VANQUISH レビュー

boxjp_vanquish.jpg

VANQUISH

 『VANQUISH』は、2010年10月21日にセガから発売された3Dアクションシューティングゲーム。開発はプラチナゲームズ。

 「ロシアの星」に占拠された宇宙コロニーを奪い返し囚われた博士を救出する為、主人公であるサムはバトルスーツに身を包み、敵を倒しに行くというストーリーの作品。

 体感時間が遅くなるARモードと、高速移動ができるブーストを駆使する点が特徴。これにより、通常では停滞しがちな戦況が大きく動きやすく、高速で刺激的なアクションを楽しむことが可能となっている。

 内容把握のためにプレイ内容を記録したので、興味のある方は参照されたし。(ネタバレなので注意。)

スタイリッシュでカッコいい楽しみ

 一見したところ三人称視点シューティング(以下TPS)に見えるこの作品であるが、その実はアクションゲームである。照準をうまく動かして狙うことや、一定のカバーポジションに隠れて立ち止まることは重要でなく、むしろ常に動き続けることを想定されて設計されている。先ほどの時間が遅くなるモードと高速移動を駆使し、ステージ中に用意された攻略法をうまく見つけてクリアしていくのが肝だ。

 高速で行われる戦闘は、とにかく刺激的かつ新鮮。カバーポジションを乗り越えた瞬間に相手を撃ったり、連続で相手の頭を打ち抜きまくるというプレイが可能。これらは普通であれば無理な行為なのだが、前述のARモードのお陰で、誰でもそのようなスタイリッシュなアクションを決められるというわけだ。

 そして、シューターの不満点を解決するような試みも導入されている。通常のTPSにおいて、相手と銃撃戦を繰り広げる場合はどうなるか? 壁越しににらみ合って、どちらかがマヌケを晒すかを待つようになってしまいがちである。更に、大勢の敵がいる場所はどう対処すべきか? 一匹ずつチマチマと処理をしなければならないという、ダルい展開が多い。しかし、『VANQUISH』においてはそんなことがない。むしろ、敵の懐に突っ込んでいって、ARモードで一網打尽にしていったほうが良いのだ。豪快でありつつしっかりと戦略性を持ったアクションゲーム寄りの作品であり、これが奇抜な魅力というわけである。個人的にはこの新しい試みをかなり楽しませてもらった。

 ただし、この作品に問題もなくはない。雑誌などの評価は概ね良かったものの、プレイヤーには悪評を囁かれることもあるのだ。どうも、そのような新鮮なプレイを提供したからこそ、いくつかの点でミソがついたらしい。

だがしかし、理解されにくい

 『VANQUISH』の悪い点を考えると、シナリオ、一周クリアだけでは物足りなさを感じてしまう構成、敷居が高いなどの要因があるだろう。

 第一にシナリオだが、ストーリー展開は行き当たりばったりのご都合主義の上、結末はとにかく中途半端。なんとなく敵を倒していってなんとなくゲームが終わってしまったという、明らかに時間が足りなかったような展開になっている。とはいえ、アクションがメインのゲームなわけで、これは些細な問題と言っていいだろう。

 続いて、クリアした時の物足りなさ。プレイヤーを飽きさせないようさまざまな敵キャラが登場するも、ステージ構成は比較的単純。戦略性が薄く、ARモードの使い方を理解したプレイヤーにとっては、難易度Hardでもこれといった難しさを感じられないだろう。とはいえ、戦略性はタクティカルチャレンジや高難易度で用意されているし、プレイヤーによってはこれでも難しく感じる可能性があることを考えれば、一概に悪いとも言えず。

 だが、最後にして最大の問題が存在している。それが、敷居の高さ。アクションとシューターの要素を掛け合わせたジャンルのために、これを理解できないプレイヤーが存在しているようで、どうもそんな意見を散見するのだ。

 どうも、このゲームをシューターと言ったり、あるいはジャンルをTPSと定義する人があまりに多い。無論、開発側や公式がシューターと謳うことこそあるものの、所謂TPSとは一線を画している内容だ。それだというのに、例えば、遮蔽物が壊れてしまうとか、カバーしたままブラインドファイアができないだとか、「通常のTPSと違う」と文句がつけられることがある。しかし、この作品は単純なTPSではない上に、しっかりとその変更点に対応する戦略が用意されているわけだ。従来のものを変えるために新しいゲームプレイを提供したのだから違って当然なわけで、これは不当な意見だと言っていいだろう。

 しかし、そこに不満を持っている人たちがいることは確か。では、なぜそういった意見が出てくるのか? これは簡単で、ゲームの本質に気づいていないから文句が出てしまうのであろう。通常のTPSと違う部分は決してでたらめにやってこうなったのではなく、きちんと意図があって仕込まれているわけだ。しかし、その理由が伝わらないのであれば、「なんでこうなの?」と疑問を抱かせてしまうことは想像に難くない。

 そもそも、このゲームは思っている以上に難解なのだ。体験会ではブーストとARモードの使い方すらもよくわからなかったプレイヤーがいたし、体験版を遊んで無理だと匙を投げてしまった人も珍しくない。なかなか面白く出来ているというのに強く褒める言葉が多く見られないのは、やはり敷居が高く、ゲームプレイがとにかくわかりにくいからなのだろう。だからこそ、「あのTPS(あるいは、あのアクションゲーム)とココが違う!」という、開発者が聞いたらガックリしてしまうであろう意見が出てしまうのだ。

総括

 少なくとも開発側はキッチリと考えて作っているはずなのに、プレイヤーはそれを理解するに至っていない。おそらく、意図を知るためには、ある程度ゲームの素養が必要なのだろう。雑誌などのメディアが高評価をつけているのに、肝心のプレイヤー側の評価がそうでもないのは、そういった点が理由なのかもしれない。

 とはいえ、これは予測できないことではなかっただろう。ビデオゲームでも何でも、新しいものを取り入れた場合、それは中身を理解されずに否定されがちなのだ。つまり、知らない人にどういう作品か教える努力が必要なのである。

 言ってしまえば、この作品は多くの人にゲームの内容を理解させるほど噛み砕けていなかった、ということなのだろう。そして、シナリオの問題や一周クリア時点での物足りなさなど、目立つ落ち度が存在していることも確か。肝心の部分ではない為に重要でないかもしれないが、作りこんだ面白さを理解される前にこういった点で嫌われてしまってはどうしようもない。このあたりもなんとかしていれば、理解するまで遊んでもらえたのかもしれない。

 ただし、だからといってこの作品が駄作というわけではないだろう。アクションゲームの素養があるプレイヤーにとって、目新しく面白い作品と感じられるわけでもあるのだ。すべての人に理解させることは成功しなかったかもしれないが、きちんと理念は存在しているし、見つかりにくいかもしれない面白さを得た瞬間は、喜びに満ち溢れている。アクションゲームファンならば、この高速でスタイリッシュな戦闘はぜひとも味わっておきたい。

 完璧な出来とはいえないものの、挑戦をし、その新しい楽しみを表現しようとした。その心意気は何より素晴らしいものである。そして、好評を多く貰えることはないかもしれないが、楽しめたプレイヤーからはかけがえのない大きな賛辞を贈られる作品であろう。
このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

初期の海外レビューで「ガンヴァルキリーを彷彿とさせる」って意見があったけど、
ゲームシステムとかじゃなくて、作品の在り方といった根本の部分まで的確に表現したものだったとは思いもよりませんでしたw

『ガンヴァルキリー』は遊んだことがないのですが、人の話を聞いたりレビューを読んでみると、かなり似てますね。
『VANQUISH』も開発側が難しいと感じたのか、通常プレイは長いチュートリアルといった感じが強いですし、チャレンジで腕を磨いて遊ぶのもそうですし、発売元も同じくSEGAなわけで……。いやはや、その意見はなんとも言い得て妙ですな。

チャレンジ以外の実績はクリアしましたが、未だにこのゲームの本質がわかりません。
前に出るリスクが異常に高く設計されており、カバーポジションが有利、
かつキルゾーン内に飛び込むと視界外から見えない弾が飛んできて殺されるため、
ゲームシステム側から後ろに引っ張られるような誘導が強く働いているように感じます。

「まったく新しい遊び方」をさせたい割には説明不足な点や誘導不足な箇所が多々あるので、
単純に作り込みが甘い作品に思えてしまいます。

johnさん、はじめまして。

作り込みが甘いというのはその通りですね。あまりよくわからないという意見は散見します。

極端な話、安心安全にクリアしようとするのであれば、カバーポジションからビシビシ撃っていればいいことに間違いはありません。ですが、うまくARモードを使って前に出ると、より効率的で刺激的なゲームプレイが楽しめるわけなのです。

そして、『VANQUISH』はその刺激的なゲームプレイを提供しようとしていることは間違いないでしょう。そうでなければ、普通にカバーポジションに張り付いて楽しむTPSとして発表すべきでしたから。

言うなれば、この作品は二通りの解き方があってしまうわけです。ひたすらにチマチマと撃つつまらないモードと、ARモードなどを使って戦う刺激的なモード。おそらく、開発陣は後者を作ったのでしょうが、誰でもクリアできるように調整した結果、前者も出来てしまったのだと思われます。そして、前者ばかりをわかりやすくした結果、前者しか体験できなかったという人も生んでしまったのです。

そのため、このゲームの楽しみ方がわからないという人が多く出たというわけです。普通はわかりやすいほうに流れていきますから、となれば多くの人がよくわからないといっても何もおかしくありませんね。

ですが、これは決して適当にやった結果で出来たわけではないのです。難解なシステムを多くの人に楽しんでもらおうとした結果、いくらかボタンを掛け違えて余計わかりにくくなってしまった。そして、それでも厳しく作りこみが甘いというのであれば、それはあくまで「ゲーム性を正しくプレイヤーに伝える」という点にかかるだけであり、アクションゲームとしては実に見事な作品だと僕は考えています。

おひしぶりでございます。

古い記事にカキコごめんなさい。

これは積ん読ゲームになってまして。やっとやりました。
私は、何せ、バイオ以来の古い付合いだもんで、
ともかくもう、「三上×SEGAだよ、ああ、らしいよ」と。

で、このレビュー読んで、その通りよねとまた肯いてます。
いつも肯いてるばかりみたいですが(笑)。

私としては古い付合いだもんで、
個人的には不満はなかったんですが、
(ARモード使って「前に出る」戦い方をしたときの
スピード×リズム感=「高速でスタイリッシュな戦闘」
=三上降臨、てな感じで)
ただ、敷居が高いだろうなあとは思ってました。
海外レビューでも「も少しブラッシュアップしたら」的なのが、
多かったですから。

三上のアクションで前に出るのは概ね、キビシイんですが、
でも、戦闘のリズムにうまく乗れれば、
ぎりぎりのセーフタイミングでぴしゃっとはまるとこがあって、
そこが醍醐味なんですよね。サーフィンみたいな感じ。
でも、そっちにきちんと誘導できないというのは、
やはりイタイわけで。
チュートリアルがよっぽど考えないと
伝わりにくいだろうなあと。
(やっぱりシナリオの問題かなあ)

でも、私は最近のゲームで、
「敵」が「強い」んじゃなくて、
「単に堅いだけじゃん、たるいぜ」
という感じがして仕方ないんですね。
そういう点で「ああ、久しぶりに敵らしい敵と戦ったぁ」
という爽快感がありました、このゲーム。
(アクションぬるめのFoNVやってたせいかもしれないw)
でも、売れないだろうなあ……。

まあ、私としては、なんとかもっぺん、
三上さん浮上してくんないかと願ってますんで、
まあ新作出してくれただけでよしと思う反面、
でも、売れなかったらまた沈黙かよとかいろいろ思うんですが、
それでも、彼のようなベテラン組が
なおこういうアグレッシヴなゲームを仕掛けてきてくれるのは、
やっぱり嬉しいですね。

またも長文ごめんなさい。


acoさん、こんばんは。

シナリオからして開発の時間が足りなかったであろうことはわかったので、まァわかりにくいのは致し方ないのかなとも思います。そして、時間がないというしわ寄せを、独自のゲームプレイに与えなかった点は評価したいですね。このゲームならではの魅力はきちんと描かれているので、それだけでこの作品が世に出た価値はあるといえそうです。

そして、挑戦的なビデオゲームというのはいつでも嬉しい話ですね。多種多様に進化していくのがこういった娯楽ですので、この作品がウケなくとも、どこかのクリエイターに影響を与え、更に磨き上げられた名作への礎となるかもしれません。
非公開コメント