ファイナルファンタジーXIII レビュー

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ファイナルファンタジーXIII アルティメット ヒッツ インターナショナル

 『ファイナルファンタジーXIII アルティメット ヒッツ インターナショナル』(以下FF13)は2010年12月16日にスクウェア・エニックスから発売されたRPG。名の通り、有名大作RPG「ファイナルファンタジー」シリーズの13作品目である。

 今回のXbox360版アルティメット ヒッツ インターナショナルは、一年前にPS3で発売されたものにバランス調整を行い、戦闘がより楽になるEasyモードを搭載したものである。また、他には音声が北米版基準にされていたり、主題歌が変更されているようだ。そのためゲーム内容としてはほぼ移植のようなものであり、このレビューも追加要素についてではなくFF13本編を見ることにする。

 ゲーム内容は非常にオーソドックスなRPGである。ゲーム要素の強いコマンド選択式の戦闘を楽しみ、先へ進むとムービーで展開される長編シナリオを楽しむことができる。プレイステーション以降の「ファイナルファンタジー」ではお馴染みの形式だろう。

 内容把握のためにプレイ内容を記録したので、興味のある方は参照されたし。(ネタバレ注意)

FF13は大作の名にふさわしい出来である

 ビデオゲームをあまり遊ばない人でも「ファイナルファンタジー」という名を知っているように、この作品はかなりの大作である。もっとも、Xbox360版の販売本数はかなり少ないようで、妙な作品を多く遊んでいる僕に似合うようなことになってしまったのは何とも苦笑してしまうが。

 さておき、このFF13は大作の名にふさわしい出来である。見事であるとしか言いようがない。

 以前『Fallout: New Vegas』という作品のレビューを書いた時にも記述したが、長編シナリオを読むRPGは展開が一本道になるのである。早い話が映画や小説のようなもので、プレイヤーが介入する手立ては一切ない。そして、日本のRPGはそれにゲーム要素の強い戦闘システムを加えてゲームとするのである。FF13は、そんな直線的なゲームの完成系と言ってもいいくらいだ。

 この作品は全13章で構成されているが、一部の例外を除いてすべて真っ直ぐ進むだけで先を見ることが出来る。ひどく迷わせるような道の構成もなく、分岐があるとすれば片方は行き止まりであり、そこには必ずアイテムが配置されている。

 こうなると単調になるような気がしてしまい、事実これを非難する声もある。とはいえ、この作品は決して起伏に乏しい構成になっているわけではない。各章は必ず場面が転換するし、話が展開するイベントの間には飽きさせないよう戦闘をいくつか挟むし、当然一つのムービーや戦闘場面が長くなりすぎないように気を使われている。そして、章の終わりには戦闘面の強調といえるボスが出てくる。その上グラフィックも見事で、キャラクターを移動させれば変化する綺麗な景色が見られたり、場合によっては天候が変化することさえもあるのだ。

 むしろこれは、無駄を省いた上に豪華な構成であると言えよう。結局何のために長編シナリオのRPGを遊ばせるのかと言えば、話を読ませるためである。そうなれば、ダンジョン探索や自由すぎる移動は却ってプレイヤーを迷わせることにしかならない。無論、違う種類のRPGではそういったものがあっても良いだろうが、FF13のような作品においては直線的な作りこそが機能的であるはずだ。その上、飽きさせないような景色の変化などがあるわけで、単純ながらも見事に飾られているというべきだろう。

 そして、一本道で構成されているといっても、RPGに必要な戦闘やプレイキャラクターを育成させる楽しみというのは当然存在している。

 戦闘はいくらか難解だが、章ごとに丁寧なチュートリアルが用意され、次第にシステムが解放されていく作りになっている。これはRPG慣れしたプレイヤーには煩わしく感じられるかもしれないが、大作ともなれば遊ぶ人は千差万別である。丁寧すぎるくらいで良いのだろう。

 ゲームバランスはやや難しめに調整されているが、苦戦すると戦いが楽になるアイテムが手に入るシステムがあったり、Xbox360版ではEasyモードがついて更に多くのプレイヤー層に対応した。難易度は低すぎることはないものの、これでクリアできないプレイヤーというのも多くはないだろう。刺激的でありつつ多くの人が遊べるように出来ている。

 他にも、シナリオが良くわからなかった時のためにTIPSが用意されていたり、戦闘も好きな時にやりなおしが可能で、戦闘に入る際もロードがほぼ皆無、その上バグやフリーズもほとんどないといった具合である。良く出来ているなどの話ではなく、気になる部分はすべて手を入れたと言っても過言ではないほど。同じようなジャンルのRPGはこの作品を見習うべきだろう。これはまさに大作でなければ出来ないほどの作りこみだ。

いくらか残念なシナリオ

 さて、そのようにシステムは完璧といってもいい具合だが、しかし肝心なのはシナリオである。この手のRPGがどう評価されるかは、全てシナリオにかかっているといっても過言ではなかろう。以前『トラスティベル ~ショパンの夢~』というとんでもない作品があったが、あれがクソゲーと罵られるのはひとえにシナリオが醜悪で凄惨なクソだったからに他ならない。良い部分もなくはないのだが、肝心要の部分が問題外であった為にひどく言われるのだ。

 では、FF13のシナリオはどうか。これまたよく出来ていると言っていいだろう。話の展開はベタだがきちんとファンタジーになっているし、ヴァニラという最重要人物に関する伏線はきちんと引けている。他キャラクターの描写もよく出来ており、個性が確立されているといえるだろう。

 とはいえ、ご都合主義の使用頻度が割と多く、話が感動的なまでに盛り上がらないのは痛いか。特に「実は敵の親玉といっていい人物が全て裏で糸を引いていた」という展開はあまりに擁護しがたい。更に、結局は主人公一行が都合よく世界を救うという平凡な筋書きであり、しかもこれといって盛り上げるのがうまくないのは問題であると言うべきだろう。

 個人的には特に面白いとは思えず、かといって無茶苦茶な話でもないというものであった。所々苦笑いが出るような部分もあったが、書こうとしたものはきちんと描けているだろう。とはいえ、やはりこれで感動できるわけがない。

 そのため、この作品を総合的に判断すれば、システムはよく出来ているがシナリオが面白くなかったので凡作である、ということになるだろう。あるいは別の人であれば、重要な部分のシナリオが楽しめなかったので駄作とも言ってしまうのかもしれない。

 ただし、それでもFF13は名作であると言いたい。なぜかといえば、これは僕のために作られた作品ではないからだ。

しかしFF13は名作である

 そもそもFFシリーズを遊ぶプレイヤーは誰なのか? 無論、ここまでの大規模な作品となれば老若男女が遊ぶであろう。とはいえ、ビデオゲームを遊ぶ層のメインターゲットと言えば、もともとは子供であったのだ。

 ビデオゲームが子供に悪影響を与えるだの、大人になったらゲームを卒業するだの言われるのは、日本ではビデオゲームが子供のものであるという認識があったからだろう。もっとも、今では当時の子供が大人になったり、あるいは大人自身がゲームを遊ぶ機会が増えたわけである。

 しかし、長い間続く「ファイナルファンタジー」のようなシリーズは子供向けから出発したはずだ。そのため、シナリオもきちんと作られているものの凝りすぎたものにはならず、定番なファンタジーで落ち着いてしまう。このことは次のようにゲーム内容をよく見てもわかることである。

 FF13の主人公はライトニングというキャラクターであるが、この人物が「世界を救おう!」とポジティブな行動を起こし世界を救うわけではない。むしろ、序盤は悲観・現実主義的な考えを持っており、どちらかと言えば大人の立場にいる存在である。

 無論、とにかく自分が世界を救うべきだと思っているキャラクターも存在する。それがスノウという人物なのだが、こいつは恐ろしいほどの楽観主義者で、「努力さえすれば奇跡が起こってどうにかなる」という鼻白むようなことを真顔で言ってくれるのだ。ライトニングに「まるきりガキだ」と言われるように、子供の立場にいる存在だろう。

 こうして多用な視点からシナリオが描かれていることからわかるように、単なる薄っぺらい話というわけではないのだ。では、物語の結末はどうなるかといえば、言うまでもなく主人公一行が世界を救うということになるのである。換言すると、現実主義のライトニングより楽観主義のスノウが正しいという結論になる。作中でライトニングが「あいつ(スノウ)が正しかったんだ」と言うように、大人の視点は許容されない世界なのだ。

 つまり、FF13の物語は、結果的に子供側の理屈が勝つファンタジーなのである。特に顕著なのがラストバトルであり、綿密な計画を立てずに戦いに挑んだものの、結果的に人間の希望で世界はなんとかなったという話なのだから、思わず笑ってしまうだろう。もっとも、これは万能感のまだ残る人にとって悪い話ではないはずだ。自分が何か特別なことができるような思い込みを助長するような、あるいは、人間という存在だからこそ特別な可能性があると思っている人にとっては、勇気付けられる話になりうるだろう。

 これはシナリオの欠陥などではなく、元からこうするつもりだったはずである。要するに、FF13は子供、具体的に言えば小学校高学年からせいぜい高校生までを対象にしたシナリオなわけだからこそ、こうなったのだ。元より大人など対象にしておらず、となれば泣けないプレイヤーが多くいても当然であろう。そもそも、FF5~8あたりのシナリオもすべてこんな感じであったはずだ。9~12あたりで大きな路線変更があったのでなければ、むしろきちんとそのまま来れたのだろう。

 一応は大人視線のキャラクターも入れているが、やはり方向性は子供向けである。そういう意味で、僕や往年のFFプレイヤーはもはや対象層でなく、楽しめなくて当然なのだ。そして、RPGがなぜ面白いかと言えば、小説や映画のように脚本そのものが素晴らしいからではなく、ゲーム的な要素がプレイヤーに選択を迫り自分で道を歩んでいるように感じさせるからだ。故に、ゲームシステムが完璧でシナリオもそれなりなFF13は見事なのである。

 とはいえ、それを直さなくていいかは微妙な所である。日本を代表する大作RPGともなれば、やはり大人も楽しめる作品でなければならない。もっと言えば、より大人向けのシナリオということにしなければならないだろう。しかし、ファンも多く付き方向性も決まりきり肥大化した「ファイナルファンタジー」は、大幅な変更を加えることができるだろうか? おそらくその答えはNoである。

 そのため、FF13は日本製RPGの開拓者としてのジレンマを持つ。子供から大人までを楽しませなければならず、しかし元々の基本理念を失ってはシリーズとして失格してしまう。こういった問題を抱えてしまった場合、最善に処理するとどうなるか。それは、基本こそ子供向けでありわかりやすいものの、部分部分に大人向けの要素を挟むというというものである。

 早い話、それがFF13なのである。チュートリアルは丁寧にし、シナリオは基本的に子供向けのわかりやすいもの。しかし、大人目線のキャラクターや一見してはわからない伏線、もしくは複雑な設定を作中に入れたり、やり込み要素としてゲーマーでなければ辿り着けない難易度のものを入れておく。つまり、FF13はすべきことをこなしたであろうRPGなのだ。

 結果的に根が「ファイナルファンタジー」であるため、誰もが驚くような素晴らしいシナリオには成りえなかったし、特別なシステムを搭載することもできなかった。故に、完全無欠の素晴らしい名作には成りえなかったのだろう。しかし、FF13は端からそんなものを狙えなかったのではなかろうか。シリーズの続いた大作であるが故に身動きはとり辛く、出来る限り歩み寄った結果がこれなのだろう。

 そう考えると、このFF13はある意味で完璧な作品ではないだろうか。例えば、このFF13がいきなり雰囲気を変えたダークファンタジーになることは不可能であっただろうし、オープンワールドのRPGになることもまた難しかっただろう。となれば、いくら古臭くともこうならざるを得ない。その上で出来自体は良いのだから、やれることはやっただろう。

 無論、今のPS3やXbox360では海外製の様々なRPGが遊べてしまうため、相対的にこのFF13の魅力が弱く感じるかもしれない。そういう意味ではもはや古いジャンルの作品と言われるのかもしれないが、個人的にはシナリオさえなんとかすればまだまだ遊べると感じたので、それはFF以外の作品に頑張ってもらいたいところである。

 いずれにせよ、この作品は楽しく親切なゲームを用意し、いくらかベタであるものの丁寧なシナリオを用意した。思春期の少年少女が遊んだり、なんとなく懐かしいファンタジー世界を顧みたくなった大人のための名作、それがFF13である。このゲームの理念や立ち位置を考えれば、これはこれで完璧なのだろう。
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コメント

このゲーム、2ちゃんねるなんかではボロクソに言われてるわりに
ゲーム業界内では聞く限り妙に評判が良かったのです。
とはいえ、おもに戦闘が面白いという感想ばかりで、
それは果たして面白いRPGといえるのだろうかと思い当時購入には
至らなかったのですが、今回のレビューを読んで良評価をなんとなく
与えていた人間が語っていなかった部分について納得がいきました。

ずっと気にはなっていたので、近く手を出してみようかと思います。
お疲れ様でした。

戦闘はオプティマを切り替えるだけでつまらないし
ストーリーは全く盛り上がらないし
街を訪れたり世界を冒険する楽しみもないし
これはFFシリーズ最悪の出来だと思う
まだブルードラゴンの方が大人も子供も楽しめるのでは?

>ni4さん
僕も妙な評判ばかり聞いたせいで逆にこのゲームをやりたくなりました。結論を言えば、やはりネットがアテにならないことがわかっただけなんですけども。
なんだかんだでこの作品は見事だと思います。残念なことに、本来のプレイヤー層があまり多くなさそうなPS3とXbox360でしか出てないんですが。

>ちょこぼさん
『ブルードラゴン』は遊んだことがないのでなんともいえないのですが、他のFFシリーズを考えると単純にシステムをうまく発揮できていない作品があり、そちらのほうがアレかと思いますよ。もっとも、作られた状況や年代の違う作品を比べたところであまり意味はないですけどね。

色んな光と影、いろいろな町、色々な人々と出会い、会話をし発見する旅、イベントが無く、まったく旅の醍醐味が感じられない、善と悪がはっきりせず清々しさがない。
しかしFF6、9は泣きました。とても面白かったです。単純でいいから、もう一度そんなゲームを作って欲しいです!!
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