『ラブプラス+』熱海旅行 ぷちレビュー

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ラブプラスの魅力について

 『ラブプラス+』のメインイベントである熱海旅行を終えたので、これに関してぷちレビューを書いておきたい。その前に、追加要素ではない本編の方について説明しておこう。

 『ラブプラス』は、下火だった家庭用ギャルゲーというジャンルでかなりの本数を売り上げ、おまけに相当な話題となった作品である。まず通常のギャルゲーでは見ることのできない、付き合った後を丹念に描写したという特異性、リアルタイム性をうまく生かしたシステム、そして、様々な要素を開放するためにシミュレーション要素をこなす必要があり、更に、なんてことのない日常会話を山ほど詰め込んで、毎日少しずつ楽しませるようにした。これらの見事な噛み合わせが面白い作品を生み、評価されたといえよう。

 特に重要なのが、ゲームを開始して一番最初に「友達編」として、彼女と付き合う過程をストーリーとして読ませるようにしたところである。基本的には主人公を鍛錬するシミュレーションゲームなのであるが、女の子と仲良くなるには必ず話を見なければならない。そして、それによってシナリオを読ませ、キャラクターへ感情移入をさせている。これはかなり重要で、はっきりいってこれがなかったら『ラブプラス』は相当味気ない作品になっていただろう。

 昨今のギャルゲーにはノベルアドベンチャータイプのものが非常に多く、なぜそうなのかといえば、キャラクターに感情移入するためには優秀なシナリオが必要だからである。ギャルゲーというと、とにかくかわいい女の子が出てきてオタクがそれに萌える、などという短絡的な発想に致る人も多いと思われるが、実際のところはそうでもない。

 いくら非常にかわいい女の子がいようとも、そこにプレイヤーがのめり込む道理がなければ実に味気ない。例えば、「なんとなく王子様と結婚したシンデレラ」と「義母と継姉にいじめられており、魔法使いの協力によって王子様とお近づきになりつつも、紆余曲折あってやっと彼と結婚できたシンデレラ」というものを並べてみるとする。読者はどちらのシンデレラに興味を抱くだろうか。答えは言うまでもあるまい。

 これと同じで、ギャルゲーにも道筋が重要となってくる。「なんだか知らんが自分に惚れてきた女の子と付き合う」のと「一緒に問題を解決したり、一生懸命アプローチして女の子と付き合えるようになった」というのを並べてみれば、後者のほうが感情移入できるし、女の子と一緒にいる楽しみもプレイヤー心理的に増幅する。前者であれば、嬉しい気もするが、結婚詐欺や嫌がらせではないかという無駄な想像まで働いてしまうわけで、どこか怖い気すらするだろう。

 僕はてっきり『ときめきメモリアル』シリーズのKONAMIのことであるから、シナリオはバッサリ切って、なんとなく付き合った子とイチャコラするだけなのかと思い込んでいたが、いざやってみるとそんなことはなかった。『ラブプラス』はしっかりと女の子に感情移入させる下地を作ってから、キャッキャウフフさせるわけである。

 そして、シナリオという道作りが済んだら、今度はリアルタイム性で、よりプレイヤーが持つカノジョへの思いを増させる。このゲームのリアルタイム性はこれまたよくできており、重要性を持つのはデートの待ち合わせ時間くらいなものだ。あとは一日に、一回か二回、好きな時にゲームを起動させるだけで十分なのである。

 こういうリアルタイム性があるゲームとなると、足かせが強すぎてゲーム自体が面白くなくなったり、あるいは手間が掛かりすぎて煩わしく感じられることがある。この作品はその駆け引きが実にうまく、リアルタイム性は適切な義務はあるが、決して面倒ではないという具合になっている。その為、適切な重みは、ゲーム内にいるカノジョという存在を強く意識させて、プレイヤーに良感情を生ませるための要素となっているだろう。

 最後に、毎日少しずつプレイさせて、日常会話やシミュレーションゲーム的な要素開放で、飽きさせないと同時に深みへ引きずり込む、という形をとっている。

 こうなればもう、ハマるのも道理であろう。導入でしっかりと心を掴み、システムでそこから抜け出せないようにして、かつ毎日を細かい要素で飽きさせないようにする。これは実に見事な作りといってよく、なるほど流行ったのもよくわかる内容である。(今回はだいぶ端折ったが、これについては後日、正式なレビューでしっかりと書く予定。)

 しかし、『ラブプラス+』になって追加された目玉コンテンツ、熱海旅行は残念ながらそれを崩してしまっている。

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一方でダメな熱海旅行

 以前書いたプレイ日記を読んでもらえば未プレイの方も概要を掴んでもらえるだろう(未読の方はラブプラス+のカテゴリを参照)。それで、この旅行、致命的な欠点を持っている。

 ダメな部分は大きく分けて2つ存在している。まずは、シナリオが滅茶苦茶。そして、リアルタイム性というシステムが邪魔になっている。

 さて、前述のように、単なる架空の女の子とイチャイチャするだけの駄作にしないためには、プレイヤーがカノジョに思わず入れ込んでしまうような話が必須なのである。しかし、熱海旅行のシナリオはご都合主義で滅茶苦茶になっている。カノジョが唐突に「旅行に行きたい」と言い出したら、登録した覚えの無い懸賞に偶然当たってしまい、でもそれを言い出せないかと思いきや都合よく部活の合宿が先生のミスでパーになり、しかも無くなった合宿は丁度旅行と同じ一泊二日。これだけならまだかわいいものの、そもそも待ち合わせ時間を決める話もないのに当日ちゃんと集合できるし、旅行自体も行く先を決める会話なんてないのに、事前に決めたかのように協賛施設へたらい回しにされ、その途中に無理やり「伝説のビーチ」なんて伏線もクソもなかった話が突然出てきて、その場所も知らないのになんとなくという理由でカノジョがビーチを見つけ、なぜか感動してオワリという有様。これにはもう笑うしかない。

 特に、「伝説のビーチ」をカノジョが見つける場面は傑作。彼女が突然「波の音が聞こえない?」と言い出し、「いや聞こえないけど」と返す主人公を尻目にどこかへ走って行ってしまう。で、なぜかそのビーチを見つけることができる、と。もちろん、見つけることとなった理由もなければ、そこが伝説のそれであると同定できた説明もない。

 これはもう笑うしかなくて、波の音が聞こえないような場所でそれを聞いてしまうのだから、熱中症で頭がやられたのか、電波でも拾ったのか、薬でもやっており幻聴でも聞いたのかという話である。その上偶然にも見つけてしまうのだから、もう大笑い。ゲーム中のカレシも大変困惑している様子で、ビーチに着くまでカノジョの奇異な行動に混乱し続けている。このあたり、ライターが自棄になって「こんなのうまくまとめるの無理だろ!」と言いながら書いたようにも感じられる。

 もちろん、ご都合主義というものはシナリオを作る上で必須なのだが、それを自然に見せなければならないというのは誰もがご存知のことであろう。またもやこの例を出すが、シンデレラは継母や義姉にいじめられていたからこそ、魔法使いに助けられて幸せを得たわけである。理由もなく助けられたのであれば、読者は頭の上に疑問符を浮かべてしまうだろう。では、今回の熱海旅行において、プレイヤーを納得させる十分な屁理屈はあったか。残念ながら、ないといえる。

lpp20_01.jpg もしこれを不自然にしないとするのであれば、非常に簡単なことであろう。例えば、旅行に行くまでの過程にしても、付き合う数ヶ月前から「熱海に行ってみたい」と聞かされているとか、ゲーム最初期に「Webマガジンで懸賞が当たる!」という文章でも見せたり、そもそも旅行前にどこへ行くか彼女と相談するような場面を用意しておけば、シナリオの矛盾や不備はかなり軽減されたはずである。「伝説のビーチ」だって、旅行に行く前にそういうものがあるという情報を得ることができれば、むしろ熱海に行きたくなる条件付けになって、シナリオに深みが出るはずだ。けれども、なぜかこれらが存在しない。

 どうしてこうなったかと考えてみると、開発期間が足りなかったか、あるいはゲームに無理やり熱海という要素を詰め込んだ、ということなのだろう。ゲーム部分は前作からの続きな上に、セーブデータは引き継げるわけで、以前のシナリオを改変して事前に伏線を仕込むことは不可能(前作プレイヤーが既に見たイベントに熱海関連の話を盛り込むと、経験者はそれをスルーしてしまう)。つまり、熱海関連の話は前作から関与しない部分で強引に入れなければならない。しかも、旅行に行くまでの期間が非常に短かった。『ラブプラス+』の発売日は、6月下旬だったのだが、これが一週か二週後には旅行へいけるようにする必要があった。そして、イベントは既に盛り込まれているものとの兼ね合いがある為、あまり多くを入れることはできない。つまり、ほとんどシナリオに裂ける猶予はなかったわけだ。これでは十分な伏線を蒔くことは不可能であろう。おまけに、旅行自体もたったの一泊二日しかないのに、必ず協賛施設へ寄らなければならないという制約付き。

 シナリオライターはさぞ苦心したはずだ。前作の部分に手を加えることはできないし、ゲーム内期間的に余裕もなく、内容には言われたものを詰めなければならない。結果、書きあがった内容はご都合主義と熱海の宣伝でいっぱいいっぱいになってしまうわけで……。当然、面白いかどうかなんてこだわる余力はないだろう。

 そして、ゲーム的にも破綻している。いつ起こるかわからないイベントを、24時間以上DSに張り付いて待たねばならないわけで、これはリアルタイム性が完全に足かせになっているといえるだろう。しかも、この作りだとプレイヤーがすべてのイベントを見るとは限らないわけである。それなら、全部のイベントでひとつの続き物を完成させるという芸当は不可能で、間にはぶった切りの小話しか入れられない。つまり、元からちゃんとしたシナリオなんかを入れることはまず不可能だったというわけだ。

 更に残念なことに、舞台が熱海である必要もない。もちろん、旅先で行くスポットには恋愛関係のものが多く、二人で自分たちの絆を確かめるようなイベントが起こるわけだ。とはいっても、縁結びの利益がある場所であれば伊豆山神社に限らないし、ここほど恋愛に関連したスポットが多くない場所であっても、旅行は十分に成立するはずである。なぜかといえば、熱海で恋愛に関連する場所に行っても、せいぜい場所に対する少しの雑談が入るだけで、特に二人の絆を強くするイベントはないのだから。

 実際、旅行先を沖縄にすり替えたって難なく進行したはずである。適当な縁結び関連のスポットに行って、一緒に綺麗な海で泳ぎ、夜景を楽しんだりすれば嫌でも盛り上がる。そして、二人の関係をより深める「伝説のビーチ」なんてのは荒唐無稽なものだから、沖縄にあったって不思議じゃないだろう。

 こんな出来であるならば、熱海旅行イベントは単なるタイアップであり、それ以上でもそれ以下でもないだろう。悪く言うならば、ビデオゲームとしては失敗している。

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なぜ無茶なシナリオを入れたのか?

 ではこの熱海旅行、完全に失敗かといえば、そうでもない。少なくとも知人の話を聞いたりファンサイトを覗く限りでは、あまり不評を見ることはなかった。僕の書いた評価との温度差の原因は何かというと、熱海旅行イベント自体にも良い箇所があったからである。

 前述のようにシナリオとリアルタイム性によるゲーム的要素は、ひどいものである。ただ、この旅行、イベントの一枚絵とカノジョとイチャコラする場面に関しては、非常に量が多い。電車に乗れば新婚ごっこをしたり、観光をすれば必ずお互いの気持ちを確かめ合うようなことをし、ホテルにつけば一緒に風呂へ入ったり、あるいは添い寝をし、最後には誓いの言葉まで述べるというのだから、話の荒唐無稽さにさえ目を瞑れば、面白いといえるものであろう。

 そして、前作から遊んでいたプレイヤーにとっては、話が無茶苦茶でも既に十分にのめりこんでいるわけで、むしろ気にならないだろう。ましてや、前作の基本部分はよく出来ているわけだ。熱海旅行イベントの出来がちょっと悪いというくらいで、問題というほどでもない。つまりはアバタもエクボ、というわけである。

 では、それなら最初から不細工になるであろうシナリオなど入れなければよかったのではないか、という話になるのだが、結局そうなってはいないわけである。どういうことなのか考えてみるに、シナリオを一切カットすることは、開発側として不本意なのであろう。

 ここでもう一度、なぜ、「伝説のビーチ」という話を入れたか考えてみたい。カノジョと適当にキャッキャウフフして済ませればいいのであれば、イベントの羅列を適当にしているだけでいい。むしろ仲居に変な言動をさせて無理に伝説のビーチを探させる、というのは避けるべきである。それなのにわざわざこの話を入れたということは、これが必要だったという証明に他ならないだろう。

 おそらく、熱海旅行のシナリオは、プレイヤーをよりカノジョに感情移入させるための要素であり、尚且つこのゲームが、単純に架空の女の子とキャッキャウフフするだけの作品から脱却するために必要だったのであろう。つまり、本当に意味もなく女の子とイチャイチャするだけのギャルゲーを超えるため、『ラブプラス』が用意した友達編のシナリオと同じような作用を期待していたのではないか。これがもし成功していれば、既存のプレイヤーは更に惚れ込み、新規プレイヤーの心も掴めて万々歳、ということになったはずだ。

 しかし、失敗したとなれば、それらはすべて悪い方向へと作用する。なんとかイベントの数でごまかしはできているものの、これはプレイヤーを飽きに一歩近づけたに違いない。

 結局のところ、タイアップと無茶なシステムのせいで熱海旅行のシナリオは失敗に終わり、偏見されるようなギャルゲーへと変化を遂げた、といえるのだろう。これは面白い・面白くないという問題以前に嘆くべきである。優秀な力を持った作品が、続編になって、それを失ったということの証明なのだから。

最後に

 そんなわけで、強引に熱海を組み込んで、客を現地に呼ぶことはできた。だが、ビデオゲームとしてはあまり関心できたものではない作品になったと思われる。そして、こんなことを何度もやっていると、そのうちオタクにすら見放されるのがオチだ。この失敗を見た他メーカーがうまく上を行くことは、想像にたやすいわけで。

 しかも、『ラブプラス』は不安になるアーケード展開なんかもしていくわけで……。『ラブプラス+』、個人的には好意をもっているのだが、かなり余計なものを足してしまった、いや、重要なものをすっかり忘れてしまったのではないだろうか、と今回の熱海旅行イベントで思わされた。
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コメント

>『ときめきメモリアル』シリーズのKONAMIのことであるから、シナリオはバッサリ切って、なんとなく付き合った子とイチャコラするだけなのかと思い込んでいた


逆じゃないでしょうか?
ときメモをゲームとして徹底して作り込んで、シナリオは自動生成させる所まで持って行ったコナミだからこそ、ラブプラスの完成度が出せたのでは?
ときメモで成り上がって女の子を「落とす」過程は、最強の感情移入ツールだったわけで。

「KONAMIのことであるから」というのは「シナリオはバッサリ切る」というところだけにかかっている、と考えてもらうと納得いただけるかもしれません。
「ときメモ」シリーズは1のファンディスクを除き、話はほとんど重要視されてませんよね(あ、僕はGSをやっていないのでそこもかもしれません)。なので、『ラブプラス』もちゃんとしたシナリオが用意されていると思わなかった、という意味でここの文章を書きました。
KONAMIだから駄作を作りそうだった、という意味ではないのですが、そう思ってしまったのならばちょっと僕の書き方もまずかったですね。
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