ラブプラス+ 24 「目が壊れれば世界も歪む」

奥歯に挟まったもやし

 人といざこざを起こしてしまった時、それが尾を引くとどうしてもぎくしゃくしてしまうだろう。今の僕はまさにそんな感じで、いまだに実は愛花が怒っているのではないかと考えてしまう。どうしてそうなるのか理由を考えてみたところ、デートをすっぽかしたことを許す、と彼女が明言していないからではないかという所に行き着いた。

 当たり前だが、問題を起こしてしまったのならば、それを解決するという落としどころがなければしっくりこない。でなければ起承転結の転が抜けているようなものである。英雄の物語であれば最終決戦の場面という、喧嘩であれば仲直りの過程、最も重要な部分が歯抜けになっているのではないだろうか。

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相変わらずご機嫌
 しかしというかやはりというか、愛花はその大切な箇所を見せてくれない。とりあえずはご機嫌で、こうしてわざわざバイトをしている時に顔を出してくれて、おまけに差し入れとして手作りケーキをくれる有様。

 いや、嬉しいことは嬉しいのだけれども。怒っていないことはわかるのだけれども。でもなァ、いまひとつはっきりしなくて奥歯に何かが詰まったような気持ちになってしまう。

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縁日へ
 彼女はそんなことを気にもしていないのか、今度の土曜日にお祭りへ行こうと誘ってくれた。ここまでされるともう、僕も何もいえないわけで。とりあえず問題は解決した、と思っておいたほうがいいのだろう。

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しかし屋台のおっさん達は柄が悪い
 ここは気にせず遊びに徹することに。ふと目についた射的をやってみようということになったのだが、どうやら愛花はそれをやったことがないらしい。もっとも、彼女は知ったかぶりをし、やったことがある、というかわいい嘘をついていたが。眉間に皺を寄せて眉毛を下げながら、困った様子で知った風な口をきく彼女が面白くて、なんだか色々とどうでもよくなってしまった。

ひょんなことからスキンシップ不振

 さてその週末、またもや愛花とデートをすることに。なんだかプレイ日記を書いていると毎回デートについて記述している気がするのだが、平日はあまり書くようなことがないのだから仕方あるまい。そして、登場した彼女を見て、驚いた。

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ええーっと……その髪型は?
 なんですか愛花さん、その鳥が羽ばたいているような髪型は。いや、見慣れればきっとかわいく思え……いや、やはり変だ。というよりむしろ、似合っていない。もう少し年が上ならば似合うのかもしれないが、童顔の愛花には不適切なのではないか。

 「この髪型どうかな?」と問われ、僕は硬直してしまった。ええと、ここは素直に言うべきなのか。そうならばどう言えばいいんだ。似合ってないといえばいいのか、「なんだその寝癖は」と無慈悲にいうべきなのか、あるいはやはり適当な世辞を言えばいいのか。

 躊躇逡巡していると、彼女が首をかしげてこちらを見てくる。ああ、普段は口が悪いとか言われている僕なのに、こういう時にひるんでしまうのは本当に情けない。けれどもこう言うしかないわけで。僕は、「前のほうがよかったよ」と口を動かした。

 愛花は心底残念そうな顔をして、力なく「そっか」とつぶやいた。ああもう、「あなたのためにしたのに!」と怒ってくれればまだいいのに。

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どこに言っても気になる髪型
 しかし、言いたいことは余程のことがない限りは言っておくべきである。昼食を取るためにレストランへ行っても、港の丘公園で一緒に歩いていても、その後に映画館へ行ったとしても、どーーーしてもこの妙な髪形が気になって仕方ない。見慣れたらこれもかわいく思えるかもしれないという淡い期待は、ぱつんと音を立てて消えていった。やはり素直に言っておいて正解だった。

 しかもなぜか、スキンシップもさっぱりうまくいかないので弱る。この髪型のせいか。いやなんだその論理の飛躍は。MMRも腰を抜かすぞ。

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戻っていて良かった
 翌日、電話で呼び出した彼女を見てみると、すっかり元の髪型に戻っており一安心。さて、スキンシップのほうも元通りかと思いきや、髪形が戻ってもスキンシップがうまくいかない。

 どうにも彼女の頬を撫でたりしていると、突然に嫌がられるのである。今まではまったく同じ手段で一切問題がなかったのに、ちょっと前からこうだ。実は見えないところで彼女の機嫌を損ねてたのだろうか? デートすっぽかしのことや、髪型についてのことが脳裏に浮かぶ。

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ご機嫌を伺う
 とりあえず、ケーキのお返しにプレゼントも贈っておき、ダメ押しでご機嫌をとっておこう。事前に用意しておいたレースカットソーをプレゼントしたところ、非常に喜んでもらえた。……が、スキンシップはまったくダメ。ええーっ。何が原因なんだ。やはり、見えないところでヒビが入っていたのだろうか。

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休養コマンドが出現
 と思ったら、なんだか突然僕の体調が悪くなったらしく、休養する必要が出てきた。夏の暑さにバテてしまったのだろうか。

 ひょっとしたら、これがスキンシップを失敗させている原因なのかもしれない。とりあえず、しばらくは休養することにしておこう。問題は彼女にあったのではなく、僕の中にあったのかも。思えば、ここ最近はなんだか疑心暗鬼すぎた気もする。
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ラブプラス+ 23 「初・やらかし」

夏本番

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葉月である
 気がつけば日付は8月に突入しており、タイトル画面も華やかなひまわり畑になっていた。6月の下旬に愛花と付き合いはじめて、気がつけばもう月を二つも跨いだわけである。時が過ぎるのは早いものだ。

 ところで、時間というものは人間にとって重要なものである、というのは誰もがご存知であろう。毎日なんとなく時計の針は進んでいくわけだが、その一秒一秒が人との繋がりを深めたりするわけである。逆に、時間が過ぎることによって忘れ去ってしまうことだってあるはずだ。そして、忘却するということは、大抵よろしくないと思われている。

 しかし、忘れるということはすべて悪いことではない。むしろ、人間は忘れることをしなければならないのだろう。世の中には超記憶症候群という病気の方がいるらしく、その人は今まで見たことを鮮明に覚えているそうな。一見うらやましくも見えるが、それは精神的な負担になり、結果として苦しむことになるようである。

 悲しい出来事があった場合、それを忘れられなければ、人は苦しみ続けなければならないだろう。もし、近しい人を亡くしたらどうするのか。結局、いつかはそのことを忘れて、立ち上がらなければならないのだ。忘れてしまうということは悲しいように思えるが、やはり、人間にとって大切なことなのである。

 ……さて、なんでこんなプレイ日記に関係ないことをグダグダと書いたのか。これは精一杯の言い訳なのである。ええと、その。まァ次の画像を見てもらえれば、わかるだろう。

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やらかしたことを知らせるメール
 8月1日の日曜日、朝起きて一番に飛び込んできたメールである。愛花がなにか悲しさを表現している。どういうことなのか。そう、僕は忘れてしまったのである。彼女とデートの約束を取り付けていたということを。

 つまり、先ほど書いた長文は、僕が良心の呵責から逃れるために書いたわけだ。いや、だから、やっぱり誰にだってつい忘れちゃうことはあるだろう!? 彼女との大切な約束だって何か偶然が重なったら、そりゃあついうっかりしてしまうことがあるはずだ! だから僕は悪くない!

 ……と喚き散らしたいところなのだが、そんなことをしたってどうしようもない。仕方がないので、言い訳せず「ごめん」とだけメールを送ることに。あまりグダグダ言ってもしょうがない。ここは男らしく、とにかく謝るに限る。

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してるよ! 思わず長文を書くくらいしてるよ!
 だがしかし、その気持ちは伝わらなかった。言い訳しておけばよかった! してるよ反省! ものすんごい!

 今まで愛花と付き合っていて、ここまで辛らつな言葉を浴びせられたことはなかった。それもそうだ、今日しでかしてしまったことは、とんでもないことである。ああ、なんてことだ。

 今日は室内プールへ行くはずだったから、彼女は水着を用意して、駅前でずーっと待ちぼうけしていたのだろう。暑い日差しの中、いつ僕が来るのかなと通りがかる人を眺めていたかもしれない。けれども、だんだんと雲行きは怪しくなっていく。いつまで経っても待ち人は来ない。時刻はもう待ち合わせの時間を過ぎている。携帯に電話しても繋がる様子もない。それでも、日差しの中で愛花は僕を待ち続ける……。

 ああ、それを想像するだけで、こんなにも申し訳なくなるとは。そりゃメールで怒りも露にするだろう。僕はいてもたってもいられず、とにかく電話して弁明することに。とりあえず話を聞いてくれないほど怒っているようではなかったので、すぐに謝り、ついでに翌日にデートの約束を取り付けた。これでいくらか機嫌は取れただろうか。

 安堵したその一方で、彼女もこうしてひどいことをされれば怒ってくれるということに、なぜか喜びを感じている自分がいた。今まではずーっと嬉しそうな顔ばかり見せてくれたから、こうして僕が裏切ると怒ってくれる、つまり信頼してくれるということの裏返しがあるのだなァというのがわかって、なんとも嬉しいような。いやしかし、怒らせるのはこれきりにしないとまずいだろう。

名誉挽回

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室内プールへ
 そんなわけで、翌日、本当は昨日行くべきだった室内プールへと向かった。そういえば愛花、なんと髪型を変えてきていたのであった。ああ、本来なら昨日の時点で見せたかったろうに。うぐぐ。

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思ったより機嫌はいい
 しかし僕が自身の呵責に悩まされているわりに、愛花はなんだかんだで楽しそうな顔をしていた。昨日すっぽかしたことを、そこまで根に持っていないのだろうか。それならば嬉しいのだが。

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ショッピングモールにて
 プールで泳いだ後は、昼食を共にしてから買い物にまで行った。愛花は昨日のことを忘れているかのように終始ご機嫌で、むしろ怖いくらいだ。

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ギップルが憤死しそうな台詞
 後になって怒り出すんじゃないかなァとも心配したが、そんなこともない様子。それどころか、翌日ファーストフード店でおしゃべりしたときはこんな恥ずかしい台詞まで行ってくれる始末。なんとかヒビは入らずに済んだようではあるが……。
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『ラブプラス+』熱海旅行 ぷちレビュー

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ラブプラスの魅力について

 『ラブプラス+』のメインイベントである熱海旅行を終えたので、これに関してぷちレビューを書いておきたい。その前に、追加要素ではない本編の方について説明しておこう。

 『ラブプラス』は、下火だった家庭用ギャルゲーというジャンルでかなりの本数を売り上げ、おまけに相当な話題となった作品である。まず通常のギャルゲーでは見ることのできない、付き合った後を丹念に描写したという特異性、リアルタイム性をうまく生かしたシステム、そして、様々な要素を開放するためにシミュレーション要素をこなす必要があり、更に、なんてことのない日常会話を山ほど詰め込んで、毎日少しずつ楽しませるようにした。これらの見事な噛み合わせが面白い作品を生み、評価されたといえよう。

 特に重要なのが、ゲームを開始して一番最初に「友達編」として、彼女と付き合う過程をストーリーとして読ませるようにしたところである。基本的には主人公を鍛錬するシミュレーションゲームなのであるが、女の子と仲良くなるには必ず話を見なければならない。そして、それによってシナリオを読ませ、キャラクターへ感情移入をさせている。これはかなり重要で、はっきりいってこれがなかったら『ラブプラス』は相当味気ない作品になっていただろう。

 昨今のギャルゲーにはノベルアドベンチャータイプのものが非常に多く、なぜそうなのかといえば、キャラクターに感情移入するためには優秀なシナリオが必要だからである。ギャルゲーというと、とにかくかわいい女の子が出てきてオタクがそれに萌える、などという短絡的な発想に致る人も多いと思われるが、実際のところはそうでもない。

 いくら非常にかわいい女の子がいようとも、そこにプレイヤーがのめり込む道理がなければ実に味気ない。例えば、「なんとなく王子様と結婚したシンデレラ」と「義母と継姉にいじめられており、魔法使いの協力によって王子様とお近づきになりつつも、紆余曲折あってやっと彼と結婚できたシンデレラ」というものを並べてみるとする。読者はどちらのシンデレラに興味を抱くだろうか。答えは言うまでもあるまい。

 これと同じで、ギャルゲーにも道筋が重要となってくる。「なんだか知らんが自分に惚れてきた女の子と付き合う」のと「一緒に問題を解決したり、一生懸命アプローチして女の子と付き合えるようになった」というのを並べてみれば、後者のほうが感情移入できるし、女の子と一緒にいる楽しみもプレイヤー心理的に増幅する。前者であれば、嬉しい気もするが、結婚詐欺や嫌がらせではないかという無駄な想像まで働いてしまうわけで、どこか怖い気すらするだろう。

 僕はてっきり『ときめきメモリアル』シリーズのKONAMIのことであるから、シナリオはバッサリ切って、なんとなく付き合った子とイチャコラするだけなのかと思い込んでいたが、いざやってみるとそんなことはなかった。『ラブプラス』はしっかりと女の子に感情移入させる下地を作ってから、キャッキャウフフさせるわけである。

 そして、シナリオという道作りが済んだら、今度はリアルタイム性で、よりプレイヤーが持つカノジョへの思いを増させる。このゲームのリアルタイム性はこれまたよくできており、重要性を持つのはデートの待ち合わせ時間くらいなものだ。あとは一日に、一回か二回、好きな時にゲームを起動させるだけで十分なのである。

 こういうリアルタイム性があるゲームとなると、足かせが強すぎてゲーム自体が面白くなくなったり、あるいは手間が掛かりすぎて煩わしく感じられることがある。この作品はその駆け引きが実にうまく、リアルタイム性は適切な義務はあるが、決して面倒ではないという具合になっている。その為、適切な重みは、ゲーム内にいるカノジョという存在を強く意識させて、プレイヤーに良感情を生ませるための要素となっているだろう。

 最後に、毎日少しずつプレイさせて、日常会話やシミュレーションゲーム的な要素開放で、飽きさせないと同時に深みへ引きずり込む、という形をとっている。

 こうなればもう、ハマるのも道理であろう。導入でしっかりと心を掴み、システムでそこから抜け出せないようにして、かつ毎日を細かい要素で飽きさせないようにする。これは実に見事な作りといってよく、なるほど流行ったのもよくわかる内容である。(今回はだいぶ端折ったが、これについては後日、正式なレビューでしっかりと書く予定。)

 しかし、『ラブプラス+』になって追加された目玉コンテンツ、熱海旅行は残念ながらそれを崩してしまっている。

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一方でダメな熱海旅行

 以前書いたプレイ日記を読んでもらえば未プレイの方も概要を掴んでもらえるだろう(未読の方はラブプラス+のカテゴリを参照)。それで、この旅行、致命的な欠点を持っている。

 ダメな部分は大きく分けて2つ存在している。まずは、シナリオが滅茶苦茶。そして、リアルタイム性というシステムが邪魔になっている。

 さて、前述のように、単なる架空の女の子とイチャイチャするだけの駄作にしないためには、プレイヤーがカノジョに思わず入れ込んでしまうような話が必須なのである。しかし、熱海旅行のシナリオはご都合主義で滅茶苦茶になっている。カノジョが唐突に「旅行に行きたい」と言い出したら、登録した覚えの無い懸賞に偶然当たってしまい、でもそれを言い出せないかと思いきや都合よく部活の合宿が先生のミスでパーになり、しかも無くなった合宿は丁度旅行と同じ一泊二日。これだけならまだかわいいものの、そもそも待ち合わせ時間を決める話もないのに当日ちゃんと集合できるし、旅行自体も行く先を決める会話なんてないのに、事前に決めたかのように協賛施設へたらい回しにされ、その途中に無理やり「伝説のビーチ」なんて伏線もクソもなかった話が突然出てきて、その場所も知らないのになんとなくという理由でカノジョがビーチを見つけ、なぜか感動してオワリという有様。これにはもう笑うしかない。

 特に、「伝説のビーチ」をカノジョが見つける場面は傑作。彼女が突然「波の音が聞こえない?」と言い出し、「いや聞こえないけど」と返す主人公を尻目にどこかへ走って行ってしまう。で、なぜかそのビーチを見つけることができる、と。もちろん、見つけることとなった理由もなければ、そこが伝説のそれであると同定できた説明もない。

 これはもう笑うしかなくて、波の音が聞こえないような場所でそれを聞いてしまうのだから、熱中症で頭がやられたのか、電波でも拾ったのか、薬でもやっており幻聴でも聞いたのかという話である。その上偶然にも見つけてしまうのだから、もう大笑い。ゲーム中のカレシも大変困惑している様子で、ビーチに着くまでカノジョの奇異な行動に混乱し続けている。このあたり、ライターが自棄になって「こんなのうまくまとめるの無理だろ!」と言いながら書いたようにも感じられる。

 もちろん、ご都合主義というものはシナリオを作る上で必須なのだが、それを自然に見せなければならないというのは誰もがご存知のことであろう。またもやこの例を出すが、シンデレラは継母や義姉にいじめられていたからこそ、魔法使いに助けられて幸せを得たわけである。理由もなく助けられたのであれば、読者は頭の上に疑問符を浮かべてしまうだろう。では、今回の熱海旅行において、プレイヤーを納得させる十分な屁理屈はあったか。残念ながら、ないといえる。

lpp20_01.jpg もしこれを不自然にしないとするのであれば、非常に簡単なことであろう。例えば、旅行に行くまでの過程にしても、付き合う数ヶ月前から「熱海に行ってみたい」と聞かされているとか、ゲーム最初期に「Webマガジンで懸賞が当たる!」という文章でも見せたり、そもそも旅行前にどこへ行くか彼女と相談するような場面を用意しておけば、シナリオの矛盾や不備はかなり軽減されたはずである。「伝説のビーチ」だって、旅行に行く前にそういうものがあるという情報を得ることができれば、むしろ熱海に行きたくなる条件付けになって、シナリオに深みが出るはずだ。けれども、なぜかこれらが存在しない。

 どうしてこうなったかと考えてみると、開発期間が足りなかったか、あるいはゲームに無理やり熱海という要素を詰め込んだ、ということなのだろう。ゲーム部分は前作からの続きな上に、セーブデータは引き継げるわけで、以前のシナリオを改変して事前に伏線を仕込むことは不可能(前作プレイヤーが既に見たイベントに熱海関連の話を盛り込むと、経験者はそれをスルーしてしまう)。つまり、熱海関連の話は前作から関与しない部分で強引に入れなければならない。しかも、旅行に行くまでの期間が非常に短かった。『ラブプラス+』の発売日は、6月下旬だったのだが、これが一週か二週後には旅行へいけるようにする必要があった。そして、イベントは既に盛り込まれているものとの兼ね合いがある為、あまり多くを入れることはできない。つまり、ほとんどシナリオに裂ける猶予はなかったわけだ。これでは十分な伏線を蒔くことは不可能であろう。おまけに、旅行自体もたったの一泊二日しかないのに、必ず協賛施設へ寄らなければならないという制約付き。

 シナリオライターはさぞ苦心したはずだ。前作の部分に手を加えることはできないし、ゲーム内期間的に余裕もなく、内容には言われたものを詰めなければならない。結果、書きあがった内容はご都合主義と熱海の宣伝でいっぱいいっぱいになってしまうわけで……。当然、面白いかどうかなんてこだわる余力はないだろう。

 そして、ゲーム的にも破綻している。いつ起こるかわからないイベントを、24時間以上DSに張り付いて待たねばならないわけで、これはリアルタイム性が完全に足かせになっているといえるだろう。しかも、この作りだとプレイヤーがすべてのイベントを見るとは限らないわけである。それなら、全部のイベントでひとつの続き物を完成させるという芸当は不可能で、間にはぶった切りの小話しか入れられない。つまり、元からちゃんとしたシナリオなんかを入れることはまず不可能だったというわけだ。

 更に残念なことに、舞台が熱海である必要もない。もちろん、旅先で行くスポットには恋愛関係のものが多く、二人で自分たちの絆を確かめるようなイベントが起こるわけだ。とはいっても、縁結びの利益がある場所であれば伊豆山神社に限らないし、ここほど恋愛に関連したスポットが多くない場所であっても、旅行は十分に成立するはずである。なぜかといえば、熱海で恋愛に関連する場所に行っても、せいぜい場所に対する少しの雑談が入るだけで、特に二人の絆を強くするイベントはないのだから。

 実際、旅行先を沖縄にすり替えたって難なく進行したはずである。適当な縁結び関連のスポットに行って、一緒に綺麗な海で泳ぎ、夜景を楽しんだりすれば嫌でも盛り上がる。そして、二人の関係をより深める「伝説のビーチ」なんてのは荒唐無稽なものだから、沖縄にあったって不思議じゃないだろう。

 こんな出来であるならば、熱海旅行イベントは単なるタイアップであり、それ以上でもそれ以下でもないだろう。悪く言うならば、ビデオゲームとしては失敗している。

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なぜ無茶なシナリオを入れたのか?

 ではこの熱海旅行、完全に失敗かといえば、そうでもない。少なくとも知人の話を聞いたりファンサイトを覗く限りでは、あまり不評を見ることはなかった。僕の書いた評価との温度差の原因は何かというと、熱海旅行イベント自体にも良い箇所があったからである。

 前述のようにシナリオとリアルタイム性によるゲーム的要素は、ひどいものである。ただ、この旅行、イベントの一枚絵とカノジョとイチャコラする場面に関しては、非常に量が多い。電車に乗れば新婚ごっこをしたり、観光をすれば必ずお互いの気持ちを確かめ合うようなことをし、ホテルにつけば一緒に風呂へ入ったり、あるいは添い寝をし、最後には誓いの言葉まで述べるというのだから、話の荒唐無稽さにさえ目を瞑れば、面白いといえるものであろう。

 そして、前作から遊んでいたプレイヤーにとっては、話が無茶苦茶でも既に十分にのめりこんでいるわけで、むしろ気にならないだろう。ましてや、前作の基本部分はよく出来ているわけだ。熱海旅行イベントの出来がちょっと悪いというくらいで、問題というほどでもない。つまりはアバタもエクボ、というわけである。

 では、それなら最初から不細工になるであろうシナリオなど入れなければよかったのではないか、という話になるのだが、結局そうなってはいないわけである。どういうことなのか考えてみるに、シナリオを一切カットすることは、開発側として不本意なのであろう。

 ここでもう一度、なぜ、「伝説のビーチ」という話を入れたか考えてみたい。カノジョと適当にキャッキャウフフして済ませればいいのであれば、イベントの羅列を適当にしているだけでいい。むしろ仲居に変な言動をさせて無理に伝説のビーチを探させる、というのは避けるべきである。それなのにわざわざこの話を入れたということは、これが必要だったという証明に他ならないだろう。

 おそらく、熱海旅行のシナリオは、プレイヤーをよりカノジョに感情移入させるための要素であり、尚且つこのゲームが、単純に架空の女の子とキャッキャウフフするだけの作品から脱却するために必要だったのであろう。つまり、本当に意味もなく女の子とイチャイチャするだけのギャルゲーを超えるため、『ラブプラス』が用意した友達編のシナリオと同じような作用を期待していたのではないか。これがもし成功していれば、既存のプレイヤーは更に惚れ込み、新規プレイヤーの心も掴めて万々歳、ということになったはずだ。

 しかし、失敗したとなれば、それらはすべて悪い方向へと作用する。なんとかイベントの数でごまかしはできているものの、これはプレイヤーを飽きに一歩近づけたに違いない。

 結局のところ、タイアップと無茶なシステムのせいで熱海旅行のシナリオは失敗に終わり、偏見されるようなギャルゲーへと変化を遂げた、といえるのだろう。これは面白い・面白くないという問題以前に嘆くべきである。優秀な力を持った作品が、続編になって、それを失ったということの証明なのだから。

最後に

 そんなわけで、強引に熱海を組み込んで、客を現地に呼ぶことはできた。だが、ビデオゲームとしてはあまり関心できたものではない作品になったと思われる。そして、こんなことを何度もやっていると、そのうちオタクにすら見放されるのがオチだ。この失敗を見た他メーカーがうまく上を行くことは、想像にたやすいわけで。

 しかも、『ラブプラス』は不安になるアーケード展開なんかもしていくわけで……。『ラブプラス+』、個人的には好意をもっているのだが、かなり余計なものを足してしまった、いや、重要なものをすっかり忘れてしまったのではないだろうか、と今回の熱海旅行イベントで思わされた。
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ラブプラス+ 22 「とりあえず伝説は目にしたが……」

なんともいえない目覚め

 愛花の顔を眺めながら、何もせずつい寝てしまった僕。そして、朝になって後悔するかと思いきや、その前にイラッとさせられる出来事に遭遇した。

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嫌な目覚め
 なんと僕を起こしてくれたのは、目覚まし時計でもなく、愛花でもなく、唐突に部屋へ入ってきた仲居であった。寝ぼけた目で焦って布団から起き上がる僕ら。けたたましく鶏のように声をかけてくる仲居。時計を見てみると、まだ起きるような時間ではなく……。

 そのことをこのクソ野郎に尋ねてみると、なんだか起こしに来る時間を間違えたとか言って去っていった。あ、あのアマ。呼び方といい、伝説のビーチ関連といい、今といい、頭のネジがとれているフリをして嫌がらせをしているんじゃねえのか。

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あさごはん
 起きてしまったのは仕方ないので、とりあえず朝ごはんを食べに行くことに。バイキング形式での朝食は気楽でいいものだ。

二日目の観光

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高速船へ乗る
 あとは準備を済ませたら、チェックアウト。今日は「伝説のビーチ」とやらを探すことになってしまったので、初島へと向かう。船で一時間ほどかかるようだ。

 海風に頬を撫でられていると、これまた唐突に愛花が変なことを言い出した。「こうしていると映画の真似したくならない?」、と。
 いくらなんでもそんなこと思うわけないだろ、と思わず笑いそうになってしまう。しかしバカにするのも悪いので、本音は抑えて、そうだねと適当な返事。けれどもさすがに愛花は鋭く、僕の本心を見抜いたらしい。

 「バカにしてない?」と問う彼女。してないよ、と返してもやはり疑っている表情をしている。「ホントにしてない?」ともう一度問われる。ここで、実はバカにしてました、とは言えず、もちろんしてないよ! と答えるわけだが、なんと彼女はこれを狙っていた。
 「じゃあやろ?」と、僕の手を引いて船首へ向かう愛花。そうか、バカにしていないと言わせれば、真似事を実際にやらせても文句はいえないってわけか。そんなわけで、タイタニックごっこをやらされる羽目に。は、恥ずかしいわコレ。

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お食事タイム
 そんなこんなで、ようやく初島に到着。いざ観光を……と思ったら、愛花がおなかを鳴らした様子。思いのほか移動時間がかかったせいか、時計の針は昼ごろを示していた。

 ということで、近くにあっためがね丸なる店でお食事。海に近い場所だけあって海産物が有名とのこと。新鮮な刺身はいいものだ。

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初木神社にて
 食事を済ませた後は、伝説のビーチを探しながら観光をしていく。もちろん、そのビーチはどこにあるのかさっぱりわからないので、ほとんど意識していないようなものなのだが。
 それはともかく、初木神社に到着。ここには「初木姫物語」という伝承が残されているとのこと。そして、その話を元にした、「お初の松」の伝説というものもあるようだ。

 「お初の松」についてちょっと調べてみたのだが、なにやらこの話、きな臭い。簡単にあらすじを書いておこう。
 初島に住むお初という娘が、伊豆山の右近という男に恋をした。彼女は「百夜通えば嫁にしてやる」と言われ、右近の照らす明かりを目印に、毎晩たらいで海上三里を通っていた。しかし、九十九日目にして、お初に横恋慕した別の男が目印の炎を消してしまい、目的地にたどり着けなくなった彼女は波に飲まれて死んでしまったという。
 その事実を知った右近は弔いのために諸国巡礼の旅に出て、邪魔をした男は七日七夜苦しんで死んでしまったそうな。

 単なる悲恋と取れなくもないが、どうしても違和感が残る。百夜も通えという無茶を言っている時点で、右近には結婚する気がなかったのではないだろうか。そして、火を消したのは本当に別の男だったのだろうか、という疑念が浮かんできてしまう。

 ネットでちょろっと調べてみると、どういう出典から引用してきたのかわからないが、伊豆山側に怪談として同じような話が残っているとのこと。こちらでは、仕事で初島へ行った男が娘に惚れられてしまい、面倒臭いから100日連続で俺の家に来たらもらってやるよとホラを吹き、それでもまだやって来ようとするから火を消して殺した、という内容になっている。しかも、砂浜に打ち上げられたお初が実は蛇体だった、なんて怖いオチがついているわけで。

 確かに99日も、熱海・初島間をたらいでやってくる女は怖い。男を複数集めても苦労するであろう距離なのに、女一人でやって来るのだから、これはもう、恋慕の情が湧くよりも恐怖を覚えるほうが先だろう。

 まァこの内容は本当かどうかというより、初島と本土である熱海の関係を描いていると考えたほうがいいだろう。初島は海の向こうに好意を寄せているわけだけれども、逆に本土から見ると……。これは悲恋というより、そもそも成就する可能性が無かった話なのではないか。

 そして、そんな話が残っている場所に「伝説のビーチ」があるとか言われても、なんだか説得力に欠けるというか、あんまりいい気がしないような。むしろ、恋が実らないスポットとか言ったほうが似合いそうである。

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初木灯台にて
 とはいえ、そんなことはさすがに口には出せないので、温厚な顔をしながら次へ向かう。今度は初島灯台に顔を出した。

 上に登れば、島を見渡せる全方位のパノラマ。これが美しくないわけがない。唯一不満があるとしたら、ここから眺めても「伝説のビーチ」を見つけることができないくらいのもので。とはいえ、そもそもあるかないかわからないんだから、見つかるわけがないのだけれども。

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そりゃあ見つかるわけがない
 灯台を離れて歩いていると、愛花は「見つからないね、伝説のビーチ」と憂いを帯びた表情で言う。そりゃあ、誰も知らないし、行った事のない場所という話だからなァ。そもそもなぜ、一介の仲居が知っているのかという疑問もあるわけで、どう考えても嘘だろう。

 しかし、話は思っていたのと違う方向へと進む。なぜか彼女、突然波の音が聞こえるとか言い出して、走って行ってしまった。ちなみに僕にはそんな音、まったく聞こえない。ひょっとして、この暑さで頭がやられたのだろうか。不安になって仕方なく追いかける。

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伝説のビーチ? にて
 たどり着いた先は、どこかの浜辺であった。確かにビーチだけど、ここが伝説に言われているものかどうかはわからない。けれども、愛花はここがそうだと確信している様子。まったく唐突な上に訳がわからなくて混乱するが、まァそう思っているならばそれでいいだろう。

 そんなわけでここで誓いをすることとなる。内容は恥ずかしくて一々書き出していられないのだが、要するに愛花はずっと僕のことを好いてくれているというわけだ。そう言われれば、僕もそれに応えないわけにはいかないわけで。
 何にせよ、これで絆が深まったといえそうだ。慌しかったり、変な仲居に混乱させられたり、訳のわからない伝説を追うハメになったものの、楽しかったわけで何よりと言えよう。

 そして、ここでスタッフロールが流れる。とりあえず熱海旅行は円満に終わったと考えていいのだろう。あとは帰るだけだ。

さようなら 熱海

 高速船に乗って初島と別れを告げ、熱海駅前まで向かう。しかし、来るときは一時間も(もちろん実時間で)船上で待ったというのに、帰る時は一瞬で過ぎ去るのだから笑える。

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土産屋にて
 帰りの電車までいくらか時間があったので、お土産屋に寄っていくことに。
 しかし愛花、選ぶ土産の量がやたらと多い。一体誰に配るのかと聞けば、ご近所さんと患者さん、両親の付き合いの人々……と果ての無い数が出てくる。いくら開業医とはいえ、そこまで配る必要があるのだろうか。まァ、そういう細かい、あるいは行き過ぎたともいえる配慮があるから豪邸に住んでいるのかもしれないのか。それに、多すぎる荷物は僕が持ってあげればいいわけだし。

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帰りの電車にて
 さて、あとは特急電車に乗ってとわの市に戻るだけ。さすがに疲れが溜まったのか、愛花はぐっすりと眠っていた。

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高嶺家にて
 あとは家まで送っていって、お別れするだけ。しかしどうも彼女は名残惜しいらしく、なかなか家に戻ろうとしない。そこに、お父様が気配に気づいたのか声をかけてきた。嘘をついて旅行に来ているため、ここで見つかればとんでもないことになりそうだ。小さな声で別れを告げて、こっそりと逃げ帰っていくことにした。

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近所の公園にて
 そんなわけでようやく岐路についたわけだが、何やら背後に人の気配。振り返ってみれば、愛花が後ろからついてきていた。なんでも、まだ名残惜しいんだとか。結局、公園で少しおしゃべりしてから、今度こそ本当のお別れ。

 家に帰ると、「いい思い出になった」とメールがきていた。満足していただけたようで何より。問題は多かったが、及第点をつけられる旅行になったのではないだろうか。


 ……と言いたいところなのだが、ちょっと熱海旅行について思うところがある。次回はプレイ日記からちょっと外れて、それについて書いておこう。
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ラブプラス+ 21 「宿泊先での一騒動」

チェックイン

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ホテル大野屋前にて
 十分に遊びまわったのでで、そろそろ宿へと向かう。いざホテルを前にすると、愛花はなんだか緊張している様子。ハハハ、そんな取って食うようなことはしないから落ち着いて……いや、こんな状況になって手を出さない男もどうかしているな。

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フロントでの衝撃的発言
 フロントで鍵を受け取り、部屋へと向かう。仲居は荷物を持ってくれるようで、愛花に対して「奥様、お荷物をどうぞ」と言ってくれて……。いやいやいやいや! ちょっと、ネネさんならともかくいくらなんで愛花を奥様呼ばわりとは、いささか失礼なのではないか。確かに今日の髪型だとどこか大人びて見えるけれども、十人中十人が高校生だと思うような容姿じゃあないか。本当に目明きなのか、この仲居。

 ふと、この出来事でひとつ、友人の昔話を思い出した。
 当時中学生だった彼は、女子テニス部に所属している憧れの先輩と一緒に、二人きりで街へ買い物に行くことになった。これはもう喜ばずにはいられず、彼は相当気合を入れて入念な準備をしたそうな。
 しかし、当日、道の途中でキャッチセールスに掴まってから話はガラッと変わる。このセールスマン、二人を捕まえてからそれぞれを一瞥し、彼女にこう言った。「お母様でいらっしゃいますか?」、と(もし本気でそう思ってても、お姉さまですか? とか言えばいいのに)。……これで先輩は怒ってしまうのなんの。確かに大人びており、悪く言えば老けて見えなくもない人だったが、いくらなんでも母親はないだろう。結果、この後はなんともギクシャクした流れになり、二人の関係もまったくうまくいかなかったとか。

 彼はそのセールスマンを恨むより、別のことでショックを受けた。それは、自分があまりに子供っぽく見えるせいで彼女を傷つけてしまったということ。そして、他人から見れば二人はどう考えても付き合っているように見えない、つまり、血縁関係でも持っていなければ釣り合った存在のようには見えない、という証拠を突きつけられたように感じてしまったからだとか。

 今思えばこれはなかなか笑える話だが、当時の彼はずいぶんと悩んだそうである。ってああ、あくまで友人の話だということは忘れないでいただきたい。

 まァしかし、今回の場合は話が別だ。愛花は自分たちが夫婦のように仲良く見える、ということでこれ自体に喜んでいるようだし、それならば問題はあるまい。僕はちょっとブッ飛んでいる仲居が気になってしまうが、こういうのがカップルへの応対として案外ベターなのかも。そう思えば、結構やり手といえるのかもしれない。
 ……などと好意的に解釈できたのはそれまで。

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部屋はひとつだった
 なんと、たどり着いた部屋は別々ではなく、二人用のものであった。急いで、フロントで確認しにいくハメになった。

 結局、これは話をしても解決しなかった。他に空き部屋もないようだし、どうしても都合をつけることはできないとのこと。ったくよー、どうしようもねえホテルだな!
 そのことを愛花に伝えると、彼女はそれならば仕方ないと承諾してくれた。「ホテルの人を困らせちゃうし、一緒にいたいからいいよ」などと言ってくれれば、この不手際も喜ばしく思える。

 ……ってちょっと待てよ。そもそも部屋ってちゃんと二部屋で予約したのだろうか? いや、懸賞で当たったのだからホテルの手配は既に行われているはずなのだが、しかし脳みそを探ってみてもそれに関してまったく思い出せない。もしかして、最初から一部屋だったのでは。それなら、愛花は部屋を見て驚くことはないはずで……。どうなってんだコレ。
 まァ何にせよ、彼女と一緒の部屋に泊まるのは喜ばしくとも避けたいことではない。ここは素直に恩恵に与っておこう。

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なんて広い風呂だ
 とりあえず午前中に散々汗をかいたので、風呂に入ってさっぱりすることに。ここが『おもひでぽろぽろ』にも登場したローマ風呂だそうだ。ふーん。それよりも『テルマエ・ロマエ』という漫画を読んだのを思い出して、なんとなく感慨深くなった。

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何を着せたら似合わないのだろうか
 風呂上り、廊下で涼みながらぼーっとしていると浴衣姿の愛花の登場。彼女はちょっと着替えただけなのに、不思議と普段以上にかわいく見える。「そっちだって、同じの着てるよ」と言われてもなァ。そりゃそうだけど、なぜかそういう問題じゃないから不思議だ。

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お食事
 部屋に戻るとお食事の時間。旅館の食事なんて願い下げだ、なんてという人もいるけれども、こうしてカノジョとゆっくり食事できるのであれば味なんて二の次。ましてや初めての旅行なわけで、仮にまずかったとしてもいい思い出になってしまうだろう。
 ……って、こう書くとなんだか大野屋の飯がまずいのかと勘違いされそうだ。

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また出やがったこの仲居
 食事を済ませると、食器を下げるために先ほどの仲居がやってきた。この人、ロビーで愛花のことを奥様と呼んだ頓珍漢である。そんなわけでまた変なことを言い出しやしないかと僕は警戒していたのだが、予想通り突然無茶苦茶なことを言い出した。

 なんでも仲居が言うには、初島に「伝説のビーチ」というスポットがあるらしい。そのビーチは誰もたどり着いたことのない場所であり、そこで愛を誓い合ったカップルは永遠に幸せでいられるという伝説もあるとか。そして、僕らのような仲のいいご夫婦だったらたどり着けるかもしれない、というような話であった。

 ……なんで誰も行ったことがない場所だというのに、噂になっているのだろうか? しかも、たどり着いたことがないのなら永遠に幸せになった人は誰もいないわけで、本当に効果かがあるのか疑わしいだろう。おまけに僕らだったらたどり着けるって、いやいや何を根拠にそんな世迷い言を吐けるのだ。それに「伝説のビーチ」という名前からして、どこかで聞いたことのある話すぎる……。
 論理展開がさっぱりわからない。熱海語じゃなくて日本語で喋ってくれ。というかやはりこのおばさん、目暗で頭のネジが外れているに違いないだろう。

 しかしちょっと考えてみると、仲居の頭がおかしいのではなく、わざとこうしているのではないかと思えるようになった。おそらくこうして変な話を吹き込んで、客から更に金を落とさせようとしているのだろう。そして、適当な噂を吹き込んでそれを流布してもらい、口コミで人を呼ぼうという算段もあるのではないか。

 まったく、生業とはいえ、観光地に住む人は金を落とさせようと必死だな、と訝しむ僕。きっと聡明な愛花のこと、いくら脳みそに花が咲いたようなお話が好きだとしても、こんな荒唐無稽でそろばんの音が聞こえてきそうな話はすぐに裏が読めてしまうだろうし、苦笑いでもしているんだろうなァ……。そんなことを思いつつ、彼女の表情を見る。

「ステキ……」

 えっ? 今なんて?
 どうやら愛花、この話に思いっきり騙されてしまったらしい。いや、そりゃあ永遠に幸せでいられるってのは魅力だけれども、そんなあるかどうかすらわかんない話に目を輝かせなくとも。縁結びという点では伊豆山神社に参拝したわけだし、愛錠岬にだって行ったし、そもそもこの旅行自体が絆を深める行為じゃないか。こんな脳みそにプリオンを注射したような仲居の話を真に受けちゃまずいだろ……。そう言いたかった。

 しかし悲しきかな、僕はカレシである。結局は伝説に惚れ込んでしまった愛花のために、翌日はその「伝説のビーチ」とやらを探すことになってしまった。うーん……。
 まァ初島を観光するついでに探せばいいわけだし、喜んでくれるならそれでいい。けれども、お化け屋敷にどこかバカバカしさを感じてしまうような彼女がこんなことにコロッと騙されるのだろうか。あるいは、恋は人をここまで盲目にさせるのだろうか……。

お泊りでドキドキしないわけがない

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卓球場にて
 気を取り直して、愛花と旅館の中を探索する。すると、卓球台を発見した。楽しそうに勝負を持ちかけてきたので受けてたったのだが、これが惨敗。いやー、やはり運動神経においては敵わないなァ。

 それにしても卓球とはいえ、本気でやるとえらい汗をかく。せっかく風呂に入ったのにまた額が湿ってしまった。せっかくだしもう一回くらい風呂に入ってこようかな、なんて考えていると、愛花から吃驚するようなお誘いをもらう。

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おおおおふろだって
 どうやら貸切の家族風呂が利用できるらしい。うん、それはいい。広い場所もいいが、誰もいない場所でゆっくり浸かるのも悪くない。で、よかったら一緒にそこへ行かないかと誘われた。うん、それはい……ちょっと待てよ!

 それってOKってことなのか。いや、あの、その、そういう意味じゃなくて、CERO的にとか倫理的にとかゲームハード的にということである。えーっと、これはニンテンドーDSであって、CERO Cであって、そういうお話はちょっと難しい……あっ、愛花さん?

 そんな風に怖気づいていると、「先に行っててね」と言われてしまった。ウウム、喜ばしいことに違いはないのだが、いかんせん混乱が残る。本当に裸のお付き合いなんてかましていいのだろうか、と思っていると、自分の荷物に水着があることを思い出す。ああそうか、これさえ使えば倫理だってCRROだって、ハードの問題だって乗り越えられるわけか。

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待っています
 そんなわけで水着を着て待つことになったわけだが……。これってよくよく考えてみると、もし愛花が裸でやってきたら違う意味でエラいことになるのではないだろうか。婉曲に言えば恥をかかせるというか、もっと言ってしまえば僕が情けない男だと思わせてしまうような。

 今更自分の浅はかな行動に気づいても遅く、ガラリと扉が開いて、愛花が中へと入ってくる。

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水着を着てよかった
 やって来たのは、水着姿の愛花。なんとか僕は正解を引けたようで、ふう、一安心。

 しかし、選択肢を乗り越えたのはいいものの、これだけで問題が解決したようには思えない。水着とはいえ一緒に風呂に入っているのだから、CERO的な問題と欲望の板ばさみに、悶絶のひとつやふたつしてもいいはずだ。僕もさぞ苦しむ……のかと思いきや、あっさりとこの話は終わってしまった。いやはや。

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夜のおでかけ
 風呂上りは夜景を見に行くことにした。昼間、熱海城のあたりから景色を見た時に、愛花が「夜だったらもっと綺麗だったかも」と言っていたので、そのリクエストに応えたというわけだ。うむ、夜景はいいものだ。

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花火大会
 帰り際、ビーチで花火大会が行われていたのを発見。ちょうどよかったので、こちらも眺めていくことに。打ち上げ花火もいつ見ても良いものだ。遠い昔の夏休みを思い出すようで……って、今の僕も夏休み真っ最中じゃないか。何を言っているんだ。

 こうして夜も一緒に出歩けるのは旅行の醍醐味と言っていいだろう。さて、あとは宿に帰って眠るだけ。……眠るだけ? そうか、ここが一大イベントというか大問題なのか。そのことに気づかせてくれたのは、部屋に並べて敷いてある布団であった。

 気がつけば時間もかなり遅い。愛花も眠そうなので、電気を消して布団に入る。なんだかドキドキしてきたぞ。

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あっさり眠る愛花
 と思ったら彼女はあっさりと目を瞑って眠ってしまった。おいおいそりゃないだろ! と憤慨しつつも、いやゲームハード的にはこれでいいのかな、なんてわけのわからない安心をしている僕。そういう問題じゃないだろうと自分に突っ込みを入れていると、画面左上にマイクのマークがあることに気づく。

 試しに「愛花」と呼びかけてみると、彼女、なんとか目を覚ましてくれた。

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ああ
 ああ、こうして隣にカノジョがいるということがどれほど幸福なことか。指を絡ませてみたり、髪をなででみたり、そんなことをこうして横になりながら出来るだなんて。二人っきりで旅行に来た甲斐があったというものだ。

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すごくイイんだけど……僕も眠い……
 気づけば愛花との距離も近づいて、ここからが本番かと思いきや、唐突に僕の頭の働きが鈍ってきた。何事かと思いきや、どうやら昨日ロクに睡眠をとっていないのが祟ったらしく、強烈な眠気が襲ってきたのである。

 いや、こんなオイシイところで眠るわけにはいかない。そんな、隠された秘宝を見つけたものの目の前で無残にも死んでいく脇役みたいなことは、絶対にさせてなる……もの……か……。
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