Fallout: New Vegas レビュー

boxfonv.jpg

Fallout: New Vegas

 『Fallout: New Vegas』(以下、Fo:NV)は、2010年11月4日にゼニマックス・アジアから発売されたRPG。開発はObsidian Entertainment。

 核戦争後の世界を描いたゲーム、Falloutシリーズの最新作であり、前作でもある『Fallout 3』(以下、Fo3)のシステムをそのまま踏襲した作品になっている。「Fo3」の開発はBethesda Softworksであったが、前述のように今回は開発会社が変わっている。

 ゲーム内容としては、オープンワールドのRPGである。中国との核戦争で荒廃してしまったアメリカを舞台に、危険な世界をサバイバルをしながら心の赴くままに生き残っていくというもの。悪事に手を染めるもよし、自身の正義を貫くもよし、放射能の影響で狂ってしまった黒い世界を自由に旅していける。

 今作ならではの特徴としては、舞台がワシントン周辺からラスベガス周辺に一新されていることや、空腹や睡眠が必要になるハードコアモード、そして、いくつかの集団とどう関わるか変化する派閥システムなどが追加された部分が挙げられる。

 内容把握のためにプレイ内容を記録したので、興味のある方は参照されたし。(ネタバレ注意)

オープンワールドのRPG、『Fallout 3』とは

 まず「Fo:NV」の内容について言及する前に、前作である「Fo3」が見せてくれたオープンワールドのRPGという楽しみを解説しておこう。日本で有名ないわゆるJRPGとはかなり違った特徴がある上に、日本では未だにメジャーとは言い難い部分があるので、誰かの参考にもなるだろう。

 さて、日本ではかなり有名である「ファイナルファンタジー」シリーズが六作目から完全にシナリオ重視にシフトしたように、JRPGにおける多くの作品は日本人に受けるように改良していった結果、長いシナリオを読ませる作りになっていった。これらはいわば長編小説のようなものであるため、ページの始めからじっくりと読んでいかねば展開が理解しづらく、飛ばし読みが出来ない、つまり物語を読み解く自由度がないという欠点を持っている。ただし、濃厚な内容を楽しめるという利点があるわけだ。

 逆に、「Fo3」は自由度を高めている。世界は開けており、ゲームが始まったらどこへでも行けるのである。それこそ近くの町から、あるいはメインシナリオで最後に立ち寄るであろう場所までも。無論、そこに行っていきなりゲームクリアという作りにはなっていないが、いきなりストーリーの中腹にたどり着くことは可能である。故に、好きなところから自由に読めはするが、順序立てして話を作ることが難しいという欠点を持つ。これを換言すれば、単発的な短い話を表現するのに長けているシステムということになるわけだ。

 そのため、「Fo3」は短い話を集合させた作りになっている。一つ一つの話は短く単体で完結するようになっているが、好きなところから読むことができる。本に例えれば、世界観と設定を共有したオムニバス形式の小説といったところだろうか。

 その上、ゲームならではの楽しみも忘れていない。その物語へと到達する過程、要は世界を巡る旅自身もそれなりに面白く、レイダーや凶暴化した野生生物と戦ったり、生きるために物資をかき集めていく必要があるわけだ。これを行う方法も自由で、強盗をするなり盗むなり、あるいは友好的に売買する方法もある。

 更に、話の展開もそれなりに融通が利くのも特徴だ。どの話も解決策としていくつかの方法があり、とにかく目標を殺して話を終わらせも良し、平和的に解決しても良し、あるいは無視してもいいわけだ。そして、持ち掛けられる話も全てがまともではなく、場合によっては暗殺依頼や、悪事に手を染めろと言われることもある。こういった風に自由が利くのは短編を寄せ集めているからできることであり、長編では、結末が変わったり趣旨の違う話が寄って来てしまうとなると、テキストが膨大な量になるなり方向性が違ってしまい、とてもではないがゲームに収録できなくなってしまうだろう。

 そんなわけで、「Fo3」はオープンワールドのRPGとして、システムをうまく生かしたシナリオとゲームプレイを用意している。脚本の質もかなりのもので、やりきれない思いをしなければならない話であったり、胸糞が悪くなる話を楽しむことができるというわけだ。

 無論、このシステムならではの問題点もあり、自由すぎるせいで予期せぬバグが多くなったり、メインシナリオもサブシナリオと同じように短くなってしまう、つまり極端な長編は書けなかったり、サバイバル生活も櫂が回りすぎるせいで慣れてしまえば作業でしかなかったりしてしまう点も存在している。

 そして、続編でありシステムをそのまま踏襲した「Fo:NV」は、これらの欠点を無くす、もしくはよりマシにしていき、更に良い点を伸ばしていく必要があったわけである。

New Vegasの決定的な欠点

 では、「Fo:NV」になって挙げた問題点が解決されたか。あるいはそれが無理でも、長所がより伸ばされたか。これに関して言ってしまえば、まず違うと言っていいだろう。そもそも、追加された内容がシステムをよく理解していないことを証明している。

 今作では様々な派閥が存在し、それぞれにおいてどういった印象を持たれるかで対応が変化していく。そして、メインシナリオにおいてはどれかひとつの派閥を選び、その組織のために働かねばならないのだ。これが「Fo3」のシステムとはいまひとつな相性であった。

 さて、そもそも運び屋という一般市民である主人公がいて、彼がとある組織に取り入るとなると、どういう筋書きにすればいいのか。最初から重要な仕事を任せられるはずはなく、それこそ地味な下働きからしていかなければならないだろう。となれば、その雑用をしていく上で次第に信頼されていって、大きな出来事に巻き込まれていくような話を書けばいいはずだ。

 だが、このゲームのシステムには短編のほうが向いているのである。つまり、散発的な話を得意とするが、逆に積み重ねてストーリーを繰り広げていくのはとても難しいわけであり、そうしてしまった場合、よほどうまくやらなければ齟齬が発生してしまうというわけだ。

 「Fo:NV」はまさしくこの通り、タブーに触れる筋書きを採用してしまったのである。短編という体裁を取っているにも関わらず、組織に取り入るという話は地続きになってしまっている。こうなると、毎回クエストをクリアしようとも組織の評価が上がるだけでキッチリと終わらず、その上、状況が大きく変化することもない。故に、場面や話の転換がしやすいという、短編の良さを発揮できないというわけだ。かといって長編の良さも発揮できておらず、どれも短くまとめているせいで丁寧な描写ができていない上に、全体を見てもおよそ満足のできそうにない結末を迎えてしまう。結局、どっちつかずのどうしようもないものになっているというわけだ。

 更に、この構成はシナリオの質も悪くさせる。どんなことを頼まれようとも派閥争いがある以上、話は「敵対組織の戦力を削れ」だとか「味方の仕事を手伝え」いうことにしかなり得ない。つまり、結末は仕事を成功させるということだけであり、驚くような展開や心を揺すぶられるようなことにはなりえない。例えば、「敵の大将を殺して来い」という仕事を任された場合、実行手段はいくつか自由にできるものの、結果は仕事をこなしたということにしかなり得ないわけだ。となれば、どれも結果自体には介入できないためオチに意外性がなく、しかも短いために盛り上がりにも欠け、義務感が増していくだろう。

 失態はこれだけに留まらない。組織は多くの人物が関連している上に、多数の事件によって周囲との関係が決まってくるわけである。つまり、これを描かねば派閥争いなど書くことは不可能になるわけだが、「Fo:NV」はその詳細を書こうと、クソつまらないサブクエストを山ほど詰め込んでいるのだ。短編という都合上、こうして他のサブクエストでそれぞれの描写を深めようとすること自体は何も悪くないが、これは結果的にくだらない雑用を山ほどやらされているということになり、実にたまったものではない。

 トドメに、そんなシステムを生かせていない筋書きを用意したくせに、エンディングにたどり着ける勢力を4つも用意してしまったのだ。しかも、同じ事件を違う切り口で見せればよかったものの、どの組織に協力しようとも内容の変化は乏しく、それどころか物語の終盤までは共通ルートになってしまっている。これに関しては、組織がメインクエストに深く関わってくる時期が遅すぎたことが原因であり、シナリオの量が少ない故にそれぞれの違いを表現できなかったと考えるべきであろう。

 そもそも、「Fo3」においてもエンディングの分岐はほとんど効果的に生かせていなかったのだ。前作では最後の最後で登場する選択肢で、結末が少し変化するだけ。だいたい、分岐で話を大きく変更させることはかなりの労力が必要になってくるだろう。4つ派閥があれば4倍のシナリオが必要なわけで、そんなものを用意するのは到底無理であり、故に使いまわしとなってしまったのだろうが……。それならばそもそも、派閥ごとにそれぞれで違う風に展開するなどという考えは表現できるわけがなかったのだ。

 結局「Fo:NV」は、システムに適していないシナリオを採用してしまったのである。独立した話にしなかったせいで短編の良さを生かせず、しかし長編としても尺が足りずに楽しく読めるものではない。それも、世界観説明に分不相応な量を詰め込んだせいでつまらないクエストを大量に産むことになり、くだらないエンディング分岐が出来上がってしまった。これはもう、「Fo3」のシステムを理解しておらず、うまく使えなかったとしか言いようがないだろう。

 このゲームシステムで派閥を描きたかったのであれば、メインシナリオの量を更に増やし、その上派閥が深く絡んでくる時期をもっと早い段階にするべきであった。この出来ではどうしても、どれを選んでも結末に大差がないものとしか思えず、派閥の違いを効果的に描けていないだろう。ただし、そうしても更に問題があり、このゲームはクエストを途中から読むことも可能なのである。つまり、そもそもプレイヤー全員が最初から最後まできちんと読むわけではないため、尺を長くしすぎることも難しいという欠点があり、そもそも派閥を描くこと自体が難しかったのかもしれない。

 オープンワールドは一見何でもできそうな広い世界に見えるが、本当は短編シナリオを入れることしかできない狭い世界なのだ。故に、物語を描くにおいては制約や問題を解決するような仕組みが存在しているのである。しかし、今作はそれをきちんと処理できておらず、表現したかったことと、結果として見えてきたものが違いすぎた結果になった。

「Fo:NV」は“マシ”である

 では、「Fo:NV」が駄作かというと、必ずしもそうではない。それどころか、なかなか遊べる作品であろう。

 「Fo3」のシステムをうまく消化できてはいないものの、新たなフィールドに新たなクエストが多数存在しているし、アイテムや武器が増え、(あまり意味はないが)戦闘やアイテムクリエイトの幅もいくらか広がった。ハードコアモードは面倒くさいだけでしかないが、いつでも設定で消すことが可能なので無いよりはマシかもしれない。

 そして、シリーズならではの、特に『Fallout 2』から続く話や、パロディを含むテキストやイベントも存在している。これらは全ての人、特に多くの日本人は理解できないと思われるが、作品の強みであるはずだ。

 何より、派閥システムから一歩引いているクエストはなかなか面白いのだ。個人的には、グールの偉大なる旅のクエストや、ベロニカのコンパニオンクエストは思うところが多かった。ただまァ、グッドスプリングの住人は意味も無く良い人すぎたり、スターキャップのクエストや、狂って焼身自殺した少年の日記など、脚本自体に矛盾や問題があるのもちらほら見られるのだが。

 また、ローカライズは今作もありがたい出来である。テキスト量が豊富な作品なので、それを一々辞書を引きながら遊ぶことは難しいだろう。今作は引き続き全編吹き替えで声優もきちんとしており、これといって違和感を覚える点は多くなかった。この点に関しては本当に見事であろう。

 他の問題点としては、フリーズが多く、ロードが遊んでいるうちに長くなってしまうというものや、目を瞑るとなると常に瞼を落としていなければならない量のバグが存在するが、それを考慮したとしても魅力がないとは言えないだろう。

 それに、派閥システムもうまくはいってないが、つまらないクエストを入れまくることと引き換えに世界設定を詰め込むことには成功したのだ。読むのに難儀するだけでなく、プレイヤーが全て読むわけではないため効果的であるとはいえないが、完全に失敗したというわけでもないだろう。

 ましてや、開発が変わっているのにここまでやったことを考慮すれば、むしろ良いといえるのかもしれない。それに、「Fo3」のシステムをうまく活用こそ出来ていないものの、破綻させるほどではなかったとして、なかなか満足できるという評価を下すこともあり得るのではないだろうか。

『Fallout 3』の偉大さ

 ただ、あえて厳しく言うのであれば、この「Fo:NV」、続編としてはどうかしているとしか言いようが無い。明らかにシステムと噛み合っていない派閥システムを入れ、バグを増やし、質もいくらか下がっている。こうなると進化したとは言いがたいだろう。それに、今回は若干の間違いで済んだが、もう一歩踏み間違えたら、危うく面白みが削れてしまうところであった。こうなると、むしろ「Fo3」の優秀さが浮き彫りになってる気さえしてくる。

 「Fo3」は洗練されたクエストを選んで入れていたし、それぞれがうまく独立しており、短編の物語としてうまく機能していた。何より、新鮮なゲームプレイを提供してくれたことが名作たる所以であったろう。無論、前作のキャピタル・ウェイストランドもバグやフリーズにまみれていたが、今作のモハビ・ウェイストランドよりは圧倒的に綺麗だったのだ。そして、シリーズ未プレイの人に薦めるのであれば、好みの違いを離れたとしても、まず完成度の高い前者を選ぶべきだろう。

 こう考えると、2008年12月4日に出た『Fallout 3』から約二年経って出た続編は、前作を超えられていないといえそうだ。この「Fo:NV」はあくまで「Fo3」の威を借りてようやく面白いと言ってもらえる程度であり、しかもその権威を十分に発揮できていないのである。こうなると、どうしても残念な気持ちが残ってしまう。

 結局、キャピタル・ウェイストランドをむやみに弄りすぎて余計な手の跡がついてしまったが、それでもまだいくらか、このモハビ・ウェイストランドには輝きが残っているということなのだろう。それは事実だが、やはりキャピタル・ウェイストランドから考えれば、放射能と手垢と指紋で薄汚れてしまった世界なのだ。
このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

オブリビオンもひどかったしベセスダのゲームは駄目だな

そうなんですよね。

再び同意です。

このシナリオでは、「それでも自分の決断で選んだ」
というよりは、
「組織のパシリに勤しんでご褒美もらった」
という感が強く、なんだかなあと。
作り手としては「世界にベストなエンドなど無いのだよ」
でリアリティ出したつもりなんだろうけど、
それには尺も構成力も足らない、ひねりも足らない。
つか仰有るようにこのシステムでそれやるのは無理なんですよね。

メインクエスト中盤以降が消化試合の上に、
バグとの戦いでストレス大インフレだし(笑)。
やはり、前にも書いた「長い物語が下手」
というのが露骨に出たと思います。
(B.O.S.爆破が一番イヤでした。
NCRルートだけ回避可能ってのがどうもわかんない。
だって壊滅させる必要ないじゃん、どのルートでも)

とはいえ、これも仰有る通りで、面白いゲームではあるんですよ。
前作を称えるあまり、くそゲー呼ばわりする人も多いですが、
それもちょっとなと。気持ちはわかりますが。
個人的にはV.A.T.S.が普通になった分、
いろんな戦闘スタイルがとりやすくなって面白かった。
V.A.T.S.無し縛りのスナイパー娘と、チートすれすれの鉄拳娘、
二系統作って同時に走らせて遊んでました。

次はソリッドそっくりのキャラ作って、中華スティルス着せて、
ブーンさんとNCRルート走らせて遊ぼうかと。

>acoさん
どのゲームもそうですが、うまいコンセプトとそれにあったシステムを採用できないと問題が噴出しまくってしまうのですよね。「Fo:NV」はまさにそんなような作品だと思います。
ただ、逆に言えば、クソゲーが練成される下地なのによく遊べるものにしたと褒めることもできるわけで(なんだかバカにしたようないい方ですが)、このあたりは良かったと言えそうですね。

何にせよ、ナンバリングではなく外伝なのでこのくらいでいいのかもしれません。仰るように、「Fo3」のシステムでのキャラメイクは楽しいですしね。

今作で一番良かったと思えるのがアイアンサイトを覗ける所でした。
前作FO3はスコ-プ付き武器以外は全てズームインだけでしたし。
自分はいつもオプションでHUD関連全てオフにしてますのでアイアンサイトのないFO3では遠距離戦闘時苦しかったです。
今作はMODで武器改造できる点も良かったと思います。
非公開コメント