。

 カレシとしての義務をこなした上での権利、だよなァ……。思えば僕の人生、いつもこんな感じで、調子に乗ってはヘコみ、また得意になって落とされる、ということばかりやっている気がする。いやはや、なんとも度し難いバカというか救いようのないアホというか。はあ。
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