ラブプラス+ レビュー

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ラブプラス+

 『ラブプラス+』は、2010年6月24日にKONAMIから発売されたニンテンドーDS用ソフト。所謂ギャルゲーに分類される作品である。セールスはギャルゲーとしては異例な上に、新聞・雑誌などの各種メディアに取り上げられ、今回の+では、熱海の旅館やレストランなどの各施設でのタイアップイベントも行われた。

 プレイヤーは3人の彼女候補と出会い、その中の誰かと付き合うことになる。しかし、ゲームはそれでクリアにはならず、むしろそこからが本番。付き合ってからは、二人でカレシ・カノジョとしてデートをしたり、DSのタッチ機能や音声認識機能によってスキンシップを取り仲を深めることを目的として、永遠にゲームは続くのである。また、リアルタイムモードと称した、現実の時間に即してゲームがゆっくりと展開されるシステムを採用しているのも特徴。

 今作は、前作『ラブプラス』のバージョンアップ版であり、熱海旅行のイベントや、新要素などが追加されている。そのため、レビューは『ラブプラス』と『ラブプラス+』の比較ではなく、このシリーズとしての評価としてつけていく。

 筆者のプレイ記録はこちらを参照されたし。

なぜギャルゲーは付き合うまでの話になるのか

 『ラブプラス+』の特異な点としては、ヒロインと付き合った後の展開に比重が大きくなっている、という部分が挙げられるだろう。通常、所謂ギャルゲーというジャンルの作品は、主人公が女の子と結ばれるまでの過程を描くものであり、その後はせいぜいエピローグなどでほんの少し語られる程度である。

 なぜ付き合うまでの話しか描かれないかといえば、これにはいくつかの理由が考えられるだろう。まず、同じくKONAMIが発売した『ときめきメモリアル』が家庭用ゲームにおいてギャルゲーを流行らせた時、プレイヤーに女の子をオトす擬似恋愛を楽しませる作品としたから。そして、ノベルタイプのアドベンチャーであれシミュレーションタイプのものであれ、付き合ったあとの設定にすると話を作るのがかなり難しくなるから、などといったものがあるだろう。

 前者はともかく、後者はなかなか厳しい話である。物語で人を楽しませるためには起承転結が必要不可欠であり、それをギャルゲーで遂行するとなると、起の部分をうまく作らなければならない。さて、もしここで始めから親しい二人が仲良くするという話を書くとなると、展開はどうなるか? ギャルゲーは主人公と女キャラが親しくなるのが目的なわけで、それが最初から終わっているとなると、せいぜい「こういう人がいて仲がいいですよ」と「起承」で終わりになってしまうのが関の山であり、転という山場を作ることが不可能に近いであろう。

 あるいは、多くのギャルゲーにいる幼馴染系のキャラのように、最初は親しいものの一度喧嘩をして仲違いをさせる方法がある。ただこれも、あくまで付き合っていない二人だから出来る芸当だ。もし既にカップルとなっている二人を不仲にさせてから元の鞘に戻してしまえば、今度は結の部分が「痴話喧嘩したけれども仲直りしましたよ」という程度になってしまい、やはり盛り上がりに欠けてしまう。となるとやはり、付き合っていない二人が親しくなるまでの過程を描くのがギャルゲーに向いているのだ。

 そんな理由から、ギャルゲーにおいてはご法度であるはずの、付き合った後の描写を重視した作品というのは単純に珍しいものである。『ラブプラス』は、序盤に物語を読ませてヒロインに感情移入させ、付き合ってからはシミュレーションとミニゲームの要素、そして日々の細かなイベントでプレイヤーの心を掴もうとしている。

 最初に読むストーリーは素朴ながら非常に上手く描かれており、ここでしっかりとキャラクターに対して共感できるような作りになってるといえる。もし、この話がなければ付き合ったあとの展開もどこか味気なく思えるはずである。なんとなく付き合った女の子と、一緒に苦難を乗り越えて付き合った子。どちらと一緒になるのが好ましいかとなれば、聞くまでもないはずだ。

 その上に、付き合ったあとは毎日を飽きないよう、季節に応じたイベントや会話を詰め込んでいる。それ自体は他愛のないものであるが、数はかなり多く用意されているだろう。他にも、声優やキャラクターデザイン、ローポリゴンで表示されるヒロインなどどれも優秀で、それらのうち一つだけを気に入ったとしても、作品そのものに好感を持てるほど質が高い。

 また、ニンテンドーDSというハードで出し、タッチ機能でカノジョにキスをしたり、精度の悪い音声認識で話しかけるモードを用意したこと、『ときめきメモリアル』で有名になったKONAMIブランドの作品であったことも盛り上げる理由になっただろう。挑戦的な内容ではあるが、しっかりと作りこんでいる。となれば、人気作品となってもおかしくないわけだ。

しかし、カノジョと付き合い続けるのは難しい

 ただし、この作品は問題を抱えている。しばらく遊んでいると、女の子と付き合う部分をゲームで遊ぶということに無理を感じてしまい、結局は「キャラクターがかわいい」という一点で売っているだけのギャルゲーと同じように感じてくるのである。

 導入部分はしっかりとシナリオを読ませてキャラクターに感情移入をさせ、その後はやや奇異な遊びで楽しませる。そこまでは良いのだが、更にその後に繋がるものがない。付き合ってしまうとなると、熱海旅行を除いて一切ストーリーというものがなくなり、それこそカノジョと会話してやれ学校で何があっただとか、あるいはミニゲームでイチャイチャするだけでになってしまう。これでは「カノジョはかわいいなァ」という感想を抱くのが精一杯で、起承転結のない、かわいい女の子が出てくるだけのゲームに成り下がってしまうのだ。

 やはり、序盤こそ付き合う雰囲気を盛り上げてくれるものの、その後はどうしても息切れしてしまう。会話パターンやイベントは多く用意されているとはいえ、どれも他愛ないもの。画面タッチでスキンシップを取るミニゲームもすぐに飽きるであろうし、音声認識の曖昧さにはストレスすら感じるようになるはずだ。おまけに、『ラブプラス+』で追加された熱海旅行はシナリオがボロボロであったのだから問題である。

 確かにこの作品、タッチペンを使ってカノジョとキスをしたり、実際に音声認識で声をかけるなどの奇異な点で彼女と付き合うギャルゲーと成立し、人目を引いた。だが、女の子と付き合うゲームとしては、どうにも問題がある。どれも同じような会話をいくつも並べ、飽きたミニゲームで遊ばせてしまい、せいぜい出来ることといえば、髪型が変化した彼女を見て一喜一憂するくらいのもの。こうなると、起伏に富んだ刺激的な内容とは言いがたいだろう。

 そもそも考えてみれば、導入部分のシナリオや、タッチペンを使ってカノジョとキスをしたり、実際に音声認識で声をかけるなどの点がなかったら、この作品は恐ろしく退屈になったはずだ。ひたすら彼女と他愛ない話をし、毎日を過ごす……。ゲーム外の世界であれば幸福だろうが、ビデオゲームの中ではそれこそを退屈と言うのである。となれば、奇異な点で人々を驚かす一発ネタとして作らなければ成立しなかったはずである。

 言わば、『ラブプラス+』は特異な点を集めた部分が評価されるべきゲームであって、カップルとして成立した後を描いたゲームとしては、むしろ落第点なのである。もしくは、付き合ったあとを描くギャルゲーというもの自体が無謀であるのかもしれない。やはり、二人が恋仲になってしまった後では起伏を作るのがひどく難しいのだろう。

 ただし、これらは換言すれば「ダメなコンセプトをうまく魅せた」ともいえる。付き合ったあとをゲーム的にうまく描いたとは言えないが、それを誤魔化すのは見事だった。

ギャルゲーのサダメ

 では、なぜコンセプトをうまく描けなかったこの作品が、うまく魅せることに成功して人気を博したのか。普通に考えればそこで失敗になるのだが、そうはなっていない。その理由は、『ラブプラス+』のジャンルがギャルゲーだったからではないだろうか。

 古今東西、様々なギャルゲーというものが存在するが、これらの共通項は何か。そう、かわいい女の子が出てくるということである。要するに、この手の作品は、キャラ萌え(キャラ人気)がなければ成立しないという宿命を抱えたジャンルなのである。

 そのせいか、この作品、2010年7月29日号の週刊新潮で強く否定されたことがある。内容としては、「恋愛シミュレーションに興じるうちに現実との区別があいまいになったオタクが、二次元のカノジョ同伴で熱海へ駆けつけていて気持ち悪い」といったものであった。その記事の良し悪しはさておき、この意見は簡単に見逃してものいいものではないだろう。

 確かにこの作品はなかなか出来たゲームである。だがやはり、ギャルゲーに過ぎない。一般からは中身も確かめられず軽蔑の目を向けられるものであるし、そして、キャラ萌えが最重要なため、ビデオゲームとしては不完全なものになりがち。だからこそ、人気が膨れ上がろうとしても、「たかがギャルゲー」と言われてしまうのだ。

 ……これを逆に考えてみよう。ギャルゲーだからバカにされるということを言い換えれば、ギャルゲーだからこそ一部には支持されることがある。つまり、そういうことなのだろう。

 前述のように、この作品はゲームとして問題を抱えているといえる。しかし、キャラ萌えという点においてはどうか。これは見事なもので、シナリオ・声優・キャラデザインなどどれもまさに一流のもの。その上、毎日のように違うイベントを見られるし、季節ごとに特殊なイベントもあるわけで、ボリュームは他の追随を許さない。そこに物珍しさまで加わってしまえば、ギャルゲーファンにとってはこれとないものになるのだろう。

 つまり、『ラブプラス+』は素晴らしい美少女キャラクターを演出したことが勝てる要素であったのだ。そして、それを例外的な形と見せることによって更に注目を集めたのである。だからこそ、ゲームとしてはいくらかケチがついたとしても、問題なく人気を得られた。色々と要素を見せ付けたが、結局のところはキャラ萌え一本で勝負していたのである。

 ゲームとして見事なものを作り上げたというよりは、キャラ萌えを見せ付けるものとして見事であった。『ラブプラス+』は、そう考えるべき作品なのだろう。
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